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<エンタメ批評家★阪 清和>ミュージカル劇評数珠つなぎ

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阪清和が発表したミュージカルに関する劇評をまとめました。ジャニーズ関連のミュージカルはここには収容しません。音楽劇を入れるかどうかは作品ごとに判断します。
いま大きな注目を集める日本のミュージカル。臨場感あふれる数々の劇評をお読みいただき、その魅力を直に…
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2019年1月の記事一覧

観れば観るほど「初めて見える」ことがある…★劇評★【舞台=ライオンキング(2018-2019)】

 先日、日本初演から20周年の節目を迎えた劇団四季のミュージカル「ライオンキング」。もちろん誕生の地米国をはじめ、世界中で大人気なのだが、米国以外で初めての海外プロダクションとして1998年にスタートした日本での人気は格別だ。常にではないが、複数の場所で一定のロングランが続き、観客動員数も右肩上がり。熱狂的なファンが繰り返し観ているいわゆるリピーターが多いことに加えて、宣伝文句に誘われて「一生に一度は」と思って見に来た初心者の方がのめり込んでいく例も数え切れない。それは一見、

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濃密な空気の中に響く信念と狂気のせめぎ合い…★劇評★【ミュージカル=レベッカ 涼風真世・桜井玲香バージョン(2018-2019)】

 20世紀半ばに活躍した女流作家、ダフニ・デュ・モーリエ(Dame Daphne du Maurier)の一世一代の小説がウィーンで舞台化されたミュージカル「レベッカ」が、日本初演から3度目の上演が続いている。しかも8年前の2度目の公演は帝国劇場などの大劇場バージョンとして上演されたため、もともとシアタークリエのオープニングシリーズ第3弾として上演された2008年の日本初演からは10年ぶりのシアタークリエ公演となり、コンパクトな空間の中で人々の怨念や魂の叫びが響く濃密な公演と

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揺るぎない信念に癒しの力で立ち向かうスケールの大きな物語…★劇評★【ミュージカル=レベッカ 保坂知寿・平野綾バージョン(2018-2019)】

 あのレベッカが帰ってきた-。20世紀半ばに活躍した女流作家、ダフニ・デュ・モーリエ(Dame Daphne du Maurier)の一世一代の小説がウィーンで舞台化され、2008年の日本人キャストによる公演も大きな反響を呼んだミュージカル「レベッカ」が、日本初演から数えて3度目の上演が続いている。しかも8年前の2度目の公演は帝国劇場などの大劇場バージョンとして上演されたため、もともとシアタークリエのオープニングシリーズ第3弾として上演された2008年の日本初演からは10年ぶ

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ミュージカルというものの定義を一回りも二回りも拡張した作品として、大きな影響を与えていくだろう…★劇評★【ミュージカル=ナターシャ・ピエール・アンド・ザ・グレート・コメット・オブ・1812(2019)】

 トルストイが記した世界文学史上最高の小説のひとつ「戦争と平和」全4巻と2つのエピローグのうち、ナポレオン戦争の色が濃い第1巻と第3巻、第4巻の間にひっそりと存在しているような、しかし極めて人間的な営みが展開している第2巻の後半部分を主な舞台としてニューヨークで斬新なミュージカルとして仕立てられたミュージカル「ナターシャ・ピエール・アンド・ザ・グレート・コメット・オブ・1812」の日本人キャスト版が、ついに日本初演されている。ほぼ全編にわたってさまざまな人間関係の下、大河ドラ

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夢幻のベールに包まれながら、登場人物や私たちが「オペラ座」から続けてきた長い旅路の終着駅に連れていってくれる…★劇評★【ミュージカル=ラブ・ネバー・ダイ 石丸幹二・平原綾香・咲妃みゆ・香寿たつき・小野田龍之介出演回(2019)】

 ミュージカルとして知られる「オペラ座の怪人」の原作はガストン・ルルーの同名小説だが、ミュージカル化の立役者で作曲家のアンドリュー・ロイド=ウェバーがミュージカル化した完全オリジナルの正統的続編が「ラブ・ネバー・ダイ」。ホリプロが日本人キャストで初演した2014年から5年ぶりに再演が行われ、連日盛況が続いている。しかしなんとも興奮するキャスティングが実現したものだ。主人公のファントム役には「オペラ座の怪人」日本人キャスト版を日本初演した際にファントムを演じた市村正親と、ラウル

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何という美しさ、そして躍動感だろう…★劇評★【ミュージカル=パリのアメリカ人(2019)】

 何という美しさ、そして躍動感だろう。人を愛することがこれほど心を浮き立たせ、夢を追うことがどれほど人間を前に進める力となるのか。ミュージカルがバレエとこれほど融合し、新しい芸術の域にまで達していることにも驚かされる。さらにそれらを彩るのが、現代の唯一無二の音楽家、ガーシュインの名曲の数々。劇団四季が日本人キャストで日本初演しているミュージカル「パリのアメリカ人」は、極めて精緻にデザインされながら予想もつかない動きの中で繰り広げられる俳優たちの身体表現が、物語をどこまでも弾ま

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