ようこそモッキーナ、21世紀枠で連れてって
隠し球と同じくらい卑怯だと誰かは言った。
僕が県下ナンバー1の進学校に入ったのは、他でもない。甲子園に出るためだ。
遺伝子的にどう頑張っても火の玉が出るストレートを投げられないと知った中学時代の僕は、死ぬ気で甲子園のマウンドに立つ方法を考えていた。
その結論が、春のセンバツだけにある21世紀枠に選ばれて甲子園に出ることだった。
1回大会から皆勤で出場、毎年10名前後の東大進学者がいる、地方都市。
あとは俺のふがいないほどこうべを垂れるストレートを駆使して、秋の県大会でベスト8、できればベスト4に入ればよいのだ。
でも、それはそんな簡単なことじゃない。
うちの部員は全員軟式出身でヒョロガリ。スタンドに打球を飛ばすことができる人もいない。
おまけにくじ運も悪く、二回戦で古豪と当たる。
詰んだ。
俺は涙をこらえて家に帰る途中、車に轢かれた。
目が覚めると俺の体は高校時代の元木大介になっていた。頭脳は俺、体は元木。
光が差してきた。