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雨の日と月曜日は
憂鬱な思春期だった。
中学に入る少し前に、東京から瀬戸内海の島に転校した。
当時もう友達と電車に乗って出かけたりできる年だったので、
そこからの島の生活は、辛かった。
やむを得ない事情だとわかっていても、中学時代は本当に、
小さなきっかけさえあれば燃えるんじゃないかというくらい、
思い通りにならない鬱々とした気持ちを、
海に閉じ込められたどこにも行き場のない憤りを、
ダサくて袖を通すのが嫌だった
セーラー服に、充満させていた。
当時から物語が好きで、
大きな楽しみといえば週に一度借りてくる映画だったけれど
毎日のささやかな安らぎは、掃除の時間。
カーペンターズの曲が流れていた。
スーパースター、イエスタディ・ワン・ス・モア、青春の輝き、
トップ・オブ・ザ・ワールド
流れてくる音楽に合わせて口ずさんでいると、そこは本当に
世界の頂のような気分になって、大げさではなく私は目をつぶると
どこか、別の世界に浮かんでいた。
青いメランコリー
雨の日と月曜日は
What I’ve got they used to call the blues
Nothing is really wrong, feeling like I don’t belong
Walking around, some kind of lonely clown
Rainy days and Mondays always get me down
こんな気持ちを “ブルー” って呼ぶのね
何かが間違っているわけでもなく、なんだか自分じゃないみたいで
孤独なピエロのように、さまようの
雨の日と月曜は、いつも気が滅入る
ブルーな怒りの炎のようだった中学生の私を
優しく撫でるようなメランコリーの風が通った。
その一瞬だけは幼い炎が揺らめいて、消えてしまうような風。
憂鬱であることが美しいことであると、
許されたような褒められたような気持ちになった。
校舎の端っこにある、家庭科室の外を掃除しながら、
私はひっそりと自分の中のメランコリーを慈しんだ。
雨の日と月曜日は、さらにそのメランコリーが煌いている
そんな錯覚に陥りながら。
画像は、雨の日と月曜日の、青い憂鬱、を思わせる
E.W Parmacyからお借りしました。
https://edenworks.jp/ew-pharmacy/