寄せ集め部隊スピンオフ・AZURITE/理不尽
順調に占い師としての経験を積んでいった。それに合わせて元々天性的に高かった表現力も必然的に上がっていく。
意見も鋭くなり、より的確に伝えられるようになっていた。
口数がとても少ない所は変わっていないが。
しかし、否定する人間も少なくはない。
占いに懐疑的な人たちが、強く当たるようになってきた。
ある日、サナが寝た後にパソコンで占いに関する情報収集をしていた時に目に入った動画。占いなんてものは信じるなという動画を気になって見てみた。
偉そうなふざけた格好の男が長々と語っている動画だった。「占いなんて聞くだけ無駄ですよ。金払って行く奴はアホですよね。デタラメの夢物語で騙すなんて、詐欺と一緒でしょ。都合のいい所だけを信じる奴はもっとアホ。皆さんに覚えて欲しいのは占い師は詐欺師と一緒ですね」
画面の中の長い金髪の男は不愉快な口調で続けた。
しかも、その男には見覚えがあった。
近所に住んでいて子供のころ一緒に遊んでいた少年が、成り下がっていた。
「あの子?」
本当にこれがあの時と同じ人間なのか、少女にはわからなかった。でも、そんなことを言うような人ではなかったはず。
動画はまだ続いていて、
「ですから、俺は信じませんね。無駄遣いですから」
くだらない、損をした。と思って閉じようとした瞬間、
「まぁ、昔近所に住んでた奴が占いにハマっていましたけど、所詮病弱者の言い訳じゃね?」
少女のストレスが急増した。
失望した。仲の良かった友達がくだらない小物になっていたなんて、心底がっかりした。
信じていたから。しかし、それはさっきまでの話し。
残念で仕方がないし、人の一助となる占い師を詐欺師と同類にされたことが何よりもイライラする。
分かり合えない人が、夢を応援してくれていた人だった時の衝撃は大きかった。
信じるかは個人の自由。だが全面否定的な一方的に違う考えの人たちを馬鹿にする、あるいは貶すたくさんの意見は少女を傷付けた。
少女は悲しんだ。怒った。他の人も馬鹿にしたのは許せない。
しかし、パソコンをシャットダウンして寝室でベッドに寝転んだ少女は1つの考えが浮かんでいた。
このままで、いいのか。
「?」
涙が出ていた。
一生懸命目指していた物を強く否定されたとき、短い動画だったが余韻が少女を抉った。
別に、その人なりの考えから出た意見だろうけど。
表現の自由なんて言葉は必要ない。
多数と違う考えを持つ少数は容赦なく批判を浴びる。
翌朝、日が出ることは無かった。土砂降りで外に出るのは勇気がいる、そんな朝だった。
「サナ・・・」
一足先に朝食を作ってくれていたサナ。
「あぁ、おはよう。どうしたの?」
厳しくも無情、性悪な世界があることを知った。
「知ってる?」
そしてそれは、純粋に置かれた環境と試練を乗り越えて来たがまだ若く、十分に成長しきれていない15歳の少女の心には残酷な事実になって襲い掛かる。
「何を?」
多くの応援が、たった1つの罵声に覆い隠される事を。
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