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第22回神経理学療法学会学術大会における発表と奨励賞受賞


2024年9月28-29日、福岡国際会議場にて、第22回神経理学療法学会学術大会が開催されました。参加登録者2104名666演題のとても大きな学術大会でした。

この場において、2024年10月1日から摂南総合病院リハビリテーション科の部門長となる赤口 諒(畿央大学大学院)が発表し奨励賞を受賞しました。

研究の概要
研究テーマは「脳卒中症例の物体把持動作時の予測制御の特性-把持力発揮量・動作安定性との関連性-」です。
手指による物体把持動作の円滑遂行には、動作実行中のオンライン制御だけでなく、運動の結果として得られた誤差情報を次の動作に修正・反映させるオフライン制御(予測制御や運動学習の基となる内部モデルに基づく運動制御)の観点からも、感覚フィードバックの役割が重要です。
この研究は、脳卒中患者における物体把持時の予測制御が、どのように把持力の発揮や動作の安定性に影響を与えるかを探るものでした。

研究方法
125名の麻痺側手指で物体把持が可能な脳卒中患者を対象に、以下の課題が実施されました。

  1. 動的把持課題: 把持物体を上下に動かす際の予測制御を評価。

  2. 反復把持課題: 3種類の異なる重量での5秒反復把持課題による力発揮調節を検証。

  3. 静的把持課題: 30秒間の静的把持課題により、物体把持時の安定性を測定。

これらの課題を通じて、把持力と負荷力の相互相関解析を行い、その相関係数の高さによって群分け(Low群、Middle群、High群)を行い、予測制御の成否(オフライン制御)と把持力発揮量・動作安定性(オンライン制御)の関連性について検討しました。

研究結果
研究の結果、予測制御が不良であることを示すLow群および中群Middle群は有意に高い把持力発揮を認めました。また、動作の安定性においても、これらの群は健側と比べて有意に乏しいことが明らかになりました。
手指による物体把持動作は過去の経験に基づく計画や予測を手掛かりとして実行され、自身が発する動作とその結果によって生じる感覚情報の照合により逐次修正される(いわゆる内部モデルを基盤とした制御)。脳卒中症例にみられる動作拙劣や過剰出力は単に動作の実行そのもののエラーではなく、感覚情報に基づく運動調節、予測制御の停滞に影響を受けている可能性が高いことを示唆しました。

奨励賞の受賞について
赤口の発表は、666件の一般演題の中から選ばれ、奨励賞を受賞しました。この栄誉ある受賞は、彼の研究が高く評価された証です。多くの参加者から寄せられた質問や意見は、今後の研究においても大きな糧となることでしょう。


表彰式


赤口からのコメント
第22回日本神経理学療法学会学術大会にて、この様な栄誉ある賞を頂けたのは、河島さん(国立障害者リハビリテーションセンター研究所)、森岡先生(畿央大学)をはじめ、普段から共同研究で関わっている皆様(静岡リハビリテーション病院、愛宕病院、西大和リハビリテーション病院、中伊豆病院、桜十字福岡病院)の協力の賜物です。心から感謝いたします。
単に把持力を計測しただけでなく、制御の側面に焦点を当てた意義がしっかり伝わったと思うと、喜ばしいかぎりです。今後も精進して研究を続けていきたいと思います。

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