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あんたとシャニムニ踊りたい 第3話ー③「ヒーロー」

前回はこちらです。

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 こんばんは 宜しくお願いします  

 初めてのメッセージアプリでの連絡は、既読が付くことは無く、一夜が明けた。 
 最初から、分かっていたはずだ。この女は、ネットが無くても、生きていける人種であることは。 

 だからこそ、折れてはいけない。私はそう思っていた。

 翌日 

 「妃夜、佐野っち、おはよー!」 

 クラスメイトからの動揺が一気に走った。 無理もない、あの暁晴那が、あのクソ陰キャを呼び捨てにしたのだ。

 何で、何でと言う雑音が教室を駆け巡る中、私はいつものように、声を掛けた。

 「おはよう、暁」

 「うん!」

 暁は何事も無かったように、席に着いた。まるで、いつもそうだったと誤認させる程、自然な流れを演出しているように。  

 しかし、それ以上に暁との劇的な出来事は少なかったと思える。 

 授業を真面目に受けたかと思えば、寝ていたり、休み時間は部活の皆と出かけたりと何とも忙しない。 

 私との会話することと言えば、勉強教えてとか位だろうか。  

7月

 「暁ぃぃぃぃ!コノヤロー!」

 「な、何?妃夜、どうしたん?」

 ホームルーム終わり、短い時間の出来事。私は暁に猛追していた。

 「何で、〇INEを返さない!そもそも、既読も付かないし、観ても居ない。こんなんで、友人関係が構築できるとでも思っているのか、コラァ」

 「ひよっち、どしたん」

 「きっと、あれですわ。晴那がかまってくれないから、ジェラってしまったんですわ。お可愛いこと」

 「羽月さんさぁ、コイツ、アテにしちゃダメだよ。茜のだって、既読スルーの常習犯なんだからさ」

 「まぁまぁ、落ち着いて下さい、妃夜さん。みんなもドン引きしてるよ。ねっ?」

 暁の言葉に、私は一度、息を吸い込み、冷静さを取り戻した。

 「そ、そうね。ごめんなさい。取り乱してしまったわ。何で、そうよね。暁がそういうルーズな人間ということを分かっていたはずなのに」

 「そうそう、分かってくれたなら、それでいいんだよ。そういうことはよくあることだし、妃夜がそういうことを言えて、本当に嬉しいな」

 「そ、そんなつもりじゃ・・・」

 「へっへ~、どうかなぁ~?わっかんないよ~」

 私は勢いが先行していたとはいえ、己の行動を恥じた。 
 このままだと、相手のペースに乗せられると思った私はすぐさま、席に戻った。 
 すると暁は〇INEを起動し、メッセージを送っていた。

 こちらこそ!

 それが普通だろと思いながらも、私はスマホをしまった。

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