#43 器の底もよく見なきゃね
「底に触れる 現代美術in瀬戸」開催中の瀬戸です。この展示の連携企画で瀬戸蔵ミュージアムで企画展「底・裏を愉しむ」が行われていると知ったので行ってまいりました(11月4日まで!急いで!)。連携企画と言ってもこちらは現代美術じゃありません。
この企画展ですが、普段企画展示を行っている展示室(新収蔵品展をやってます)ではなく、その奥の昔の映像作品が流されている一角での展示になっています(だから展示点数もとても少ない)。
突然ですが、美術館とかのケースの中の茶碗など見ている時に「あーー!ひっくり返して裏見てみたい!!」って思うことないですか!?私は思うよ!ほら、陶器の裏側ってすごく面白いじゃないですか!
様々な情報が裏側・底にはあるんです。
きれいな釉薬の器にも釉薬が掛かっていないところがあります。底です、そこ!
釉掛けしたあと窯の棚板に着かないように底の釉を拭き取ったりします(その一手間を忘れると器が棚板にくっついてしまい器もダメになるし棚板の後始末もたいへんです。本当にたいへんなんです)。で、それで釉の掛からないところが出来ます。そこを見ると釉の下に隠されている「土本来の姿」が顔を出します。あーなるほど、鉄分が思ったより多いのね、とか、細かいかと思ったら意外とざっくりした土なんだね、のような土味が観察できます。
また、高台の形も鑑賞出来ますね。高台は茶碗とかの下にある土台のような部分です。ここって作った人の個性とか技術とかが見えてきます。繊細な器だからやっぱり高台も繊細だね、とか、あら意外とゴツい高台だ、これはユニークだ、のように面白く楽しめます。裏から見たら器に印象が変わったり、深まったり……です。
さらに高台の近くには作家のサインや窯印があったりしますので誰が作ったか、さらには(年々変化したり、窯印を替えたりするので)その作家さんが何歳くらいの頃の作品なのかもわかったりします(このあたりは鑑定の専門家の仕事ですが)。あとね、作家さんによっては量産で数を作る時と個展などの気合を入れた時とでサインや印を替えるという方もいますね。
今回の展示にもあった古い時代の窯跡から出てくる山茶碗とかは糸(しっぴき)で切りっぱなしの底が多いです(糸切と呼んだりします)。切り口は作った人の個性が出るそうで、そこを(底をね)比較するとその窯で何人くらいがろくろを挽いていたかも分かると聞いたこともあります。
普段使っている器、気に入ってる器などちょっとひっくり返して見てみましょう。新しい魅力を発見できるかもですよ!
とにかく、いろいろな情報が器の裏側にはあるんです。器の底をじっと眺めているだけでちょっと通っぽく見えますよ(ひとまずどこかでやってみましょう)。
父(先代ね)が料理屋などでふと器の裏側を見ているのを真似て、幼い頃の私が皿とかどんどん裏返しにしていってお店の方に「瀬戸の子にはかなわんなあ」とか言われたという昔話をよく母がしていました。まったく本人は記憶にないのですが今よりずっと勉強家だったようです。
閑話休題。今回の企画展ですが、数は少ないのですが実に面白いものでした。普通の角度から見た写真が横に添えられているんですが、茶碗などは裏からの方が魅力的にすら感じるものもありました。陶板などはメモのような紙が貼られている(それはそれで面白いけど)他はああなるほどそうだよね、だったりもします。この展示、もっといっぱい点数増やして見てみたい、とても見てみたいと思いながらミュージアムを後にしました(外に出た後、急にやっぱり気になって戻っちゃったくらいです)。