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どこまでも深遠でなおかつどこまでも人間的な魂の物語として昇華させている。新世代の2つの才能が「新しい場所」を生み出した…★劇評★【舞台=骨と十字架(2019)】

 科学の発達や学問の深化によって「神」が解き明かされるのか。それとも「神」はそうした人間が手を及ぼし得る領域の外にいるのか。普通の人々にとってはそんなことに考えを巡らせるのもなかなかに面白いことだが、信仰を持つもの、特に聖職者にとっては深刻なテーマとなる。ましてや、聖職者と科学者、その双方の立場に立つ者にとっては自分の中にどんな理屈を組み立てるかが厳しく試されたことだろう。北京原人の発見に関わった古生物学者で地質学者のテイヤールはカトリックの有名な司祭でもあり、まさしく彼はこうした立場に心が引きちぎられそうな思いでいたはずだ。劇団「パラドックス定数」を主宰する劇作家・演出家の野木萌葱は、この得がたい葛藤の中にいるテイヤールに焦点を当てた舞台「骨と十字架」で、「創世記vs.進化論」という壮大な対立ばかりでなく、周囲も含めた人間たちがそれぞれの心の中に抱く信念と現実の乖離にどう向き合っていくかを克明に描き出す。力強い造形によってノンフィクションとフィクションの間の壁を意味のないものにしてしまう野木が描き出した骨太の物語を新国立劇場演劇部門の芸術監督で演出家の小川絵梨子は、これほどの重厚な作品であるにもかかわらず、ひとつひとつの言葉がしみいるように観客の心の中へと滑り落ちて来る親近感のある作品としての演出を施しており、どこまでも深遠でなおかつどこまでも人間的な魂の物語として昇華させている。野木と小川という新世代の2つの才能が、誰も見たことのない「新しい場所」を生み出したと言えそうだ。(写真は舞台「骨と十字架」とは関係ありません)
 舞台「骨と十字架」は7月11~28日に東京・初台の新国立劇場小劇場THE PITで、7月31日に兵庫県西宮市の兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホールで上演される。

 舞台写真はこのサイトではなく、阪清和のエンタメ批評&応援ブログ「SEVEN HEARTS」でのみ掲載しています。舞台写真をご覧になりたい方は下記のリンクでブログに飛んでください。
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 なお、わたくし阪清和は、この舞台「骨と十字架」のパンフレットに、作者の野木萌葱さんのこれまでの劇作家としての軌跡をまとめた解説記事を寄稿し、掲載されました。そのことについて当ブログでご報告していますので、本劇評とあわせてお読みください。(これは活動報告の一環ですので無料でお読みいただけます)
★阪清和のエンタメ批評&応援ブログ「SEVEN HEARTS」舞台「骨と十字架」パンフレットへ野木萌葱さんの軌跡解説記事寄稿の「活動報告」=2019.07.12投稿

★舞台「骨と十字架」公式サイト

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