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作品をさらに掘り下げ、「名作」としての価値だけでなく時代に左右されず永遠に続いていく作品として飛翔させるための挑戦の始まりであることを強く印象付ける仕上がり…★劇評★【ミュージカル=ホーム(2024)】
時代の流れは大河のようだと表現されることが多い。それに手際よく乗ろうとする人もいるし、流れにただ身を任せている人も、流れに抗って棹差す人もいる。それでも河はすべてを呑み込んでひとつの大きな流れをつくって流れていくのだ、という理屈だ。その流れこそが時代であり、世の中なのだと。一応理屈は通っている。しかしそうしてひとつになった流れの中にある一つ一つの動きもまた時代なのだと私は思っている。大学のゼミ以来、大衆文化や社会心理の流れを丹念に追ってきて、そこにひとつの傾向を見つけることはできるが、ひとりひとりの人生での体験こそが大切なのだと、叩き込まれてきたせいかもしれない。高度成長時代という時代の大きな流れの中で、それぞれの人生を懸命に生きた人々の息づかいが聴こえるような音楽座ミュージカルのミュージカル「ホーム」が1994年の初演以来4回目の公演を終えた。初演で高い評価を受けた音楽座ミュージカルのレパートリーのひとつだが、今回は昭和という時代設定に縛られすぎず、髪型や衣裳も自由度を増し、ダンスの色合いも濃くして、他にもさまざまな工夫を凝らした新たな演出で洗練。作品の核が持っている意味合いをさらに深く掘り下げ、単なる「名作」としての価値だけでなく、時代に左右されず永遠に続いていく作品として飛翔させるための挑戦の始まりであることを強く印象付ける仕上がりとなった。(写真はミュージカル「ホーム」の一場面=撮影・二階堂健、写真提供・音楽座ミュージカル)
ミュージカル「ホーム」は2024年10月14日に栃木県足利市のあしかがフラワーパークプラザ(足利市民プラザ)文化ホールで、11月22日に大阪府高槻市の高槻城公園芸術文化劇場で、11月29日~12月8日に東京・赤坂の草月ホールで上演された。公演はすべて終了しています。
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★音楽座ミュージカル「ホーム」公演情報
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