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読書記録 2024年7〜9月に読んだ本

 こんにちは、せ→る→です。

 本日は2024年7~9月に読んだ本の感想を書いていきます。


「ときどき旅に出るカフェ」近藤史恵

 奈良瑛子(ならえいこ)が偶然見つけた喫茶店で働いていたのは、元同僚の葛井円(くずいまどか)だった。円は世界を旅し、世界のスイーツをその喫茶店で提供している。
 喫茶店を訪れる様々なお客様のモヤモヤを晴らす連作短編集。

 世界の珍しいスイーツがとても美味しそうでした。特に気になったスイーツは、第二話『ロシア風チーズケーキ』に登場するツップフクーヘン。チーズケーキとチョコレートが融合したスイーツで、ロシア風と言っておきながらドイツのスイーツらしいです。
 チーズケーキはあまり得意ではないのですが、チョコは好きなのですごく食べてみたいなと思いました。

 少し重たい話も出てきますが、連作短編なので軽く読めて楽しかったです。(連作短編大好き)
 世界を旅するカフェ、私も常連客になりたい。

 作中で、円のお店のコンセプトやメニューを真似たような喫茶店がオープンするシーンがあります。そこでの瑛子の気持ちがこちら。

 似たようなドラマ、似たような映画、似たようなデザインなどがあふれかえっていても、当たり前だと思っているのに、自分が大事にしているものが同じように真似られただけで、どうしてこれほど苛立ちを覚えるのだろう。

181ページ

 この部分、すごく共感しました。故意に真似ているのであればめちゃくちゃ腹が立ちますが、故意じゃない場合でもちょっとモヤッとしてしまう感じ。

 近藤さんの作品はまだまだ気になるものがあるのでまた読みたいと思います!

「成瀬は天下を取りにいく」宮島未奈

 2024年本屋大賞第1位。
 滋賀県大津市で生まれ育った成瀬あかり(なるせあかり)。突然西武大津店に通い始めたり、漫才をし始めたり、坊主にしたり。

 私には合わなかったですね…すごく話題になっていたので楽しみにしていたのですが。そんな中でも5話の「レッツゴーミシガシ」は比較的好きでした。

「やり直し令嬢は竜帝陛下を攻略中」永瀬さらさ

 10月からアニメが放送されるので予習がてら読んでみました。とっても面白かったです!

 主人公は、戦場を駆け抜け〈軍神令嬢〉とも呼ばれるジル。婚約者ジェラルドから婚約破棄されたあげく、身の覚えのない罪によって処刑が決まってしまう。一度命を落としたジルだったが、目が覚めると10歳の自分に逆戻りしていた。
 ジェラルドとの婚約を回避するためのパートナーとして、たまたま求婚してしまったのが竜神の生まれ変わりであるハディスだった。

 ジルがめちゃくちゃ強くてかっこいいです。戦うヒロイン、最高。
 ハディスは、表紙の印象だとスマートに口説くタイプかと思いきや、実は子どもっぽい。恋愛偏差値が低く、本で勉強しているという(笑)
 かっこいいヒロインと可愛いヒーローの組み合わせ、とても良きでした!

 ジルとハディスの掛け合いも面白く、ジルの元部下であるジークとカミラが登場してからはもっと絡みが賑やかになって楽しいです。

「海の見える街」畑野智美

 畑野さんの文章のテンポ感、ほんと私に合ってる(笑)読んでいてすっごく心地良いんですよね。

 今作は、市民センターの3階にある図書館で司書として働く本田(ほんだ)さんと日野(ひの)さん、派遣として雇われた鈴木(すずき)さん、市民センター2階の児童館で働く松田(まつだ)さん、四人の男女を視点を変えて描いていくお話。
 育休の代わりで鈴木さんが図書館で働くようになってから、他の三人に変化が生まれる。

 ストーリーは好きですが、メイン四人はあんまり…でした(笑)鈴木さんと日野さんのちょっと子どもっぽい感じが苦手。
 とはいえ、人付き合いに不器用な四人が自分とは違う価値観や育ち方をした人たちと触れ合うことで、新しい気づきを得ていく展開はとても素敵だなと思いました。

「サヨナラ坂の美容院」石田空

 失恋したら無料で髪を切ってくれる美容院「クール・プリゼ」。友人から噂を聞いた小林葵(こばやしあおい)は、失恋をしたと噓をついて美容院を訪れるが、あっけなく噓がバレてしまう。
 恋がわからない葵はいつのまにか「クール・プリゼ」に通うようになり、お客さんの失恋話を聞きながら、恋について考えるようになる。

 こちらの作品は、マイナビのファン文庫と小説家になろうがコラボして開催していた「第2回お仕事小説コン」の特別賞を受賞しています。
 作者の石田さんの作品はweb小説サイトに投稿されているものを何作か読んだことがありましたが、出版されたものは読んだことがなかったので今回手にしてみました。(実際に受賞した作品はwebで非公開になっているそうです。)

 美容師というお仕事を高校生目線から描くお仕事青春小説、連作短編形式なのでとても読みやすく面白かったです。

 ただ一つ、お客さんの失恋話の部分ではお客さんの一人語り形式(?)で書かれているのがちょっと気になりました。会話相手のセリフはなく、「~っていわれても…」とか「~ですか? そうですね…」とかずっと喋ってる形式のことなんですけど…これは伝わっているのだろうか…

 今、音大に通っているんです。専攻はピアノです。
 すごいって言われましても……小さい頃からずっとピアノをやっていましたから。

17ページ

 上記みたいな文章が少しの間続くシーンがあります。これ、私すごく苦手なんです…(笑)ずっと前に読んだことがあるミステリ作品でも、取り調べシーンでこういった形式で書かれているものがあって、初めてその形式を読んだときからなんとなく苦手です。
 きっと会話のラリーが続くのが良くないから、一人のキャラに喋らせていると思うのですが、どうも苦手です。

 とまあ、引っかかりはあるにせよ、好きなお話でした。爽やかな読後感です。

「今日、きみと息をする。」武田綾乃

 武田さんのデビュー作の新装版。はい、面白いです。武田さんの作品、好き。

 宮澤けいと(みやざわけいと)、田村夏美(たむらなつみ)、沖泰斗(おきたいと)、美術部三人の青春小説。けいと→夏美、夏美→泰斗、泰斗→けいと、一方通行な好意を持つ、三角(?)関係が描かれる。

 この「好き」という感情が三人それぞれ違うのが面白いなと思いました。しかも、「付き合いたい」という気持ちを伴う「好き」を抱いている子がいないんです。
 青春恋愛小説と思って読み始めたのですが、これはこれで面白くてあっという間に読めました。

 ただ、けいと→夏美、夏美→泰斗の「好き」は理解できるのですが、なんで泰斗はそこまでけいとのことが「好き」なんだろう?と謎でした。きっかけのエピソードはもちろん書かれているのですが、そこまでビビッとくるのか?と。
 私の読解力がないだけかもしれませんね…(笑)

「六法推理」五十嵐律人

 リーガルミステリ、面白かった!

 法学部四年の古城行成(こじょうゆきなり)が所属する自主ゼミ(=サークル)「無料法律相談所」。法律関係のトラブルを法的な観点からアドバイスする活動を行っている。
 ある日、経済学部三年の戸賀夏倫(とがかりん)が無料法律相談所にやってくる。

 古城先輩と夏倫のバディのバランスがすごく好きです。古城先輩の持つ法律知識で事件の謎に迫る中、言動の矛盾点や違和感を夏倫が見抜いていき、解決に導いていく。

 リベンジポルノ、放火、毒親、カンニングなどの事件が描かれていて、2章目の「情報刺青」と4章目の「親子不知」が特に面白かったです。
「情報刺青」ではSNSを通しての被害(リベンジポルノ、炎上、身バレ)を取り上げていて、ニュースになっていなくてもこういった事件やトラブルは多いんじゃないかなと思いました。

「親子不知」では、毒親問題が取り上げられていて、どうしたら親と縁を切れるのかが問われていました。以前、『カズレーザーと学ぶ。』という番組でも、そのことについて触れていて、夫婦関係は離婚という形で終わらせられるのに、親子関係はどうやっても終わらせられないと。
 そのときの番組のことはすごく印象に残っていたので、今回小説を読みながら改めて親子関係について法的なことを知れて良かったです。

 びっくりしたのが「親族相盗例」という規定。めちゃくちゃ簡単に言ってしまうと、親族間である場合、盗んでも罰則されないというものらしいです。

 身近に感じる事件やトラブルも多く、とても面白かったです。続きもあるみたいなのでまた読みたいと思います。

「月まで三キロ」伊与原新

 めちゃめちゃ好きな物語でした。面白かった!

 人との出会いや繋がりと、科学の不思議さや壮大さによって、登場人物たちが少しだけ明日を生きようと前を向く物語。
 六つの短編が収録されています。

 表題作にもなっている「月まで三キロ」は、死に場所を下見しようとしていた主人公とタクシー運転手さんの話。運転手さんは自殺にいい場所があると言って、主人公をタクシーに乗せていく。

 文章のテンポ感がすごく好きです。こういう落ち着いた文章がすごく好き。科学の専門的な部分も、堅くないのでスッと頭に入ってくる。

 人との出会いというのは、つくづく不思議なものだと思う。人生というルートの分岐点は、初めから地図の上にあるのではない。人との偶然の出会いが、気まぐれにそこに分岐点を作るのだ。

246ページ

「いい子のあくび」高瀬隼子

 ものすごく良かった。何度も何度も頷いてしまうくらい共感に溢れた作品でした。

 表題作の「いい子のあくび」が中編、他2作の短編が収録されている本作。生きている中での「なんで?」「どうして?」という違和感をこれでもかと描いた作品です。

「いい子のあくび」の主人公・直子(なおこ)は、歩きスマホをしていて他人を避ける気のない人や自転車に乗りながらスマホをいじる人に対し「ぶつかったる」と、避けずにぶつかっていきます。この行動が私にはすごくかっこよく映ったんです。

「なんで自分が避けなきゃいけないんだろう?」と頭の片隅で思いながらも、前から人が歩いてきたら自然と避けちゃうじゃないですか。当たったら多少なりとも痛いわけだし。
 そこを直子は堂々とぶつかっていくんです。すっげぇ……

 直子はその後ぶつかってしまったことでトラブルになってしまうのですが。

 例えば交通ルールを守らない人に対して「捕まればいいのに」とか「怪我すればいいのに」とか。嫌な同僚に対して「異動してほしい」とか。そういう負の感情を全部描いてくれているんです、この作品。
 好きすぎる。

 自分が何気なく生活していて「は?」と思ってきたことを全部言語化してくれている作品です。上手く言葉にできず、誰にも言えないこのずっとモヤモヤしていた気持ちを直子たちが代弁してくれている。

 この作品に対する感想やレビューで、「こんな主人公たちが近くにいたらヤダ」といったようなものを見たのですが、直子たちって表ではめちゃくちゃ”良い人”なんですよ。
 すぐ周りの変化に気づいてサッと行動できるし、気遣いやフォローできるし。だから実際彼女たちが現実にいても、周りの人は彼女たちの本当の気持ちなんてわかるはずもないんです。

 小説だから心の声がわかるんであって、リアルだったら絶対に届くことのない声。

自分が傷つけられたぶん、囚われたぶん、取られたぶん、削られたぶん、薄められたぶん。同じだけを他人にも、と思う。だっておかしい。割に合わない。

115ページ

前を向いて歩く人だけが、よけていくべきなんだろうか。見えている人が、分かっている人が、できる人が、そうしなきゃいけないんだろうか。

116ページ

 わかるよ、わかる。と主人公たちに言ってあげたい。

 この作品を読んでいて特に好きだった表現があって。直子が職場の来客用のお茶が少ないことに気づいて買い足すんですね。新人さんがやる仕事だったらしいのですが、直子が他の仕事のついでに買い足すんです。
 その行動をした直子に対して新人さんが向ける視線を、「謝りながら責めるような目」(39ページ)と表現していて、あああああ、めっちゃわかる!と思いました。

 新人さん的には自分たちがやるべき仕事だったのに、先輩にやらせてしまって申し訳ない気持ちと、なんでやっちゃうんだよ、とかのちょっとした腹立たしさ。

 すごく心に刺さる作品でした。面白かったです。

 集英社のサイトで刊行記念インタビューの記事が載っているので、それもあわせて読むのが私的おススメです!

「イングテッドの怪盗令嬢」伊藤たつき

 両親を亡くし、祖母のシャーロット、執事のエリックとともに暮らす貧乏令嬢のメアリ。「月の涙」を盗め、と皇太子アルフレイから命じられたメアリは、怪盗ルビィとして盗む計画を立てることになる。
 けれど、怪盗を捕まえようとしている警部の中には幼馴染のハーバードもいて…というストーリー。

 幼馴染、怪盗と警部、など王道ではありましたが面白かったです。展開もわかりやすく、特に驚きもなかったので物足りない感はすごくありますが(笑)
 執事のエリックが魅力的で好きでした。もっと活躍している姿が見たかったですね。

「空き家課まぼろし譚」ほしおさなえ

 歴史的建造物の保護や、古い建物の再利用を目的とした「空き家課」で働く主人公・間宮明(まみやあきら)。お仕事見学に来た小学生の三上汀(みかみみぎわ)とともに、古い建物たちの謎を調べたり元住民たちの隠された気持ちを知ったりしていくお話。

 水上都市を舞台にしている作品だと知って、興味を持ったのですが、あまりハマらなかったです。
 世界観やストーリーは好きなのですが、主人公のなよなよ感がどうしても苦手でして(笑)わかるだろそれくらい!ってツッコミながら読んでしまいました。

「わたしの良い子」寺地はるな

 突然家を出た妹の子ども・朔(さく)と暮らすことになった椿(つばき)。まだ二歳の朔との共同生活が始まる。

 私的には理解できない妹と椿の行動ですが…(苦笑)
 大好きな寺地さんの作品なので、共感できる部分やハッとさせられる部分がたくさんありました。今作は特に、椿の言動に憧れることが多かったです。

 とりわけ好きなのがこのシーン。忘年会が終わり、周りがカラオケに行こうとなっている雰囲気で、椿は当たり前のように「帰ります」と言うんです。

「ノリ悪いなー」
「ええ、悪いんですよね、これが」

184ページ

 私も言ってみたい(笑)

「苺飴には毒がある」砂村かいり

 沢田寿美子(さわだすみこ)の幼なじみである“れいちゃん”。寿美子は彼女と毎朝一緒に登校しているが、他人のネガティブな部分を面白おかしくネタにしたり、陰口を言ったりするれいちゃんに対し、なんとも言えないモヤモヤを抱えていた。
 女子校に通う彼女たちのリアルな闇深さが描かれていく。

 私は共学出身なのであれですが、めちゃくちゃ共感するところがあってハラハラしながら読みました(笑)女の子同士の陰口や友達との距離感がリアルで、「あ〜こういう子いるいる」と何度も頷いてしまう。

 作中に登場するれいちゃんみたいな子、覚えがありすぎてもはや笑えます。一緒にいるくせに、その子が離れた瞬間陰口叩いたり、変な噂を流したりして、その子の居場所を奪っていくタイプの子。
 しんどいわ…(苦笑)

 好きだったシーンは、れいちゃんの友達である温香(はるか)が、寿美子に頼み事をするところ。頼み事というのが、寿美子の担任の先生の連絡先を聞いて欲しいというものでして…
 この部分を読んだ瞬間、「自分で聞けや」という感想を心の中にとどめていると、寿美子が次のセリフを言います。

「訊くなら自分で訊いて。わたし今、自分の興味のないことに力を貸すほど余裕ないの」

194ページ

 ひぃー!バチバチ!(笑)
 あまり自分の思ったことを言わない寿美子がちゃんと言えたシーンだったのでテンション上がりました。かっこよかったです。

「運転、見合わせ中」畑野智美

 電車の中にいた人、ホームにいた人、運転見合わせの原因を作ってしまった人、混乱する乗客たちの対応をする駅員さん。突然の運転見合わせの中で、彼ら彼女らはどう行動するのか。6人の日常の一コマが描かれる。

 ツッコミをいれたくなる登場人物が多いのですが(笑)読みやすかったです。
 電車の中で運転見合わせに遭遇してしまった人たちの地獄ときたら…3話目の「デザイナーは、電車の中」の主人公がトイレを我慢している姿が印象的でした。思わず頑張れ、って応援しちゃいますね。

 車両にトイレがない電車もありますし、たとえあったとしても大体は一番前と後ろの車両にあるので、真ん中あたりの車両に乗っているとどっちにしろ行きにくいという。
 空いてる電車なら移動もしやすいですが、通勤通学の時間などで人がパンパンな電車だと移動なんてできないですしね…

 一番好きだった話は2話目の「フリーターは、ホームにいた」。バイトをサボった主人公が、海で宗教勧誘に遭う場面。

「いえ、大丈夫です。わたし、実は同業です」

83ページ

 撃退方法が秀逸で笑いました(笑)もし今後そういう場面に出くわしたらこのセリフを引用したいですね。

「みさと町立図書館分館」高森美由紀

 契約社員の主人公・山本遥(やまもとはるか)、役場職員の男性・岡部(おかべ)さん、唯一司書資格を持った・香山(かやま)さん。こちらの三人がみさと町立図書館の分館で働いている。

 タイトルからてっきり、図書館を舞台にしたお仕事小説かと思っていたのですが、お仕事部分の描写はそれほどなく、家族のお話がメインのハートフルストーリーでした。
 父親と二人暮らしをしている遥を中心に、岡部さんや香山さんの家族のお話も少し描かれています。

 淡々と日常を描く作品は大好きなので読みやすかったのですが、正直あまり記憶には残らない作品だなという印象を受けました。お仕事小説を期待していただけに、残念な気持ちが大きかったからかもしれません。

「うるさいこの音の全部」高瀬隼子

「早見有日」という名前で作家をしている主人公・長井朝陽(ながいあさひ)。ゲームセンターで正社員として働いている朝陽は、あまり作家をしていることを周りに言っていなかったのに、知らないうちに職場の人にどんどん広まっていき、地元でも噂されるようになる。

 賞をとって顔写真が出ているので、本人を特定するのは簡単だとは思いますが、周りの反応がすごく怖く感じました。地元のたいして仲の良くなかった同級生たちがSNSなどで勝手に朝陽の卒業文集を載せていたり、市長から受賞を祝う手紙が届いたり…
 誰かが作家・早見有日が長井朝陽であることを他人に言ったり、ましてや住所を教えているのが怖すぎて、読みながらずっとヒヤヒヤしていました。

 あとはそうですね、早見有日の小説の中で〈中華が嫌い〉というくだりがあるだけなのに、朝陽本人も中華が嫌いだと誤解されるシーン。本人からしたらモヤモヤしますよね、小説に書かれたことが作家本人の考えだと思われちゃうなんて…

 ずっとむずむずしながら読みました。今後の朝陽に明るい日々はやってこない気がします。重いのにスラスラ読めてしまう小説でした。

「世界の終わりのためのミステリ」逸木裕

 人間の意識をデータ化して生まれたヒューマノイド“カティス”。カティスの主人公・ミチが目を覚ますと、人類はひとりも残されていなかった。
 他人を傷つけてはならない、自らを破壊してはならない。二つの掟が搭載されたカティスは、誰かを殺すことも自殺することも叶わない。

 終末世界で謎を解く、SFミステリ。とっても面白かったです。

 終末世界、ディストピア系を読みたいなぁと思っていたので手に取りました。ストーリー自体は淡々としていますが、どの謎も面白く、旅要素があるのが個人的に推しポイントです。

 余談ではありますが、星海社FICTIONSの作品を初めて読みました。カラーの挿絵があってびっくりしたとともにすごくテンションが上がりました。めっちゃ綺麗なのです。
 ロゴプリントの入ったスピンや天アンカットもこだわりが見られて素敵です。普通のソフトカバーよりも柔らかくて好き。

「叡智の図書館と十の謎」多崎礼

 十の短編を繋げた一つの長編小説。
 うーんとですね、あんまり楽しめなかったです。

 長編だと思って1話目を読み始めたら、2話目から全然違う話が始まって、「え…? あ、そういうこと?」と。
 スラスラ読めたのですが、個人的には刺さらなかったです。

 以上、7〜9月に読んだ小説たちの感想でした。
 今回読んだ初読み作家さんで気になったのは、やはり高瀬隼子さん。「いい子のあくび」がものすごく刺さったので、芥川賞受賞作含め他の作品も追いたいです。


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