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やけ酒でもしたくなった…?

「ごめん、別れよう」「……うん」
時間は残酷だ。ドラマのワンシーンでこんな会話があれば、すぐに翌朝を迎えてくれるが現実はそうもいかない。
〆の一杯がまだ届いていないし、駅までなんとなく会話しながら帰らないといけない。「じゃあ」「なんかあったら連絡して」ってシーンはなかった。
苦々しい顔で千代田線の上下に分かれていった。
終電間際の千代田線は金曜夜のカオスな空気に包まれていた。
誰かが吐いた。シトシトと泣くことも許されないのが、現実なのだ。

その晩、アタシはバーに立ち寄った。
マスターが声を掛ける。「やけ酒でもしたくなった?」
――と期待したが、人見知り全開の不思議なマスターで、ピーナッツとカクテルを出したきり、乾いた時間が続く。居心地がいいような、悪いような。

結局3時ぐらいまで店にいて、家に帰った。すっきりしたからでも踏ん切りがついたわけでもなく、スマホの充電がなくなったからだ。

SNSが今日も荒れている。それを見ることだけがアタシだけじゃないって思える唯一の救いでもあることに、恐怖を覚える。

アタシは30歳にして初めての恋を2カ月で終わらせてしまった。
そう、思っていた――。

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