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ここをみつけてくれた君へ

おや、居なくなってしまうのかい?
どうしたんよ、何があったか聞かせてみなよ。
嫌だって?
どうせ今から居なくなろうとしているのに嫌がる理由なんかないだろう。
なぁに、別に誰も言いやしないしそもそも僕らは他人じゃないか。
僕は君の名前を知らない。
君も僕の名前を知らないだろう?
その気持ちを君の奥深くにしまっておくなら最後に僕に聞かせてよ。
掃き溜めにでもしてさ。


君には世の中がどんなふうに見えているんだい?



色は?



形は?



においは?




ふぅん、そんなふうに見えているんだ…
僕とはまた違ったものが見えているんだねぇ。面白いなぁ。
僕にはね、セピア色の景色が見えるよ、ざらざらしててどこか懐かしい感じがしてる。
匂いは新緑の匂いかな。あとは川の匂いもする。
ふかーく息を吸ってその澄んだ空気を肺いっぱいに送り込むのが良いんだよ。
君もやってみなよ。ほら。



僕ね。夏は必ずガリガリ君が食べたくなるんだ。ソーダ味。1番メジャーなやつ。
あ、すぐそこにコンビニがあるから買ってきてあげる。
お金?要らないよ。だって既に君からあるものをもらってるんだから。




今年もやっぱり暑かったね。茹だるどころか溶けてしまいそうだったよ。
君はこの夏何をしたの?
へぇ、いい時間を過ごしているじゃん。
しょうもないって?そんなことはないだろう。
少しでも楽しかった記憶があるのならそれでいいのさ。
そういう時間こそ実はとても大事だったりするもんだからさ。


実は僕、これからくる秋のために生きているんだよ。金木犀の香りが好きなんだ。徐々に日が短くなっていって、夕暮れ時のあのなんとも表現できない空の色も、長い夜も好き。
それを早く味わいたくて、夏が終わって欲しいと思ってるんだ。
君が嫌になっているこの先の未来を僕は楽しみにしているんだ。




ねぇ、
もし明日を生きることが出来たらさ、僕とまた一緒にガリガリ君食べようよ。
しょぼいって?贅沢だなあ。
じゃあわかった。その時君が1番食べたいものを奢ってあげる。なんでもいいよ。
遠慮はいらない。今日僕の暇つぶしに付き合ってくれたお礼だと思ってさ。

明日もここにいるよ。時間も同じ。
こうみえて約束はちゃんと守るタイプなんだよ。信じてないな、その顔は。

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