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あんたとシャニムニ踊りたい 第7話ー⑥「親切」

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 9月に入り、体育祭まであと1週間の休日の早朝。 
 体を動かす為、親に頼んで購入したジャージと靴を履き、ランニングに出かけた時のこと。

 一人、街中を自分のペースで走る爽快感と頭ではいい調子と考えていても、全然動けていないことを自覚しながら、少しばかり、走り込んでいた。

 この辺でいいかと思い、クールダウンがてら、公園を散策していると一人、正拳突きを黙々と行っている女性がいた。

 「あっ・・・」

 「あっ・・・」

 あの不良と目が合ってしまった。時刻は午前6時半。 

 彼女は構えを止め、手を振ったが、私は逃げたい気持ちを抑え、不良に近づいた。 

 「おはよう」

 「おう・・・」

 照れているように見えたが、彼女の真意はよく分からなかった。

 「いつも、ここで?」 
 話さないと決めたはずの彼女と話している自分に驚いたが、不良も同じように見えた。

 「色々渡り歩いてる。朝はいつもだな」 
 道理でその体つきか。鍛えているわけだ、本当に格闘家にでも転身すればいいのに。

 「あんたは、ランニングか?」

 「そうだけど・・・」

 「頑張ってんだな」 
 この不良から、そんな言葉が出て来るなんて、信じられなかった。 
 彼女も彼女なりに、変わろうとしているのか。

 「聴きたいんだけど」

 「どうすれば、アタシみたいに強くなれるか?」

 「なんで、私と戦いたかったの?」 
 あの時の失言を思い出したのか、照れた様子で、私を見つめていた。

 「あれは・・・あれだよ」

 「何?」

 「お前が、暁と仲良さそうだったからさ。お前に勝てば、暁は振り向いてくれるって」 
 振り向いてくれる?彼女は何を言っているのだろう?それじゃ、まるで・・・。

 「もしかして・・・あなた・・・。暁のことが・・・」

 「そうだよ、アタシは暁がLOVEだ。あいつのことが、好きで好きで仕方ないんだ」 
 どうして、そんなこと、真っ直ぐ言えるのか。私には理解出来なかった。

 「アタシは本気だ。あいつの隣にいるべきなのは、アタシだけだ。あんたじゃねぇ」 
 不良の言葉は冗談や酔狂ではないことは、大いに理解出来る。 別にどうのこうの言いたいわけじゃない。  

「どうして、暁にそこまでこだわるの?」

 「好きだからに決まってんだろう」

 「あなたの好きがどんなものか、私には分からない。だったら、何で隣にあなたが居ないの?」 
 それが地雷だと頭では理解していた。 
 しかし、言わずにはいられなかった。言わなきゃ、向き合えない。 
 自分にも、暁にも。 飛び込まなきゃ、前には進めないんだ。

 「良い度胸してんなぁ。流石は、暁の彼女だ」

 「違います」

 「いいぜ、教えてやんよ。あいつの過去、アタシとあいつの」

 「長くなりそうなんで、帰るね」 
 私は走り出そうと後ろを振り向いた刹那、一瞬で回り込んで来た不良に戦慄を覚えた。 
 それと時同じくして、私の視線に人影が入って来た。

 「吹っ掛けて来たのは、あんただぜ?shareじゃねぇだろ」

 「いや・・・。そうだけど・・・」 
 それを言うなら、フェアだろうがと言いたいが、面倒くさかった。

 「付き合ってくれるよな?長くなるぜ?」 
 踏み込まなきゃ良かった。そう思った時だった。

 「何やってんの、2人とも」 
 不良の背後から、聞き及んだその声は紛れもなくいつもの声と砂音を踏みぬく音が聴こえた。

 「なんで、おめぇがいるんだよ・・・。晴那・・・」

 体育祭まで、あと8日。 
 暁と不良の負けられない最後の戦いの幕が開こうとしていた。
 傍観者の私はただただ見てるだけなんだけど。

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