彼氏ドラフト会議 ~いつか
「第一巡選択希望 大森達也 大和システムエンジニアリング 35歳」
アタシは、4人の彼氏候補の中から達也を選んだ。三日ほど悩んだ末の決断だ。
収入が低い、年齢が行き過ぎている、背が小さい、華がないなど、散々っぱら周囲から反対されたけれど、アタシの意志は固かった。
将来性を買ったのだ。
電話越しで達也は泣いていた。まさかの指名に驚いたのかうれしかったのか、まだ涙の理由を聞いていない。
数日後、彼が大きな荷物を抱えてうちへやってきた。同棲を決意したのか。
「すみません、拒否させてください」
アタシは指名を断られた。
彼は海外へ留学に行くらしい。過酷な環境らしいけれど、夢のためだとウダウダ語った。
「もういい、好きにして……」
いつかまたどうしようもなく寂しくなったそのときは、どこにいてもなにをしてても指名してあげるから。
数年後。彼がアメリカで成功したニュースを知った。
医者でありつつ、起業家でもあるらしい。通訳と結婚するらしい。
さようなら。最初に指名したの、あたしだからね。
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