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2018年9月の記事一覧
個性爆発のチームBLUE、彼らの人生が私たちの心に激しく突き刺さる…★劇評★【ミュージカル=ジャージー・ボーイズ チームBLUE(2018)】
特定のアーティストの全キャリアにわたってのヒット曲を散りばめたミュージカルとして知られる「ジュークボックス・ミュージカル」というジャンルにおいて、「マンマ・ミーア!」と並ぶ双璧のジャンル代表作とされながら、「ジヤージー・ボーイズ」が他のどの作品とも違うのは、アーティストの光だけでない影の部分が容赦なく描き込まれ、作品全体が豊かな陰影を持っていることだ。そして、それぞれのナンバーがその時々の彼らの心情を痛いほど表していること。また決して単一の視点ではなく、複数の視点で彼らの置
見えたのは、互いの限界や可能性をすべて知った上で、さらに演技のレベルを上げ、さらにはみ出せないかを虎視眈々と狙っている野心的な顔…★劇評★【舞台=ジャージー・ボーイズ チームWHITE(2018)】
いわゆる「ジュークボックス・ミュージカル」というのは、その作品のために書き下ろされた曲ではなく既成の曲を使ったミュージカルやミュージカル映画のことを意味するが、「マンマ・ミーア!」の大成功以降、安易に曲を羅列しただけのものや、雰囲気だけをあてはめて楽曲を散りばめただけの作品も乱発され、ジャンルとしては評価が大きく分かれ、玉石混交であることは否めない。そんな中でも、「マンマ・ミーア!」が楽曲群にオリジナルの物語を付与したタイプとして高い評価を受けているのに対して、その楽曲を持
オトナセツナイ香水を染み込ませて…★劇評★【ミュージカル=マイ・フェア・レディ 神田沙也加・別所哲也バージョン(2018)】
言葉オタクの言語学者が、街角で粗野な言葉を吐く娘と出会い、ひょんなことから彼女を貴婦人のように育て上げるという、一見シンプルな物語である「マイ・フェア・レディ」。映画やミュージカルの世界的な大ヒットによってあまりにも有名な作品になったが、そこには女性のシンデレラ願望、男性の育成願望を同時に満たす要素があり、窮屈な上流階級と生命力あふれる庶民という英国ならではの階級闘争的な視野も入っている。また学問というもののご都合主義な面や貴族社会の欺瞞ぶりもたっぷり。もちろん男と女が互い
コンビネーション抜群、鮮やかな変化で上質な仕上がり…★劇評★【ミュージカル=マイ・フェア・レディ 朝夏まなと・寺脇康文バージョン(2018)】
花売り娘と大学教授、下町の喧騒と上流階級のプライド、学問と恋愛などなど…。そんな相反する要素をぶつけ合わせたり絡み合わせたりしながら、華麗なファッションと言語矯正の苦闘という二つの大きな柱で観客を惹きつけてやまない一大ミュージカル「マイ・フェア・レディ」。その時々の感情をものの見事に舞台上に表した楽曲の流麗さと、数多くの登場人物たちを縦横無尽に配置していく演技デザインの素晴らしさがこの作品を唯一無二のものにしている。神田沙也加、朝夏まなとというフレッシュなヒロインをWキャス