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鳥兜(トリカブト)の花

子供の頃、いや今でも昆虫類はあまり得意ではない。周りの男子たちは夏休みの自由研究と言えば昆虫採集をしていたが、自分は植物採集派だった。動物の死骸を並べて何が楽しいのだろうとさえ思っていた。

美しい花があれば根っこから掘り起こし、洗って土を落とし新聞で挟んで毎日新聞を変えて乾燥させる。ここだけの話と言っても公だが、新聞を毎日変えるなんて地味な作業は大嫌いでほぼ1年間祖母が担当していた。

自分は、採集することと名前を調べることが好きだった。かと言って、今は全く覚えていない。知らないことを調べるということは今でも好きだ。

ある日、山奥で紫色の綺麗な花を見付けた。牛蒡の様にしっかりとした根っこを傷つけないように掘り起こし、りっばな標本が出来た。夏の終わりになっても何の花か名前が判らずじまい。小学校の校長先生が植物学者だったのでその標本を持って校長室に。

美しい薄紫の花は、「鳥兜(トリカブト)」である事が判明。その根には、猛毒がある事はその時初めて聞かされた。美しい花には棘があるとは聞く。まさか根に毒があるとは思ってもみなかった。自由研究はもちろん提出し、色んな賞をいただいた。標本はそのまま京都府立植物園に保管されている。

今、目の前に見えている花がいくら美しくともよく観察しないと茎に棘があったり、知識がないと根に毒があったりする。冷静に物事を見極めないと痛い目を見る事があるということだろう。

それでも、花は心を癒してくれる。今のこのコロナ禍は自分を見失わない努力と起きている事象をしっかり観察し判断する事がも必要だ。

今は池坊専好の言った言葉を胸にもう少し我慢すべきなのだろう。「ほら草花を見てみ、雨が降ろうと風が吹こうとじっと我慢して、春には満開の花を咲かすやろ。今は我慢や。きっと春は来るんや」
(鬼塚忠「花戦さ」より)

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