戦時下、国民学校の子どもたちまで、訓練や国債購入を年間の活動って(´;ω;`)ー「自らも『英霊』となる覚悟」まで…
1943(昭和18)年度、太平洋戦争真っ最中の4月、長野県小諸町(現・小諸市)少年団の年間計画である「戦時実践細目」を見てみましょう。
実に24枚のB4判のわら半紙を使った48㌻にわたるものです。上写真の目次を見れば、何にそんなにページが割かれるのか、と思えますが、何しろ細部にまで立ち入る事が多いのです。
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そして、もはや子どもではなく、軍の予備部隊的な組織となっています。まず、4つの戦時実践指針を見ると「一死報国の信念をもって『勝たずば断じて已むべからず』の志気を振作して聖戦の完遂を期すべし」「青少年団は皇軍兵力の兵站基地なり…いかなる青少年とも直ちに銃を執りて君国に報ずる資質を涵養」ー凄まじい限りに直接的です。
そして小諸町少年団の団則を見ると、団長、副団長は長野県青少年団長の任命によるものなのですね。互選とかではないのです。つまり、これは天皇主権の大日本帝国にあって、首相も天皇の指示で決まった上意下達組織である形をそのまま持ってきているのです。
では、日常の計画を見てみましょう。6月だと、神社参拝、神社清掃、班常会、訓練、登校訓練、英霊墓参、下校訓練となっています。登校訓練と墓参は毎週実施としています。
戦時実践指針を具体化するための、戦時実践細目。ここが実に細かくて38㌻、つまり大部分を占めています。
第一項として少年団綱領の一「大御心を奉戴し心をあわせて奉公の域をつくし、天壌無窮の皇運を扶翼し奉らん」とする国民的信念の確立を主眼とするもの、として以下に挙げています。「天壌無窮の皇運を扶翼し奉らん」は教育勅語の一節ですが、近年のウソ解説では、ここが飛ばされています。しかし、ここが要であることが、当時はちゃんと分かっていたのです。そして、その具体策として神社参拝、英霊墓参などがここに位置付けられています。
「我等も亦護国の神となり」とあるあたり、靖国神社の性格がきちんと伝わっています。神として祀られるというのは、死んでからも君国に束縛されて君国を護り続けるためであること。決して、安らかにしてもらうため神とされるのではないことが、国民学校から叩き込まれています。
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第二項は、国民的教養を主眼とするもの。全国の方針を伝える指導員常会や常会のやり方がまもめてあり、常会では教育勅語、青少年学徒に賜りたる勅語(1929年)の奉唱や歩行訓練、防空訓練などが議題として例示され、将来の行事に対して十分な打合せをすること、さらに目的達成のため、前年11月に発表されながら年始に間に合わず、この年の春にようやく販売された愛国百人一首があげられたりしています。
また、日常生活訓練として、姿勢、容姿、歩行、言語など、まあよく挙げられていますが、これらは軍人の基礎としても徹底的に教え込まれる分野です。その基本を写してきたように見えます。
そして第三項。「心身一体の鍛錬を積み、共励切磋して進取創造の力量を大にし、挺身各、其職分を務めん」という少年団綱領の三をもって主眼とするとあり、第一部門では「毅然として国土の防衛を全うし得るの力量を鍛錬せんとする」として、第一に教練的基礎訓練を挙げています。中等学校や青年学校の教練を、国民学校までおろしてきたといえるでしょう。
特にそろって歩く「分列行進」は団体としてのまとまりを示す良い材料としたのでしょう。列の作り方、人員点呼、歩き方、そして偉い人の前を行進して敬意を示す「閲兵」の複雑な訓練もありました。
さらに、「団長は平素の訓練によりて得たる団員の気魂と決戦への力量とを具に査閲して更に次のより高次の訓練のために資する」団長査閲も年に4回行うこととし、閲兵と分列行進がその基本でした。
このほか、早朝に集合する動員訓練(主として国土防衛、逆敵激攘のための動員訓練、とある)、防空訓練、そして登下校訓練などが上がります。
最後に、第三項第二部門の職域奉公。「可能なる軍需品、食料品の増産に積極的に参加し、第一線将兵の士気を鼓舞し国内戦闘態勢の強化に全力を傾倒する」とあり、本土決戦の叫ばれる時期ではないにしても、もはや子どもまで戦力の一体と位置づけられています。
兵士の送迎、落ち穂拾いに加え、大豆、大麻、ヒマなどの作付けも検討されています。そして国債消化のため、各学級別に月50銭以上という目標付きで行うとします。
そして少年団の名簿や連絡系投表などが添えられて終わり。下校訓練の集合図まであります。
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「型にはめる」という言葉がありますが、もはや国民学校からそういう状態でした。1943年でこれですから、1944、45年と、どんどん厳しさが増していったことでしょう。戦争はここまで求めるのです。始まったら。そして、戦時でもないのにこうした「型にはめる」教育を進めていくと、どうなるでしょう。やはり、集団に合わせて上の指示に従うのみの若者を次々と生み出していくことでしょう。