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『本屋のパンセ』トークイベントに行ってきたin神戸

JR元町駅から海側へ徒歩7分。栄町にある書店、1003(センサン)で『本屋のパンセ』(作品社)刊行記念トークイベントが行われた。

登壇されたのは、この本の編集をされた三砂慶明さん。「読書室」を主宰し、TSUTAYA BOOKSTORE 梅田MeRISE店に勤務している書店員さんでもある。そしてもうお一人は、1003店主の奥村千織さん。作品社の青木誠也さんの進行で話は進んていった。

こちらの本の著者、奈良敏行さんは鳥取県にある定有堂書店の店主である。
残念なことに2023年4月18日に閉店してしまったが、奈良さんの選書や取り組み、そして本に対する向き合い方に感銘を受けた全国の書店員にとって聖地であった。

『本屋のパンセ』は、その定有堂書店が発行していた月刊のミニコミ誌『音信不通』に掲載された奈良さんの巻頭エッセイに、書き下ろし原稿を加えて三砂さんが再構成した本である。


会場となっているビルの5階に書店、1003はあった。ほどよい広さの店内にびっしり並べられた椅子。15分前に到着するとその椅子のほとんどが埋まっていた。皆さん、これから始まる本の話に待ちきれない様子が伺えた。

定刻になり、三砂さんから『本屋のパンセ』が生まれたきっかけについて話が始まった。なかでも、この本の著書である奈良さんのエピソードはなかなか興味深い内容だった。

たとえば奈良さんは、同じ言葉でも高さを変えてみることがあって、それはまるで螺旋階段のようだと三砂さんは言う。また、「人は必ず宝を持っている」とは奈良さんの言葉らしいが、じーんときてしまい筆圧強くメモをした。

会場には県内外から書店員さんも来られていたようで、3名の方たちのお話も聴くことができた。

感じたのは、ただ書店員の仕事として本を売っているのではなく、そこに暮らす人の幸せな人生のために必要な本を差し出すことのできる書店員でありたいと思っているように受け取った。なんだかかっこよかったなぁ。

また、『本屋のパンセ』と一緒に並べるとしたら? という問いに対し、三砂さんと奥村さん、それぞれが選書した何冊かの本が紹介された。おふたりの熱のこもったお話に全部読みたくなるほどだったが、そこはぐっと我慢して2冊買った。

その他に、真ん中に映っている『とっとり、ひとり』は、定有堂書店の常連だった三浦永理さんの作品。書店に通ううちにミニコミ誌『音信不通』に記事を書くようになったそうで、その記事をまとめてエッセイにしたのがこの作品である。

この日迎え入れた本たち


あっという間に2時間が過ぎ、トークイベントはお開きとなった。私は帰りの電車の中で待ちきれずに『本屋のパンセ』を読み始めた。すると間もなく、良い言葉に出合えた。

「一つのアイデア(思いつき)が心に点火する」(P13)

"心に点火する"という表現が、静かな情熱のようなイメージがあって、のんびりした私の性格にとてもしっくりきたのだ。

読んでいると、これはどういう意味だろうと聞きなれない言葉に何度も出合った。たとえば、それは「レジリエンス」であったり、「ナラティブ」であったり。いつもなら分からない言葉があってもそのままスルーしてしまうのだが、なぜかこの本はそうするのが憚られた。ひとつひとつ言葉の意味を調べ、理解して丁寧に読みたいと思うからである。

電車を降りるとめずらしく雪が本降りになっていた。買った本が濡れないよう、本を中心に傘をさし家路を急いだ。

だんだん体が冷えてきたので自然と足も早まるなか、今日のイベントを思い出す。私も結構な本好きと思っていたが、世の中にはもっともっと本が好きな人がいるのだということを痛感した。

そしてもしも本を読まない人生だったらどんな人生を送っていたんだろう、そんなことを考えてみた。本が好きでよかった。


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