最高賃金、最低労働
眠いのは、きっと季節と空調のせいだ。
フロアを見渡してもウトウトと首を上下させている社員が一人、二人、三人、数えきれないほどいる。
繫忙期ではないとはいえ、こんなヒマな会社大丈夫かと思うが、なんとかなるのだから日本の資本主義、昭和の遺産、万歳だと思う。
と、言っている俺もサボっている。上司にもおそらくバレているだろう。その上司はエロサイトとまとめチャンネルを行ったり来たりしているワケだが……。
ただし、俺がいる場所は特別だ。「サボりたい人が快適に過ごせる」場所を月額で借りて過ごしている。ここはドリンク飲み放題、マンガ読み放題とネットカフェさながらの環境であるうえに、ここにいる間は、本来自分がやるべき仕事の7割が終わっているという不思議なサービスがあるのだ。
その名も「サボリパーク」。店長は若いメガネの女子高生でバイトだ。
「不思議ですよねぇ」「ホント助かってるわ」
すっかり、サボリーマン仲間もできた。
仕事の7割。今日もお得意先を3軒回るはずだったが、2軒は契約を結び終わっている。帰社してからメールを確認しているときに気づくのだが、俺が営業に行くよりもスムーズに仕事が行われているようだ。最高すぎる。
どうせ、まともに働いたって7割も働かない。
でも、サボリパークには鉄の掟があった。
自分の好きなことを一つ絶たないといけないのだ。