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トゲを丸めるのが上手なあの人がいなくなったのを思い出した岸田奈美さんの記事


令和7年、キナリマガジンの購読をはじめて
岸田奈美さんのエッセイを爆読み中。
読みやすい文体でポップに脳に語りかけてくるし
面白くて止まらなくなってここ数日で100本以上読んでる。

その手を止めて(目を止めて)
どうしても記事にしたいエピソードに出会ってしまった。


優しさは無限に湧き出る超常物質じゃない


優しい、ってなんだろう。
甲斐さんは、優しい人だった。
だけど、なにも意識してなくて天然で優しい人もいれば、優しくあろうと努める人もいる。優しさにはキリがない。頑張ればどれだけでも、人は人に優しくできる。
でも、優しさは無限に湧き出る超常物質じゃない。
体力を、心を、平たくいえば命を削って、優しさを分け与えている
福祉の窓口には、今日も生活に困る人々が殺到している。生きるのにギリギリ精一杯の人は、目の前のことしか見れない。わたしもそうだった。

いなくなった、あの人のこと


甲斐さん

お会いしたこともないけれど
まずは本文に出てくる甲斐さんに
いいことがいーーーーーーーーーーーぱい起こりますように。
と勝手に願う。
推しのライブのチケット当たって欲しいし
急いでる日の信号はALL青であって欲しいし
肩こり解消されてて欲しい。


田中先輩のこと


田中先輩はわたしより少し年上で
組織では圧倒的マイノリティのいわゆるキャリアウーマンで
上司にも私たち後輩にも頼りにされてて
公開された予定表には隙間がなくて
お酒とチョコレートが大好きで
よく笑う人だった。

例え話が上手で
ヒヨッコの私たちが質問にいくと
簡単な例え話にのせて
わかりやすく説明してくれた。

説明しなきゃいけない先輩側になった時
難しい話を簡単に話すことの難しさと
田中先輩のすごさに気づいた。

いなくなった、あの先輩のこと


部長のトゲトゲしたきつい指示を
柔らかーくして取引先に伝えたり
一触即発の設備部と調達部の間とか
ソリのあわない部長と課長の間とか
いつも板挟みにあいながら
持ち前の語彙力とセンスで
トゲトゲした言葉を丸めて翻訳して
仕事が進むようにしてくれていた。


そんな田中先輩が、いなくなった。

社内はしばらく消えたエースの話題でもちきりだった。依願退職だって。取引先への挨拶も引き継ぎ書も抜かりなくだったらしい。



エースがいなくなってから私たちは
田中先輩がいかに先回りして
あらゆる摩擦をマイルドにしてくれてたかを思い知った。


社内の空気は引くほど悪化したし
取引先からのクレームが爆増した。

甲斐さんとあの先輩


甲斐さんと田中先輩が重なった。

田中先輩は自分を削って抽出した優しさで
トゲトゲを包み込んで人に渡してくれてたんだなと思った。

他社での活躍は風の噂で聞いた。
どこでも活躍間違いなしだろうけど
田中先輩の優しさが流出しすぎませんように。

と祈ってみるなどした。

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