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早くも1943年、子ども向け科学雑誌に「一億玉砕の決意で撃滅せよ米英」って、科学らしさがみじんもない

 表題写真と下写真、1943年8月発行の月刊誌「子供の科学」(誠文堂新光社)の表紙ですが、いきなり「一億玉砕の決意で撃滅せよ米英」という煽り文句に、はて、この雑誌の科学とは、と考えこまさせられます。

精神論が表紙の副題に

 気を取り直してページをめくっていきますと…

強い身体をつくりませう

 「弱い心や弱い身体でどうしてお役に立つことができませう」…ただの鍛錬ですが、それは。

「海は我等の戦場だ」って、そのままですが。

 そして山本五十六連合艦隊司令長官の戦死がここかしこで取り上げられています。(科学の雑誌ですよ)

西條八十も戦時迎合だ
「仇を討て」取って付けたような「科学の戦いにも勝て」

 まあ、この続きに「科学の香り」のするページを探し当てました。

アッツ島玉砕を題材に

 でも、結論は体を鍛えて備えよと。頭は鍛えない。科学って…

結論は「体を鍛えよ」…科学…

 レーダーの記事がありました。日本にも優秀なものがあるといいつつ、解説は鹵獲した米軍レーダーの話です。

「米軍のを分捕る」と誇らしげ

 足尾銅山の話も出てきますが、当然、公害の話はありません。

 そして、ヒマの栽培の観察記録も、科学らしいと言えなくもない。

ヒマの実は潤滑油用に増産
ここにも「お国のために」

 だいぶ端折っていますが、発行の許可された雑誌に、軍の考え、意向がねじ込まれている感じがよく伝わってきます。1943(昭和18)年でこの状態ですから、ぜひ1945年ごろのものも入手して、比べてみたいと思います。
 この時、まだ80㌻もありますから、やはり優遇されている印象があります。これぞ、科学の力ですね。物資統制された戦時下、雑誌の生き残りには、こうした戦争への迎合が必要だったこと、それがまた雰囲気を煽る事、ご理解いただけたでしょうか。出版、放送の自由の大切さ、実感します。

追記・この撮影のため、広げていたらぼろぼろと崩れてきました。本の保管状態がよくないと、酸化で紙の弾力がなくなり、崩れてきてしまいます。これは、戦時下の洋紙では顕著です。本来は中性紙の袋に入れて少しでも中和させないといけません。今後、保管の面でもより投資をしていきたいと思って居ます。読むにはデジタル紙面ですね。

撮影後の背景布の様子。背表紙の剥落が激しいです。

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信州戦争資料センター(まだ施設は無い…)
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