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短詩集

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#自由律

短詩集⑲

1.私に「たったひとり」がつくことはない 2.膨らむ想像の圧力で心が潰れていく「わたしがいなくなっても」 3.空っぽの心なんて欲しがる人はいない 4.井戸の底確かめる 貞子がまだ寝てるかどうか 5.ただ道連れを求める心など隔離した方がマシ 6.会いたい人は誰もいなかったけどいつか誰かに会いたいと思ってきた 7.全部幻だって思ってるけど この誇りぐらいは死ぬまで守りたい 8.無知を言い訳にしないためそれを前提に生きる 9.無欲など目覚してなるものか 欲こそ生きる

短詩集⑰***

1.好きな人に「元」つけたくて喧嘩した 2.最後通告にしか書けない僕の本音と恐怖 3.逆算して炙り出して僕のねじれを 4.どう触れても壊れるトランプタワー危うい君 5.嵐の国に僕の故郷はある 6.ハツミさんが死んだのはきっと「好きじゃない男の子供を産みたくなかったから」 7.壊れた心が二つあるぐらいなら死体が一つでいいと僕は僕に手を掛けた 8.恋心に引き摺られてあなたの奴隷になる 9.夜が明けるってどうしてわかるの?暗闇の子供たち 10.私じゃなくて良いなら

短詩集⑰

1.「残念ながら恋と呼べる代物ではありません」 2.君が見つめる7cmピンヒールと真っ赤なダッフル 3.心まではオシャレで誤魔化せません 4.ダイヤが毎日愛を囁けば平和なのにね 5.部屋で動いてるのは僕の心臓と振り子だけ 6.君の名前白く塗り潰す午後 バカみたい 7. 愛の好みも細分化されてゆきますか 8.「セロリ」はもう古い「がんばる」神話の崩壊 9.方向転換を余儀なくするためここに壁を作りますドーン 10.冬と夏でカップルの様子って違うんだね 11.今

短詩集⑭

1.兄から届いたブレスレット遺伝子の螺旋スクリューチェーン 2.「どうせ太陽月星ヒカリモノしか見ないんだろ」空のフィラーが夕焼けを見せてくる 3.呼ばれるままに生きて何が悪い 運命がもつれても心が燃えるから 4.君がそばにいると胸がざわめく理由「一つにはなれない」愛するほど思い知るから 5.求めるから足りない そう僕は求めている 君に君に 今ただ一人君だけに 6.寂しさのアピールに誰かの寂しさ利用する ペロリ舌出して 7.完全に僕を受け止めるあの人 欠乏が出発じ

短詩集⑬

「あいつ悪魔だよ」私の噂して シザーハンズだなんて思いたくない見て見て手が小さいでしょう? 私の中の何かが私を殺す前に走り出さなくては 時間守った私を褒めて「よく出来ました」 ここまでさせて褒めないで「出来たね」 首輪を引っ張られて悲しげに歩き出すワンコちょうちょを見てた 「かわいい」の功罪 チワワのフリフリの衣装に見る 「欲しい」誰にでも言わせてきたあの人「殺したい」私に言わせたの キズナ切り落とされて転んだ姿仁王立ちで見下ろす私を何とでも呼べばいい この

短詩集⑫

ひたすら意識的に細部を作り込む蒼井優の無意識が宿る表情に欲情する 「皆適当にバレる嘘つくんだな…」バレない嘘しかつけない僕はハンデ持ち 私を刺した人に「身体を大事に」と言われ 私は頭も打ったのか? 「どうせいつか嫌われるから」「損切り早すぎだろ」友の一撃 正面切ってフラれにいったあの日獲得した「不確実性」というキーワード フラれるのが怖くない時点で自分の脈もない 臆病者は治験で愛情を測ろうとする 賢者は愛の強度検査をしない 「その話聞きたくないって言ってもい

短詩集⑨ 病棟にて④

二の腕がキリリとした彼女「スポーツやってましたか?」聞いてみたい 左手首に巻いたバーコード 私を管理して徹底的に 心を隠すようにせめて軽やかにあれ私の手脚と頭 「大丈夫ですよ」ベースラインを一歩も動かぬあなたの声に宿る静かな焔 自分で心臓を掴み出す裁断の痛み彼は知ってたから気付いた 共依存抱えた人間の信念をトレースする気にならない 私に「恥を知れ」まで言わせたあの人出世した 見込んだ人に厳しい私 どこにも行けなくていい ここにいられるなら 脈拍モニター欲しい私

短詩集⑧ 病棟にて③

「この下何も着てないの」ネタにするタイミングがない 「パンツは履いてていいんですよね?」再度確認 一人ベッドでラリって詩を書く 書けているのか 書けたら少し困るかも 朦朧とするのに眠りに落ちない脳から零れ出す言葉よ踊れ 「痛いよ、ごめんね我慢して」興奮しました 心当たりなくてもほっとする感染症検査 「一番大事な子がいいよ」重鎮を召喚 友達ありがとう 右も左もわからなくていい 見ればわかる歩いていける 私は人に欲しがるものがない どれもこれも幻 義務と義理以外

短詩集⑦ 病棟にて②

隣のベッドでリハビリ始まる 作業療法士は「おとうさん」のようだな ホテルより優秀なホスピタリティ 当たり前だ語源(のひとつ)だもの 車椅子は天国のよう カートに乗るのが好きな私はしゃぐ 何が癒されるって彼等の「責任感」 夕暮れのリバービュー見ながらここに住みたいと呟く 自販機で明日の朝までの飲み物確保ホクホク 手術中にリラックスしようとか思うのが間違いだ 痛いのは嫌だが麻酔も痛い 「今日は動かないでくださいね」その「接着剤が乾くまで触るな」的注意が嬉しいこの傷

短詩集⑥ 病棟にて①

ただ麻酔でラリるのだけが楽しみで 頼ってくれないの?ごめんね蛇の道は蛇に聞くタイプですねん 屠殺工場みたいな手術ゾーン 消毒液が冷たくて脚が何度もビクリ 付添はないの?病身の伯母を隠れ蓑に使う 聞き慣れた単語が半裸の私の上を飛び交う 神の采配or因果応報 前者にしとくか 外科医は性格悪そうな人がいい このまま麻酔よ醒めないで永久に 館内放送ライトの呼び出し平和だな 絶景リバービューの談話ゾーン 前回麻酔でラリった話が手術スタッフにウケない BGMの好み

短詩集⑤

1.忘れていいよ私のこと一昨年の紅白みたいに 2.忘れないで僕のこと三単現のsみたいに 3.「寂しいからじゃないただ必要なだけ」十五歳の宇多田ヒカルが言い切ったのに私たち何なんだろう 4.「必要」なんて言われたら一目散に逃げ出すCHEMISTRY解散 5.朝食以外何もかもがまずかった 6.まだ好きとか言える隙間もなくなってほっとしてるの?いいえ寂しいの 7.アスカ締め殺そうとしたシンジの気持ち知った気がした 8.動かなくなった感情 AIだからちゃんと学習します