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“モチベーションがいらない”働き方を知っていますか?【レビュー】『モチベーションの問題地図』(実践レポート付)
「なんだかやる気がわかない」
「成果を出してる同期を見ると自分のふがいなさを痛感する」
「これがしたい!って強く思えることがあればもっと頑張れるのに」
これらに共通しているのは「やる気」や「モチベーション」の欠如です。そして、やる気がわかないのは自分が怠けているからだとか、もし本当にやりたいことだったら頑張れるのに……など、モチベーションがわかないのは自分に原因があるのだと思いがちです。
そんなふうにやみくもに自分を責めるのではなく、なにが行動を妨げているのかその原因を見つけ、モチベーションを上げて行動するための解決策を提案してくれているのが今回ご紹介する書籍『モチベーションの問題地図』です。
どんな人が書いたどんな本?
『モチベーションの問題地図』
著者:関屋 裕希
出版社:技術評論社
著者の関屋さんは、心理学博士であり、臨床心理士、公認心理師、キャリアコンサルタントとして、企業の健康管理の施策の企画や設計に携わっておられる方です。
その活動の中でリーダーシップの研究プロジェクトに参加していたときのこと。自分の思うような働きができないのは周りのせいだと投げやりな気持ちになり、モチベーションが下がっていったそうです。
そこで、自分の状況を可視化して掘り下げていくうちに、何のために自分は働いているのかといったビジョンを見失っていることに気づきます。それがきっかけで、やがて自分らしいモチベーションとの付き合い方を見つけ、自分らしい働き方ができるようになりました。
そんなご自身の体験から、多くの人にモチベーションとの付き合い方を見つけて欲しいとこの本が生まれました。
この本の大きな特徴は、心理学や行動科学にのっとった解決策であるという点です。やる気がないというと、気合いが足りないなどその人の内側に原因があるように思われがちです。しかしこの本では、行動科学の面も取り入れられているので、モチベーションがゼロでも「行動」できる解決策が書かれていて、その点でも大いに活用できる内容です。
こんな人にオススメ
じつは今回、わたしが特に気になった「7丁目 誇りや自信が持てない」の章で書かれていたことを実践してみました。その結果をお伝えしつつ本書をご紹介したいと思います。
読んで、実践するなかで、この本をこんな人にぜひ読んでもらえたら。そう思ったのがこちらのような人たちです。
✅「最近仕事はどう?」と聞かれると答えに困る
✅仕事がマンネリ化して自分が成長していないのを感じる
✅仕事は楽だけど他のことにもやる気を感じない
この3つはどれも私のことでもあります。そして本書の内容を実践したことにより、モチベーションは”出す”のではなく、自然に”出てしまう”ものだという考えに変化したのです。
ちょっともどかしい言い方になってしまいましたね。私がこの本で実践したのは、自分の強みと働くに対する自分の優先度について考えてみる、です。
「退屈」がやる気を奪う
この本ではモチベーションが湧かない・続かない場面を「モチベーションの問題地図」としてマップ化し、章立てされています。
なかでも特に気になった章が先ほどもお伝えした、「7丁目 誇りや自信が持てない」の章。ここに書かれていたことを、手を動かして実践しながら読み進めたところ、私のモチベーションが上がるツボが明確になったのです!
これは「6丁目 「わくわく」がない」の章に書かれていたことですが、「退屈」が人の元気を奪うこともあるそうなのです。つまり、仕事は楽だけど、裁量度が低いため業務について自分の意見を取り入れることもできず、慣れた仕事を繰り返すだけの日々。そのため何年働いても成長したことを感じられなず、覇気が無くなっていく。
周りから見たら「仕事が楽ならいいじゃない」と言われかねません。しかし、一日の大半を占める仕事で前向きな時間を過ごせないでいると、仕事以外のことにも気力が低下し、気晴らしすらやる気が起きずに疲労感や倦怠感が強くなっていくと関屋さんは指摘しています。
そして恐いのは、その状況に慣れてしまうこと。ここから抜け出さなきゃと思うものの、楽な環境から抜け出すやる気も出ないとなると、モヤモヤしたまま時間だけが過ぎていってしまうのです。
そこで、心理学の面から自分を捉え直してみようというのが、「7丁目 誇りや自信が持てない」です。
【実践】仕事や自分の役割に対する「捉え方」を考えてみた
「どんな仕事をしているの?」
こう聞かれたとき、あなたはどんな気持ちになりますか?
堂々と答えられるでしょうか。私はこの手の質問は非常に苦手です。なぜなら、自信を持って自分がいましているのはこの仕事だと言えるほど、成果もやり甲斐も出せていないからです。
この原因は、いま自分がしている仕事だけを切り取って見ているからであり、それが自分が大事にしたいこと、好きなこと、自分の強みを仕事に反映できていると実感できていなから。そう関屋さんは書いています。
「自分に合った仕事を選んでいる」
「だから自分はこの仕事をしている」
こんなふうに思えたなら、「どんな仕事をしているの?」と聞かれても胸をはって答えられそうです。
そこで、自分の仕事に誇りを持てるようになるため、いまの自分がすでにもっている軸を捉え直す解決策が書かれています。
そのなかで私が実践してみた3つをご紹介しましょう。
⬛実践その1
「働くうえで大切にしたいことを見つける25の視点」
これは、自分が働くうえでどんなことを大切にしているか、何に意味を感じるのかといった視点で、これまでの仕事を振り返りながら働くことの価値を捉え直すものです。
そこで私がやってみた結果はこちらです。
・自律性(命令や束縛を受けず、自分の力でやっていける)
・社会的交流(いろいろな人と接点をもちながら仕事ができる)
・安定(安定した環境の中で無理せずに働ける)
3つのなかで私が一番大切にしたいのは「安定」です。けれど、なかなか3つに絞りきれず、学習・好奇心(新しいことを学べる)も捨てがたいところでした。
これまで働いてきた場面を思い出しながら実践したのですが、意外にも浮かんできたのは、一番大変な思いをし、二度と戻りたくない職場でした笑。けれどいま思えばこれまでの仕事人生の中で、ある意味、夢中になれた仕事経験だったかもしれません。
なぜそう思うことができたのかについては、〈実践その2〉で作成した表にあるエピソードの箇所に書きました。
1番つらかった仕事経験から見えてきた私のモチベーションが上がるツボ
⬛実践その2
「今までで一番夢中になれた仕事経験を思い出す」
次に先ほど書いた私が一番つらかった仕事経験を思い出し、私の働くことの価値を踏まえて3つの質問に答えてみました。その結果がこちらです↓
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一番大切にしたい「安定」した環境を整えるのが大前提な私にとって、一番大変だった職場はその条件をクリアしていました。待遇面は安定していたから。辞めたくて仕方なかったけれど、こうして振り返ってみたら働くうえで大切にしたいことがちゃんと満たされていたのだと気づくことができました。
強みを捉える2つの見方
最後、3つめに実践したのが「強み」にフォーカスしたものです。
⬛実践その3
「強み×働くうえで大切にしたいことのクロス表」
ここでは、先に捉えた「働くうえで大切にしたいこと」3つと、強み発見ツールを使用します。この書籍で紹介されているのが、自己分析ツールとして知られているギャラップ社が提供しているWebサービスツール、「ストレングス・ファインダー」です。
「ストレングス・ファインダー」による私の上位3位の資質はこちらです。
1.最上志向
2.収集心
3.内省
この3つの資質を縦軸に並べ、横軸には働くうえで大切にしたいことを並べたクロスの表を作り、「強み×価値」を発揮する働き方が具体化できると書かれていました。これは面白い! そう思った私はさっそくクロス表を作成してみました。その結果がこちらです↓
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この表を作ったことで分かったのは、「待遇面と人間関係において心理的安全性を感じられる環境で、いろいろな人と接点を持つことで大きな刺激を受けることが自分の長所を伸ばし、強みを発揮できる」のが私だということです。
この表を作ったおかげで、私が心地良く、やり甲斐を持って何ごとも取り組めるような環境に私を連れて行くことができそうです。すなわち、モチベーションがあがらない、やる気がでないのは私が怠けているからだと自分を責めず、置かれている環境のせいにすることを回避できるはず。そう思うことができました。
こちらの本もオススメ
本書にはここでご紹介した以外にも、やる気やモチベーションのために、仕事の仕方や働き方、そして働く環境を設計する方法がいくつも紹介されています。
そして、こちらの本と合わせて読みたいのが、『感情の問題地図』。
ストレスだらけ、モヤモヤばかりの仕事の心理との付き合い方について、心理学の専門家である関屋さんが書かれている本です。感情について知りたい人はこちらの本も是非お読み下さい。
あとがきに書かれていますが、「感情を味方につける」(感情の問題地図)と、「(自分にやさしく)モチベーションを味方につける」本書、『モチベーションの問題地図』の2冊は、著者の関屋さんが書きたかった2大テーマだったそうです。
ぜひこの2冊から感情とモチベーションを味方につけて、ご自分を居心地の良い状態に置いてあげてくださいね。
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こちらの書籍は、ツナグ図書館の活動を通して出版社の技術評論社様よりご恵贈いただきました。誠にありがとうございます。
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