阪清和が発表したミュージカルに関する劇評をまとめました。ジャニーズ関連のミュージカルはここには収容しません。音楽劇を入れるかどうかは作品ごとに判断します。
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2022年4月の記事一覧
メリー・ポピンズは人生の楽しみ方、歓びの感じ方の先生。決して見たことのないところへ連れて行ってくれる…★劇評★【ミュージカル=メリー・ポピンズ(濱田めぐみ・大貫勇輔・山路和弘・木村花代・鈴木ほのか・ブラザートム・浦嶋りんこ・内藤大希・大廣アンナ・中込佑協出演回)(2022)】
メリー・ポピンズは子守や家庭教師という肩書はついていて、服装もオーソドックスな家庭教師の姿をしているが、彼女は勉強そのものを子どもたちに教えて、しつけをするというよりは、どちらかというと生き方の師であり、人生の楽しみ方、歓びの感じ方の先生なのだ。ミュージカル「メリー・ポピンズ」を観ているとそのことがよく分かる。子どもながらにこじれてしまった毎日やよどんでしまった親との関係に突破口を開いたり、日々の生活に色彩や躍動感を失ってしまった町の人々にときめきを取り戻したり、例えメリー
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繊細な演技でどこまでも役を掘り下げる安蘭けいの圧倒的な説得力…★劇評★【ミュージカル=ネクスト・トゥ・ノーマル(安蘭けい・海宝直人・岡田浩暉・昆夏美・橋本良亮・新納慎也チーム)(2022)】
オフ・ブロードウェイでの好評を受けて2009年にプロ―ドウェイにミュージカル「ネクスト・トゥ・ノーマル」が登場した時、観客の目には、心の病をテーマにしたこの作品の内容は複雑でややとんがったもののように見えたかもしれないが、2013年の日本初演、そして今年2022年の再演と時を経た今、心の病は誰にでも訪れる可能性があり、すぐそばにある切実な問題だという認識が広がっていることで、見え方が全く違ったものになっている気がする。心の病は自分が直面している問題でなくても、家族や親しい友
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同じ地平で苦悩と希望を感じ取ろうとする観客たちのより深みを増した視線を引き出した藤田俊太郎演出。忘れ難い作品に成長…★劇評★【ミュージカル=手紙(2022)】
罪は消えない。社会的には服役や補償などによって一見消えていくように見えるが、心の中ではかたちを変えながらも残り続ける。特に加害者と被害者の間ではいつまでも不安定なバランスで揺れ動き続ける。それは悲しいことではあるが、赦しや反省といったおぼろげなものとは無関係に、厳然とした現実だ。そしてそれは皮肉なことに、罪に直接向き合っている加害者よりも、加害者の家族や関係者により深刻なかたちをとって降り注ぐ。より不条理に、より不誠実に。2003年の発表の直後から大きな反響を呼んだ東野圭吾
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