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1人称は『ボク』

『それって楽しい?』

ボクにも教えてよ
ちょっとくらいなら
このお菓子あげるから

その科白を吐いた君
左手に持っていたの
チョコフレークの袋

よく観たら
袋のデザインは
ココ30年間もの間
全く変わっていなかった

30年前の自分には
結局、手紙は出さなかった
そう小声で呟いたら
君は僕の顔をじっと見つめた

まだ
実際には
何かが始まったわけでは無かった

スタートの合図が掛かる頃
空の色は変貌した
青かった空はオレンジ色に

夕焼け空の理由はたぶん
わかった、説明できたけど
そんな余裕があるわけじゃ

そして
君の最初の質問には
僕は
まだ答えていなかった
時間は余計に過ぎていく

テーブルの上にあった
観葉植物の土は
午前中よりも乾いてた

そろそろ頃合かも?
何の?
趣味のはなし?
君が僕に聴きたいのは?

その前に
話の前提として
目の前に在った
一つの事実について
僕は話したくなった

僕の年齢は45歳
君の年齢は14歳
年の差は31もあった

晩ごはん、一緒に
親子丼を食べたって
無駄になりそうなくらい
僕らは赤の他人だった

しかも、性別も異なった
君は女性、女の子だった

つまり、僕(中年)は
14歳(中学二年生)の女子に
チョコフレークを出汁に
疑問を投げ掛けられていた
というわけだ

コレは
客観的に観て
なかなかな事だと思う
普通はない話

45歳の僕から観ると
14歳の娘は
やっぱり
ただ、あどけないだけの
マセたガキンチョだった

何を言われても
何を聴かれても
凹んだり
傷ついたりはしなかった

笑って、流せる会話
雑談は
僕のすぐ目の前
隣りに存在した

君は
たしかに存在していた

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