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子ども食堂だいちのめぐみ #3

第三話:訪れる新たな出会い
家族を支え合う大切さ

第一部

雪が少しずつ解け始め、雁木の下に溜まっていた雪も姿を消しつつある。上越市の高田本町商店街にある「だいちのめぐみ」では、春の訪れを感じさせる温かい空気が漂っていた。晃四郎と母親のめぐみは、今日もおにぎりを握りながら、次に来るお客さんを待っていた。

その日、店のドアが静かに開き、一人の女性と小さな女の子が入ってきた。女性は少し疲れた顔をしていたが、女の子は元気に店内を見回して興味津々といった様子だ。めぐみはその親子に笑顔で声をかけた。

「いらっしゃいませ。初めて来てくださったんですね?」

女性は少し戸惑いながら、「はい、友人からこのお店を勧められて…」と答えた。

「よかったら、ゆっくりしていってくださいね。」めぐみは温かいおにぎりを手渡し、親子を席に案内した。

女の子は喜んでおにぎりを手に取り、嬉しそうに頬張り始めた。女性はその姿を見て安心したように微笑んだが、どこか陰りのある表情が消えない。晃四郎はその様子が気になり、めぐみに小声で話しかけた。

「お母さん、あの人、何か悩んでるみたいだね。」

「そうね。晃四郎、少し話しかけてみる?」めぐみが促すと、晃四郎は親子のもとに駆け寄り、元気よく声をかけた。

「こんにちは!僕は晃四郎っていうんだ。ここでお母さんと一緒にお店を手伝ってるんだよ。」

女の子は晃四郎に興味を持った様子で、「わたし、ミサキ。今日はおにぎりが食べたくて来たの!」と元気に答えた。母親も微笑みながら、少しずつ心を開いていった。

第二部

晃四郎はミサキと一緒におにぎりを食べながら話をした。ミサキはまだ小学校一年生で、お母さんと二人暮らしをしていることを話してくれた。

「お父さんはお仕事が忙しくて、いつも遠くにいるんだ。だから、いつもお母さんと二人で過ごしてるの。」ミサキがそう話すと、母親は少し寂しげな表情を浮かべた。

めぐみはその様子を見て、親子に温かい言葉をかけた。「家族が離れていても、こうして一緒に過ごす時間が大切よね。ここに来てくださって嬉しいです。」

母親は少しうつむきながら、「実は、最近夫の仕事がうまくいかなくなって、経済的にも厳しくなってしまって…。それでも、こうして娘と一緒に温かいご飯を食べられる場所があるのは本当にありがたいです。」と打ち明けた。

めぐみは親子の不安を感じ取り、「おにぎりなら、いつでもご用意しますから、いつでもいらしてくださいね。」と優しく声をかけた。

母親は感謝の気持ちを込めてめぐみに頭を下げ、「本当にありがとうございます。私たちも、これからもっと助け合って頑張っていこうと思います。」と答えた。

第三部

その後、ミサキは「だいちのめぐみ」に通うことが習慣となり、晃四郎と仲良くなっていった。二人はおにぎりを一緒に作ったり、店の手伝いをしたりと、まるで兄妹のように過ごしていた。

ある日、ミサキが晃四郎に尋ねた。「晃四郎くん、おにぎりを作るのって、楽しいね。でも、どうしてこんなに美味しくなるの?」

晃四郎は嬉しそうに笑い、「それはね、お母さんが心を込めて作ってるからだよ。お米も家で育ててるんだ。だから、このおにぎりは特別なんだよ。」と答えた。

ミサキはその話を聞き、「私もお母さんと一緒に、おにぎりを作ってみたいな」と言った。母親も「今度、家でも一緒に作ってみようか」と微笑んで答え、ミサキの提案を喜んで受け入れた。

それから、ミサキと母親は少しずつおにぎり作りを始め、家族の時間がさらに温かくなっていった。「だいちのめぐみ」で得た経験が、二人の生活にも良い影響を与え始めていたのだ。

第四部

しばらくして、ミサキの母親がめぐみに感謝の気持ちを伝えに来た。

「おかげさまで、娘と一緒に過ごす時間が増えて、本当に良かったです。少しずつですが、夫の仕事も改善してきましたし、これからまた家族で頑張っていけそうです。」

めぐみは温かく微笑んで答えた。「それは良かったです。困った時にはお互いさまですから、またいつでもいらしてくださいね。」

ミサキの母親は感激しながらも、これまでの苦労が少しずつ報われていくことを感じていた。「だいちのめぐみ」で過ごした日々が、彼女にとって心の支えとなり、家族の絆を深めるきっかけとなったのだ。

晃四郎とめぐみは、これからも町の人々と助け合いながら、温かい食事と居場所を提供し続けることを誓った。

第五部

それから数週間が経ち、「だいちのめぐみ」は少しずつ賑やかになっていった。ミサキと母親は、晃四郎やめぐみとの交流を楽しむようになり、彼女たちは町の人たちとも次第に顔なじみになっていった。商店街の人々も、この親子を温かく迎え入れ、互いに助け合う雰囲気が自然と広がっていた。

ある日のこと。ミサキと母親が「だいちのめぐみ」でおにぎりを食べていると、ドアが開き、一人の年配の男性が入ってきた。彼の名前は佐藤実。毎日のように「だいちのめぐみ」に通い、コーヒーを飲む初老の紳士で、商店街では「まちの情報通」として知られている。

「おや、ミサキちゃんとお母さんだね。今日はどうだい?」佐藤が優しく声をかけると、ミサキはニコッと微笑んで手を振った。

「こんにちは、佐藤さん!今日はおにぎりを食べに来たの。お母さんと一緒にね!」と元気に答える。

佐藤は微笑んで、カウンターに座りながら、めぐみに注文をした。「いつものコーヒーを頼むよ、めぐみさん。」

めぐみは慣れた手つきでコーヒーを淹れ、佐藤の前に差し出した。彼は一口飲みながら、「今日もいい香りだね。めぐみさんのコーヒーは、いつも最高だ。」と褒めた。

佐藤は、「だいちのめぐみ」に集まる人たちにとって、大切な存在だった。彼は、商店街の人々の状況をよく知っており、困っている人を見かけるとさりげなく助けていた。今日も彼は、ミサキの母親が置かれている状況を察し、さりげなく励ましの言葉をかける。

「何かあったら、遠慮せずに言ってくれよ。みんなで支え合うのが、この町のいいところだからね。」佐藤は穏やかな口調で言った。

ミサキの母親は、感謝の気持ちを込めて佐藤に頭を下げた。「本当にありがとうございます。皆さんに支えていただいて、なんとか頑張れそうです。」

佐藤は優しくうなずき、温かい笑顔で答えた。「こちらこそ、町の仲間が増えるのは嬉しいことだよ。こうして皆で集まることが、この町の雁木と同じくらい、大切なことだからね。」

第六部

その日の帰り道、ミサキは母親に尋ねた。「お母さん、佐藤さんって優しい人だね。町のみんなのことを見守ってくれてるみたい。」

母親は微笑みながら答えた。「そうね、ミサキ。佐藤さんのような人がいるから、この町は安心できるのよ。私たちも、こんな素敵な人たちと一緒に過ごせて、本当に幸せね。」

二人は手をつなぎながら、雁木の下を歩いて帰った。雪がまだ少し残る道を歩きながら、町の人々の温かさに包まれていることを感じていた。

その夜、ミサキはベッドの中で考えた。「私は、この町の一員になれて本当に良かった。これからも、お母さんと一緒にこの町で暮らしていきたいな。」

小さな心に芽生えた家族や町への愛情が、ミサキをさらに成長させていた。彼女にとって「だいちのめぐみ」と商店街の人々は、まるで家族のような存在になりつつあった。

第七部

数日後、ミサキと母親が「だいちのめぐみ」に入ると、晃四郎とタケルが楽しそうに話していた。タケルは以前、学校で悩んでいたが、今ではこの場所で新たな友人を作り、心の拠り所を見つけていた。

「ミサキちゃん!今日もおにぎり食べに来たんだね!」タケルが笑顔で声をかけると、ミサキも嬉しそうに返事をした。

「うん!タケルくんも一緒に食べようよ!」

彼らは一緒におにぎりを囲みながら、お互いのことを話し合った。ミサキはタケルがどれほど強くなったかを知り、タケルもまたミサキの明るさに元気をもらっていた。

めぐみは、そんな二人の様子を温かく見守っていた。「だいちのめぐみ」がただの飲食店ではなく、人と人がつながり、助け合う場として機能していることが、彼女にとっても誇りだった。

晃四郎はふと思い出し、ミサキに尋ねた。「ミサキちゃん、今度一緒に町の雁木の掃除を手伝ってくれないかな?お母さんも、町の人たちも喜ぶと思うよ。」

ミサキは喜んでうなずいた。「もちろん!私も手伝いたい!」

第八部

数日後、商店街の雁木の掃除の日がやってきた。町の人々が集まり、みんなで雪かきやゴミ拾いをしながら、雁木をきれいにしていく。ミサキと母親も一緒に参加し、タケルや晃四郎、他の住人たちと一緒に汗を流した。

町の人々は、こうして毎年のように雁木の掃除をすることで、互いの絆を深め合っていた。ミサキは、町の人々と一緒に作業をすることで、この町の一員としての誇りを感じ始めていた。

佐藤も掃除に参加しており、タケルと晃四郎に声をかけた。「君たちは若いのに、よく働くね。町の未来は君たちにかかっているんだよ。」

晃四郎はにっこりと笑って、「僕たちも、この町が大好きだからさ!」と元気に答えた。

町の人々が力を合わせて雁木を守り、助け合いながら暮らしていることが、ミサキの心に深く刻まれていた。町のみんながつながっているからこそ、安心して暮らせることを彼女は実感したのだ。

第九部

その日の夕方、ミサキと母親は「だいちのめぐみ」でゆっくりと過ごしながら、めぐみと晃四郎に感謝の気持ちを伝えた。

「おかげさまで、私たちもこの町での生活に慣れてきました。みなさんが支えてくれるから、本当に心強いです。」母親は涙を浮かべながら、めぐみに深く頭を下げた。

めぐみは優しく肩に手を置き、「いつでもいらしてくださいね。だいちのめぐみは、あなたたちの居場所でもあるんですから。」と答えた。

晃四郎も、「これからも一緒にこの町を守っていこうね!」と笑顔で手を差し出し、ミサキがその手を握り返した。

第十部

こうして、ミサキと母親は「だいちのめぐみ」と商店街の人々と共に、家族のような温かい絆を築きながら、町の一員として成長していった。雁木の下で支え合い、助け合うことで、彼らは厳しい冬を乗り越え、春の訪れを心待ちにすることができた。

町の温かさと「だいちのめぐみ」のおにぎりが、彼女たちの心を支え続け、二人はこの町での新しい生活を笑顔で迎えられるようになった。やがて、ミ

サキも町の人々を支える存在として成長していくに違いない。

「だいちのめぐみ」の物語は、これからも続いていく。晃四郎とめぐみ、そして町の人々の手によって、助け合いの精神が受け継がれ、上越市の高田本町商店街の雁木と共に、いつまでも人々を支え続けるのだろう。


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