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キミとシャニムニ踊れたら 第6話ー⑤「こういう時間」
前回はこちら。
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今日は体育祭の出場種目を決める日だ。
うちの学校は、紅組と白組に別れ、競い合うシンプルなものだ。
毎年、クラス毎に組が選抜される。
うちのクラスは紅組である。
応援合戦から、綱引き、玉入れからリレーと言った一般的な体育祭である。
お祭り女のあたしにとって、これは是が非でも勝ちたいイベントだ。
教室で何に出るかを決める時間となり、加納さん司会の下、話し合いが行われたが、その際、石倉先生から、言葉があたしを駆り立てた。
「なお、暁と緋村は絶対出ろよだとさ。脚が速い人は辛いねぇ」
「先生、それは強制参加ってことですか?」
加納さんの言葉に、石倉先生はそうそうととてもにこやかな表情で、話していた。 加納さんは何処か、釈然としない表情を浮かべていた。
「全国レベルのぉ・・・、部長様もいらっしゃいますからねぇ~」
実に嫌みったらしいが、きっと、中村も出て来るだろうと思い、あたしの気持ちは固まっていた。
「最初から、そのつもりですから」
おーと歓声で教室中がどよめいた。
「因みにクラス対抗男女混合リレーだから、緋村君とせなっち、後は」
「勿論、わたくしが参りますわ!」
天はいきなり、手を挙げた。
「他にやりたい人いませんかぁ~?」
「加納さん、わたくしの扱い、酷くありません?」
加納さんは苦虫を食い潰したよう顔で、天を見つめていた。
「えぇ・・・。いいけど、勝ってよ・・・」
「わたくし、彼女に何か、いけないこと、言ってしまいましたか?」
妃夜との会話を後目に、あたしは勝たなきゃと息巻いていた。
それを知ってか、知らずか、緋村が口を開いた。
「まぁまぁ、暁ちゃんさぁ。俺らより、速いヤツらが、要るわけでも無いし、大会でも無いんだから、気楽に行こうぜ、気楽に」
「速いのは、認めるんだな」
「当然っしょ。俺ら、短距離のプロだぜ、プロ。他の部活には負けないっつうの」 緋村の軽口は御尤もだが、あたしは加減するつもりは一ミリも無かった。
それ以外にも、あたしは、綱引きと障害物競争をすることとなった。
順調に種目が決まっていく中で、事件は起きた。
「次は二人三脚のメンバーを決めます。学年対抗なんで、各教室二組。男女は問わないそうです。誰かやりたい人いますか?」
加納さんの進行の下、誰もが手をあげることを躊躇う中、間宮さんがいきなり、手を挙げたのだ。
「はい。私、羽月さんと一緒にやりたいです」
一気に教室の空気が悪くなる感触を肌で感じた。
「お、おい、間宮。無理すんな。お前は見学でも」
流石の石倉先生も、立ち上がり、間宮さんの考えを改めさせようとしていた。
「そうですね。もしも、その際は暁さんを代理ということで」
間宮さんの爆弾発言に再び教室がざわつき始めた。
間宮さんは席に座り、咳き込み始めた。少し無理をしたように見えた。
「間宮さん、その体で二人三脚は無茶だよ」
「そうか゛も゛し゛れ゛な゛い゛」
加納さんの静止にも、間宮さんの支離滅裂な言動に振り回されていた。
間宮さんがどうして、こういったかは、分からないけれども。
「間宮さんの言う通り、暁ちゃんと秀才様で、走るべきだと思いまーす」
「それな。いいコンビだし、何より、デキてるしな」
「ヒューヒュー!賛成賛成!やっちゃえやっちゃえ!」
「チョー面白そう。きゃはははははは」
教室内の空気はどんどん悪くなってきた気がした。
そんな空気を変える為にあたしは一か八かの賭けに出ることにした。
「静粛に!」
加納さんの言葉で、教室は静まり返った。
「そんなノリで、決められることじゃないの。息ピッタリで歩くのだって、況してや強制するもんでもないし」
「あたし、やりたいです」
あたしはあからさまにやりたいという意志を表明することにした。
「せなっち、本気?」
「妃夜はどうなの?」
あたしはまじまじと妃夜に視線を合わせ、彼女がその言葉を言う方に賭けることにした。
「お断り致します」
うん、知ってたよ。 そういうと思っていた。
結果として、教室内ではブーイングの嵐だったが、これで良かったのだ。
あたしが介入しても、キミはそういうことが言える人だよね。
結局、石倉先生の鶴の一声で、別の男子と女子2人が選考される形となった。
間宮さんは、その後教室を後にして、真意を確かめることは叶わなかった。
こうして、種目は決まり、あたし達は、体育祭へと動き始めたのだった。