元カノグッバイデェト。
楽しいことはずっと記憶に残る。だから、俺は忘れることにした。
元カノと行った最高のデートを帳消しにするために、その街その町で飲み明かして、吐いて吐いて、毒を漏らした。
それでも脳に迫るのは良いなのか、切ない記憶なのか。それは分からない。
でもこれが癖になってしまった。毎週金・土は元カノといった場所を巡る。
しながわの水族館、野毛、原宿、新宿御苑、箱根。
酒は、その子が好きだったモノ。
結局グッバイするどころか、楽しい思い出にひたるだけでそれが中毒のようになった。
「あぁなんであんなことしたんだろ……」
「もう一度だけ」
そんな言葉が自然と出るが、翌朝になると忘れている。
〆の料理が俺を元のひとりぼっちにしてくれる。
箱根のそば。ちょっと粗めの麺と温かいスープが染みる。
野毛の焼きトン。硬いけどうまい。
新宿の生ハム。薄くて驚く。
どれも全部思い出だ。きっとあの子は覚えていないけれど。