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戦時下、月刊誌に「4、5、6月合併号」まで登場ー1944年でここまでモノがひっ迫、内容も「代用品で模型飛行機」

 文部省は次世代の飛行兵育成のため、日中戦争が短期では終わらない見通しとなったころから中等学校では滑空機訓練が奨励されます。一方、尋常小学校(1941年から国民学校)での模型教育の研究も1939(昭和14)年から始まり、1941年、文部省が国民学校初等科1年から高等科2年までの学年に合わせた工作図と指導要領を決めます。
 航空機の模型作りを通じて、飛行兵への関心を高めさせること、基礎的な航空力学を学ばせることなどが期待されたのでしょう。そんな動きに歩調を合わせたのか、毎日新聞社は1942(昭和17)年から月刊誌「模型航空」の発行を始めます。
 一方で日中戦争に伴うストックの消費、戦局の悪化による輸入の低下から、パルプの輸入滞り、インキ生産材料の枯渇という中で、国内の出版物は整理され、あるものは廃刊、あるものは統合、そして生き残った出版物でも、さらにページの減少や色刷りの廃止など、どんどん貧相になっていきます。そして、そうした貧弱化を「戦時版」と銘打つことでごまかしたのがこちら、1944年6月発行(のはず)の「模型航空4・5・6月合併号」でした。それにしても、空襲のない時期に、月刊誌が3か月遅れで合併号と称して出さざるを得ないとは、もうどうなっていたのでしょうか。

B5判、36ページ

 編集後記によると、3月号までは毎月発行を続けていたのですが「色々の事情により四五六月合併号とせざるを得なくなった事を、ここにお詫びします」とあり、この3か月合併号はこの号が最初だったようです。
 また、3月号まではグラビアページもあったようですが「本年になってグラビュアの印刷が悪く、殊に三月号は大分読み難かった所もあった様で、まことに申し訳ない次第である。そこで本号からはグラビュアは廃止する事とした。表紙も一色刷りに改め、戦時版として続刊する。すべてが決戦的に切りかえらるべき時だからである」とし、了解を求めています。

 さて、戦時色が濃くなったのは雑誌の体裁だけではありませんでした。トップ記事は「代用機材による模型航空機概説」。模型飛行機の主材料であるベニヤ合板、ヒノキ材、キリ材、アルミ管などが入手しづらくなってきたため、代用の材料を考えたというものです。

模型飛行機の材料も不足
代用品での製作に成功したので報告と

 代用品として、一番多く使用しうるのは「ススキの穂茎」、次にコスモスの茎、ヨシ、カヤ、アカザなど「名も知れぬ野草や灌木中に数多く見つける事ができる」とまとめています。また、竹ひごは児童につくらせる、ビーズの代用は豆を使うなどとしています。
 そして、これら代用品を使った作り方を紹介し、例えばススキの茎と竹ひごで翼を作るのですが、結合部や湾曲部には竹ひごを使い、比較的まっすぐな部分にススキを使っています。下の図は車輪部分の代用品による製作で、胴体にススキの穂茎に通した竹ひごで刺して固定し、車軸も竹ひごで代用しています。

代用品の長所紹介

 さらに、続けて代用品の長所を並べ立てています。そして「採集及び製作に於ける精神的価値」として、「山野を闊歩して数千本の中から適当な材をより多くとるところに、真剣みと観察力の向上が得られる」と精神論にはいってきます。なにか、どんどん装備が貧弱になる軍隊に対する講話のようになってきています。

 そして、大人が模型飛行機をつくることに対する非難を予想し、立場を擁護する記事もありました。

先に指摘されそうなことを全部書いておいて

 最初に非難を想定し最もであるとしつつ、模型飛行機愛好家の力を直接戦力に役立てる方法もあるとして、模型による宣伝ビラ撒布や「攻撃兵器として用いることも決して不可能ではない」とし、「実物航空機の製作や操縦に」充分役立つと強調し、国家的な援助や一大運動をと説いています。
 まるで、近年のドローンの活躍を先取りするような発言ですが、あくまで模型飛行機愛好家の立場を擁護するというのが主眼で、そのために戦争協力を前面に出さねばならないところに、当事者の切なさも感じられます。

 戦時下となれば、戦力とならないものは切り捨てられる。こんな雑誌からでも、そうした現実が伝わってきます。多様な探求や人生の楽しみなど、戦争の前にはこれっぽっちも許されなくなる、それが実態です。戦争を実際にしていなくても、国家が戦時体制を志向すれば、その線に沿うものしか生きながらえないことは明白。ゆえに、不断の注意が必要なのです。

 

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信州戦争資料センター(まだ施設は無い…)
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