53/1,000冊目 デビッド・ロブソン (著) 『The Intelligence Trap』
デビッド・ロブソン (著) 『The Intelligence Trap』
概要
質問「モーゼは方舟に1つの種から何匹の動物を乗せましたか?」
コナン・ドイル、ノーベル賞受賞者、アインシュタイン、スティーブ・ジョブス……誰もが尊敬する、知の巨匠たち、エポックメイキングな起業家やクリエイターたち、も陥る、いやむしろ頭の良い人ほど陥る罠「インテリジェンストラップ」とは?
IQという発明が如何にして人々の才能を潰してきたのか。それは当時はまだ図り難かった「知的謙虚さ」「好奇心」「社会受容性」などのほうが人生における成功には重要だったからでした。
また賢い人々は、自分たちを賢いと思っているがゆえに、自らにある死角を指摘する声に耳を貸そうとしない。的確な指摘に対しても、頭が良い故に都合の良い理屈を構築して武装します。
こうした「認知の死角」を消していくためには、つまり賢く生きるにはどうしたらよいか。
自分の直感を疑う(認知反射)
知的謙虚さ
好奇心
オープンマインド思考
Growth マインドセット
特に知的謙虚さと好奇心。
なぜ?どうして?知りたい?知ることがおもしろい!という姿勢を構築しようとすると自分が間違っているか正しいか、ということは事実よりも重要ではない問題となって徐々に霧散していきます。
そうなると自分というものを「他者よりも賢い」という優越感や自意識が減り、知らなかったことがわかってくる楽しさに喜びを感じるようになります。
すると自分が間違っているかもという疑念や指摘に対して抗うことなく、一度検討してみる、ということをするようになります。これが「知的謙虚さ」を醸成していきます。
話は個人における認知の死角にとどまりません。組織はどうして馬鹿な判断をするのか、についてもその原因と対策を掘り下げています。詳しくは本書にありますが、ひとつだけ紹介するとそれは「ミスを報告することを奨励すること」です。
冒頭の質問の答えは「ゼロ」。モーゼは方舟に動物を乗せていません。乗せたはノアです。
感想
「自分が間違っているかも」ということを学ぶにはうってつけの本でした。また賢さよりも好奇心が大切だということも学べました。リチャード・ファインマンが好きなわたしは再び、ファインマンという人物の素晴らしさにこの著書を通じて触れることができ、勇気づけられました。
再び読むことになると思います。
The Charisma Myth以来の、大きく人生感を変えた本でした。
デビッド・ロブソン
デイビッド・ロブソンは、人間の脳、身体、行動の極限を専門とする受賞歴のあるサイエンス・ライターです。 ケンブリッジ大学で数学の学位を取得後、ニューサイエンテイストで5年間特集編集者を務めた後、BBCフューチャーに移り、シニア・ジャーナリストとして5年間活躍しました。
『ガーディアン』、『アトランティック』、『イオン』、『メンズ・ヘルス』などにも寄稿。 2021年、デビッドはCOVIDパンデミック時の誤報とリスクコミュニケーションに関する執筆で英国科学ライター協会と英国医学ジャーナリスト協会から賞を受け、2022年には年間最優秀英国科学ジャーナリスト賞の最終選考に残りました。
デイビッドの最初の著書『The Intelligence Trap』は2019年に出版され、世界中のメディアから注目を浴びました。 2冊目の著書『The Expectation Effect』はBBC Radio 4 Book of the Weekに選ばれ、英国心理学会図書賞を受賞しました。 3冊目の著書『The Laws of Connection』は6月4日(米国)、6月6日(英国)に出版される予定。
ケンブリッジ大学
ケンブリッジ大学(University of Cambridge)は、イギリスの大学都市ケンブリッジに所在する総合大学。
オックスフォード大学と並ぶイギリスの名門校で、その淵源は13世紀初頭にさかのぼります。トリニティ・カレッジやキングズ・カレッジといった31のカレッジ(学寮)が独自の財源・組織をもって自立した運営を行っており、「ケンブリッジ大学」はこれらのカレッジを総称した呼び名です。
国家元首など各分野で主導的な役割を果たす卒業生を数多く輩出し、関係するノーベル賞受賞者は121人にのぼるなど、学術分野でも高い評価を受けています。タイムズ・ハイヤー・エデュケーションのTHE大学ランキングでは欧州圏で第2位、世界全体で第5位(2024年)、QS大学ランキングでは世界第2位(2024年)。
人文教育を重視してきた歴史的経緯から、現在でも古典学や数学基礎論などの分野で世界的な拠点となっており、USニューズ誌による分野別の世界ランキングでは、芸術・人文分野が第3位、数学が第4位などとなっています。一方で、同ランキングでは人工知能研究が第50位、ケミカル・エンジニアリングが第62位などとなっており、とくに人工知能研究などでは巨額の投資により先端技術分野での研究体制の再編を進めています。
大学院ではケンブリッジ大学法学部(Cambridge Law)、公共政策大学院(POLIS)、ケンブリッジ大学医学部(Cambridge Medicine)なども定評があります。
関連書籍
参照
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