2017年「第3回展示会」、テーマを分けて3回、それぞれ別会場でーさらに八十二文化財団のギャラリーでも展示と大車輪
信州戦争資料センターは2017年、3回目の主催企画として「戦時下ノ空気展ー国策遂行に人々を動かしたモノたち」を企画しました。それも1-3期に分け、7月から12月まで長野市と阿智村の合わせて3会場にて、出品物を変えながら展示しました。
元々は1会場だけの例年通りの展示を予定していたのですが、さまざまなご縁から3会場に広がり、別に1つ展示会が増えました。独力ではできないことが、たくさんの人のつながりと、それぞれの熱意で実現できたことに感謝しております。そして自分も、どの会場を訪れていただいたお客様にも満足していただけるよう、頑張らせていただきました。
なお、第3期展の開場については、動画をユーチューブにアップしております。リンク先は記事末尾にありますので、ぜひごらんください。
今回のテーマ「空気」。そこに込めた思いを、当時のチラシに書いた文章で伝えさせていただきます。
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人々が常に戦争を身近に感じ、戦争を重ねて崩壊した敗戦までの日本。
兵士になって死ぬのは「名誉なこと」というのが当然だった時代。
国策に協力するのは「当たり前」と、満州に銃後に人々が動いた時代。
「まあ、空気読めば仕方がないさ」「お前も空気読めよ」
こんな言葉を交わし、しぶしぶ、あるいは積極的に従った庶民たち。
国の情報誌、県の通達、隣組の回覧、ラジオや雑誌、広告や玩具…
戦時下の「空気」を生み出したであろう、戦時下のモノたち。
その間に身を置く時、感じられるのはどんな「空気」だろう。
ゼロ戦パイロット、満蒙開拓、情報伝達媒体―の3テーマで
信州戦争資料センター所蔵品を連続展示いたします。
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「第1期 ゼロ戦パイロットの時代」は7月29日―8月25日、長野市権堂町の日本で現役最古の映画館、長野相生座・ロキシーにて開きました。2016年に99歳で亡くなられた長野市出身の元ゼロ戦パイロット、原田要さんのドキュメンタリー映画「原田要 平和への祈り」の上映に合わせて、ロビーで映画に出てくる所蔵品を中心に、原田さんの生きた時代の「空気」を伝えました。出品点数45点。
映画の中に出てくる千人針やラジオ、当時のポスターなど映画と連動するように工夫し、白金回収の呼び掛けがロケット戦闘機秋水の燃料作りに必要な電極だったことを示す燃料瓶なども含め、45点を展示しました。なお、この展示では開場初日、戦時中に多数作られた「国策紙芝居」の実演も劇団員にお願いして実施してもらい、好評で映画は2000人が訪れました。
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なお、この少し前に、知り合いだった八十二文化財団の方から、8月のお盆のころは暑いのでギャラリーを使う人がなかなかおらず、良かったら展示をしてみないかとの申し出がありました。期間は映画の上映にも重なり、相乗効果になるだろうし、設備の良いギャラリーも魅力ですぐOKし、第1回の展示に近い、総合的な展示会を8月7日ー20日までの日程で行うことに。まあ、真夏の準備はやはり大ごとでしたが。
「信州と戦争の時代展」と題して、暮らしの様子が感じられる144点を展示し、およそ2週間の会期に300人余りの方が訪れてくださりました。また、この時、初めて国策紙芝居を全文が読める形で展示しました。
戦中だけでなく、戦後まもなくの野球の雑誌や子供服なども置いて、戦時下と対比も試みています。
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「第2期 満蒙開拓の時代」は9月18日―10月8日、長野県下伊那郡阿智村の満蒙開拓平和記念館で行い、満州事変の勃発から民間による開拓の開始、国策による開拓団や青少年義勇軍の創設、引き揚げなどの資料32点を展示しました。
記念館の展示と合わせ、その時代の「空気」を感じていただけたかなと思います。長野県は開拓団、青少年義勇軍とも、全国で一番多く送り出した県でもあります。その開拓を学ぶ施設があるのは大切なことです。
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「第3期 情報伝達媒体」は太平洋戦争開戦の日に合わせて12月8日―12月10日に、長野市南長野新田町、朝暘館ギャラリー蔵で行いました。 日中戦争勃発から敗戦まで、当時の情報伝達媒体によってどんな情報が伝わり「空気」を形成していったか。当時のラジオや関連品、新聞や雑誌、国の情報誌「週報」「写真週報」などを並べてみました。
一方で、国が情報を統制して都合の良い情報だけを伝える狙いで、廃刊させられた地方の「時報」なども合わせて55点を展示し、空気を作り出す権力の本質を少しは示せたと思います。
今から思うと、この年はよくこれだけ動けたなと思います。さまざまなつながりと、その力の相互作用でこれだけ走れたのかなと感じています。この思いを忘れないよう、活動を続けていきます。
<第3期展の展示会場の様子を動画で公開しています>