寄せ集め部隊スピンオフ・AZURITE/独りで

サナから離れて半年、占い師として個人で鑑定を続けていた。野次馬を避けるために完全予約制にして、料金は30分7000円、録音不可の彼女にとって一番やりやすく集中しやすい環境でお客の不安を満たしていた。
くだらない批判は尽きないが、あれからは糸が切れたように不快さを感じなくなった。
サナからの援助資金は貰ってはいるが、やはり高名な彼女は我慢さえすれば生活には困らない。
予約の電話が絶えない日々。人々の未来を示し、それが的中して誰かが幸せに、良くない結果だったとしてもどう対処や回避を行うことが最善なのかを突き詰めていった。
少女はそうして自分が他人の役に立てることがこの上なく嬉しかった。
家族と全く連絡を取っていないのはめんどくさがりな彼女の常。
親と妹はそれを理解しているから誰も口は出さない。
とはいえたまにはメールの1つも送っておこうと思い立ったから3つ下の妹に、心配はいらないとだけ文字を打った。
今日の営業はもう終わった。ソファベッドに寝転がってテレビを付けると、お笑いやドキュメンタリー、バラエティ番組が放送されていた。
少女はクイズ番組を見ながら宅配弁当サービスの配達員がやってくるのを待った。

一方、今日も一歩も外に出ていない妹。
いつも通り家に引き籠ってはいるが、興味のある項目を徹底的に勉強している。
そんな少女はある一報を知ることになる。
家庭教師おじさんがおすすめの雑誌を持ってきた。
付箋が飛び出していたページには突拍子もない事が書いてあった。
「人々に居場所を作るための人員・心の傷を抱える人のための帰る場所、覗いてみませんか?」という記事がページ一面に大々的に掲載されていた。
「どうだい?私は良いと思うが。当然無理強いはしない。君の意志でいいから、興味が湧くかもしれないと持ってきたんだ。どうかな」
謎の、怪しいとも捉えられるその宣伝は不思議と少女の心を惹きつけていた。
「気になる」
頭に浮かんだ言葉を言うと、彼は笑顔を見せて言った。
「そう言うと思っていた」
それからは更に技術を磨き上げることに専念した。
皆のように走ることはできないが、裏方から戦う戦略は悪くはないだろうから方針は決まった。
ある程度”強くなった”状態で申し込む、とまではいかなくても声をかけてみよう。
そう思った少女は雑誌を閉じてパソコンに向かい合った。

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