脚本家で見る、「知ってるワイフ」
「知ってるワイフ」が日本でリメイクされるらしい。
原題は「知ってるワイプ」
韓国では妻、のことを「ワイプ」と言います。
いろんなドラマを見ていて、どうやらこう呼ぶのは最近の、若い夫婦だということを知りました。
(もしくは年齢が高くても、いわゆる今時の、現代的な夫婦という雰囲気を出すためにこう呼ばせている場合もあります)
出るドラマ出るドラマ、視聴率かつ話題性のある演技で外さないチソンが実は出演を断っていたというこの作品。
彼は「君の声が聴こえる」のイ・ボヨンと実生活で夫婦で、愛妻家というイメージも強いため、既婚者の役をやることに不安もあったと記事で読みました。
そんなチソンと、ハン・ジミン主演のドラマ、脚本家を知って絶対に面白いだろうと期待していました。
というのも、脚本は、少し前に書いた記事、
「高校世渡り王」=「ナイショの恋していいですか!?」の
ヤン・ヒスン
他にも、「ああ、私の幽霊さま」「恋のゴールドメダル」などを書いています。
この記事にも書きましたが「ナイショの〜」はとても爽やかな年下男子もの
ラブコメで、あまり苦味を感じず見れるので、ぜひスーッとしたい時に見てみてほしいです。
今回はヤン・ヒスン作家の特徴を、「ああ、私の幽霊さま」「知ってるワイフ」と一緒に考えてみようと思います。
3つのヤン・ヒスン作品からみる傾向
*一人のいろんな側面を切り取る角度=テーマ
*男が女にうんざりスタート
一人の人間にはいろんな側面があり、家族、学校、バイト先、職場、などその場によってそれぞれ違ったキャラクターになっていることがある。というようなことを以前「愛の不時着」についての記事で書きました。
一人の人のいろんな側面。見えているところ 見えていないところ
それは相手が違えばまた違った面になる。
3作品共通して、その見える角度の切り取り方自体がテーマとなったドラマになっているというのが傾向として言えると思います。
「ナイショの〜」は高校生である主人公が、事情により瓜二つの兄のふりをして大企業の部長になり、奇妙な二足の草鞋を履く事になります。
本来の高校生である主人公を好きな女の子。
そして、同一人物である職場の本部長を好きなヒロイン。
ヒロインは女子高生の姉なのです。
姉妹で実は同じ人を好きになるけれど、彼の見え方は全く違っている。
彼自身も、特に性格や態度を変えているつもりはないけれど、それぞれに見せている姿は別で、ごくごく自然に10歳年上の職場の部下を好きになっていく。その生い立ちなどから全く違和感を感じないキャラクター設定、ストーリーの流れに、感激してしまいます。
「ああ、私の幽霊さま」は幽霊に取り憑かれやすい体質のヒロインが、それが理由ですごく内気で自信のない女の子になっている。彼女は上司であるシェフのことが密かに好き。でもシェフはなんだかもじもじわかりづらいヒロインをもどかしい、うんざりと感じています。
ところが、その彼女の体を(憑依するため)狙ってくるゴーストが処女のままでは成仏できない=めちゃくちゃ恋に積極的な女の子で、彼女が憑依したヒロインは全く別人になる。
シェフはその様変わりする姿に驚きながらも、2つの側面を持つヒロインに惹かれていきます。
そして「知ってるワイフ」はまさにその切り取る側面の極致。
タイムスリップ+(同一だけど)別人 です
主人公は、結婚してからうんざりするほどに変わってしまった妻と離婚を考えているうちにタイムスリップし、現代に戻ってきたと思ったら全く別の人生になっていた。そこでは妻だったはずのヒロインが職場でイキイキ働く同僚になっていて、別の女性と結婚しているにもかかわらず、再び彼女に惹かれていく。
と切り取る側面も何も、同一人物でありながら別人。という設定です。
同じ人物でも相手によって全く別の見え方をする=別人になる。
そこを面白可愛く描くのが本当に上手い作家だと思います。
恋のはじまりはウンザリ!?
どれもドラマの始まりは、男はヒロインに対して、ちょっと〜かなり、
うんざりしていること。
「ナイショの〜」は酒癖の悪さに、「ああ私の〜」はあまりに引っ込み思案なところに、そして「知ってるワイフ」では妻の妻たる姿に。
ラブストーリーの始まりは反発している、とかが基本パターンだけれど、この作家は、ちょっと捻ったうんざりから始まり、うんざりの中からちょっとずつ可愛さを見出し、惹かれていくという共通点があります。
日本では広瀬アリスと大倉忠義でやるようですが、切り取り方で違った見え方をするというのがテーマということは、ある程度時間をかけてそれぞれの面を見せないといけないと思うので、それが日本の短いドラマの時間だと難しそうだな・・・と思ったりします。
やはり、韓国ドラマのあの長さあるからこそ、うんざりするヒロイン、そしてそこからいろんな角度で見え方が変わる主人公ないしヒロインを見せられるのかもしれないなあと。
他にも「脚本家で見る、」というくくりで書いた記事がありますので、よろしければそちらも読んでみてください。