寄せ集め部隊スピンオフ・AZURITE/願いの裏側
少しだけ、少女の姉の話しをする。2つ上の姉、その物語を。
仲のいい姉妹は順調に成長していった。2人の病弱さは拭えないが、趣味や心の拠り所を通じて日々を過ごした。
長女が面白く感じたのは占いの存在。
辻褄が合う爽快感が楽しいと思う、だけであったが、
紫外線に対して過敏に反応して肌に悪影響があった中では、
それは彼女にとってはとても新鮮な衝撃になっていた。
興味を持った彼女は追及し始めた。勉強していく過程とその熱量が、見事に父の経営が好転することを引き当てた。
遊びに来た友人や両親、妹たちの明るい将来を独自の業により的中させた。彼女の占いは本物だった。
単なる興味で始めた趣味が、いつしか目指してもいい目標になった。そうして彼女は、1つの将来を自身に提示した。
私の占いが、それにしかすがる人がいない時に、誰かにとって道標になれるように。
悩んでいる、困っている人を自分が持つ力で助けたいと、強く夢見て理想を叶えるために全力を尽くして努力を重ねていった。
周囲の人々と比べてはつまらない日々からの逃避のつもりで始めた事が、ここまで大きくなるとは思ってもみなかった。
だが、これで良い。
日本の高名な占い師に弟子入りを果たし、独学以外での学びが始まった。大手を広げて迎え入れてくれた。
この中年の女性の元で新たな探究が始まる。
両親は最大限応援したいと、内心は寂しい気持ちではあったが送り出してくれた。ささやかな風が吹く曇りの日に空港に向かった。
この日に至るまでには何度か連絡を交わして、満足に動けない身体である事を伝えた。
「そんな事、関係ない。一緒に行けばいいじゃない。あなたに何かがあったら対処できる人が必要でしょう。あなたの腕は本当だからね。期待に応えられるかはわからないけれど、空港のロビーで待っているね」
その言葉をひとまず信じて国際空港にまでやってきた。
待ち合わせ場所のロビーの隅で荷物を持って立っている女性がいる。恐る恐る話しかけてみる。
「あの・・・」
くぐもった小さな声で携帯を触っている女性に話しかける。
「あ、あぁ。ごめんね。来たことが無いから地図を見ながらだったの。始めまして。私がサナだよ、ようやく会えたね」
「あなたが?」
電話やメールでしか関わった事しかない相手だった。
「あと40分あるけど、何かしたいことはある?」
「無い」
「そうなのね。まぁ、荷物を預けに行きましょうか」
「わかった」
荷物を置いて、旅券がポケットに入っているか再確認。
「私の事が胡散臭いと思うのも、構わないけど。あなたは違うんじゃない?」
「・・・」
あっという間に時間が来て、飛行機の座席に腰を下ろす。
「楽しみ?緊張してる?」
サナは少なくとも彼女を置いていくような真似はしないだろう。離陸のアナウンスが流れてくると同時に、この日が楽しみで昨夜、充分に眠れていなかった少女はすとんと眠りに落ちた。
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