寄せ集め部隊スピンオフ・AZURITE/飾らない
深夜、少女は両親に充てて手紙を書いていた。
話す事は簡単だが、箇条書きにして読んでもらう方が表現しやすかったのだ。
言葉では上手に言い表せない感情や意見も、紙に書くことでより正確に相手に伝えることができる。
口で言うのは苦手だから、少女は一番自分ができるやりやすい方法で想いを伝えた。
少女の中には大きな変化が生まれた。
1つは、世界が色付いて見えるようになったこと。
今までこうして生きている事すらも滑稽に見えていて、不意に頭を掻き毟るほど不安になって、何も考えていないはずなのに泣き出して、足元がどうしようもない程暗かった。
それが、激変した。
父の提案で、家庭教師がやってきた。少女は勉強意欲は無くしていなかった。学校に行っていないだけで、動画サイトなどで興味のある内容を調べ、パソコンで資料を穴が開くほど見ていたし読み漁っていた。
探究心のある少女の元に来た彼はとても熱心な人物で少女に親身に寄り添った。
余計なお世話を喜んで引き受ける変わった男性だった。
驚く事に、彼は臨床心理士の資格を取っている。勉強のために世界を飛び回って、憧れた教師に近付くため、努力を惜しまない人物。
彼の粘り強い声によって少女は少しずつではあるが心を開き始めた。
2つ目は、あらゆることに対して余裕が出てきたこと。
今までは張りつめ過ぎていたかもしれない。
自分の気持ちをそこそこ的確に伝えることができるようになっていた。
ふと外を見る。
数か月ぶりに部屋のカーテンを開けると、目に刺さるほど眩しい日の出の寸前の景色が見えていた。
「ん・・・綺麗」
少女が抱いた感想に応えるように、と言っては都合がいいかもしれないが、太陽が顔を見せてくれた。
その鮮烈で美しい光景は、また1つ荒んだ心の傷口を優しく塞いでいった。
一歩ずつ、一歩ずつやっていく。迷惑とお金をかけてしまった両親に何か返せるものがあれば・・・
少女は今まで書いていた日記を破り捨て、新しいページに明るい未来を描き始めていた。
彼女は、無駄だと感じることはしたくないのだから。
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