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52/1,000冊目 村田 沙耶香 (著) 『コンビニ人間』

村田 沙耶香 (著) 『コンビニ人間』


概要

英語でのタイトルは“Convenience Store Woman”。日本の作家、村田沙耶香による2016年の小説。 日本の生活に密着した身近なコンビニエンスストアの雰囲気を表現している。 同作は2016年に芥川賞を受賞した。村田は執筆の傍ら、週3回コンビニで働き、その経験から小説の着想を得た。 この小説は「文学界」2016年6月号に掲載され、その後2016年7月に文藝春秋から単行本として刊行された。 この小説は日本で150万部以上売れ、村田の小説の中で初めて英訳された。ジニー・タプリー・タケモリによる翻訳は、グローブ・プレス(米国)とポートベロー・ブックス(英国)から2018年に発売された。この本はさらに30以上の言語に翻訳されている。


あらすじ

コンビニエンスストアで18年間アルバイトをしている36歳の女性、古倉恵子。 幼い頃から自分が 異質(different)であることを知っていた彼女は、自分の意見や行動を表明することが不可解であり、周囲を悩ませ、問題を引き起こすことを知っていた。 会社のマニュアルによって一つひとつの行動が規定されているコンビニという高度に規制された世界のおかげで、彼女は周囲に受け入れられるアイデンティティと目的意識を保つことができる。 彼女は自分の行動、服装、話し方さえも同僚のそれを手本にしている。 ケイコは友人関係や妹との関係は保っているが、18年経っても独身でコンビニのバイトとして働いている理由を説明するのはますます難しくなっている。

恵子は、定職に就けず、社会の片隅で生きる男、白羽と出会う。やがて稽古は白羽を自宅で飼い始める。カップルのふりをすることで、家族や、恋愛関係や子供、安定した仕事を期待する社会との問題を回避できると考えたのだ。

計画の一環として、恵子は結局コンビニの仕事を辞めるが、すぐに人生の目的を失ったと感じる。 最初の面接に向かう途中、恵子は白羽とコンビニに立ち寄る。 恵子は、その店が規制の対象外であることを知り、すぐに商品の整理や店員の手伝いを始める。 白羽に詰め寄られた彼女は、自分の人生の目的はコンビニ店員であることを説明する。 そして、激怒する白羽から立ち去り、面接をキャンセルし、新しいコンビニを見つける決意をする。


背景

『ニューヨーク・タイムズ』紙のプロフィールの中で、著者は「自分は普通だ、普通だと思い込んでいる人たちがいかに変わっているかを描きたかった」と説明し、セックスをまったくしないことを選び、平気な恵子の性格に憧れていると語っている。 彼女は、「型にはまった社会で、特に既成概念にとらわれない人」の視点から書きたかったと言う。


感想

作者の村田沙耶香さん自身が、主人公の恵子に対して「憧れる」という表現をしていることに、表現しがたい安堵をうっすらと感じた。

思いの外、共感し、自分の気持が描かれているように「まんまと」感じてしまったようにも感じた。

今まで小説を読んできたなかでは、あまり感じたことのない感情というか新しい世界の視座に立たされたようにも感じた。

それが何なのか、確かめるように彼女の別の作品を読もうか、読むまいか、と考えて、作品を探しながら「しばらくは読まない。また読みたい気持ちが湧いたときに手を付けよう」という判断に至った。

読んで良かった、おもしろかったと感じた。

村田沙耶香さんについては海外にも記事が多く、日本とはまた多分少し違った捉え方をされていて、その両方を読むことができて、楽しい。


村田 沙耶香

Sayaka Murata @ LiteratureXchange Festival, Aarhus/Denmark 2022
Hreinn Gudlaugsson - 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=124299031による

生誕:1979年8月14日
日本の小説家、エッセイスト。

千葉県印西市出身。SFや探偵小説に夢中になり同市立小学校在学中の10歳の時に執筆を開始し執筆しているときだけ自分自身を表現し解放することができるようになったと感じていた。小学生の時にジュール・ルナールの『にんじん』を読み、「最後まで絶望的であることにすごく救われ」、中学時代は同級生から「死ね」と言われ実際に死のうと思ったものの、小説を書いていて生への執着につながったと語る。

家庭は保守的で、兄は医者か裁判官になるようプレッシャーをかけられていた一方、村田自身は「女の子」としてピアノを習い、清楚なワンピースを着て、伝統ある女子大学に進み、しかるべき男性に「見初められて」結婚してほしいというのが、母親の願いだったという。

二松學舍大学附属沼南高等学校(現・二松學舍大学附属柏高等学校)、玉川大学文学部芸術学科芸術文化コース卒業。大学時代には、小説と向き合うためにコンビニエンスストアでアルバイトを開始し、2016年(37歳)に『コンビニ人間』で芥川龍之介賞を受賞した後もしばらくアルバイトを続けていた。大学時代、周囲の人間から、金持ちの結婚相手を見つけ出産について考えなければいけない、と言われ、何のために大卒資格を取るのかとショックを受けたという。

10代から20代にかけて、世間が期待する可愛い女性を演じようと努めるも、それは「恐ろしい経験」であったという。

横浜文学学校にて宮原昭夫(日本の小説家)に学ぶ。

朝井リョウ、加藤千恵、西加奈子ら作家仲間からは「クレイジー沙耶香」と呼ばれている。

以下、24. Internationales Literatur Festival berlinより。

デビュー作『純烈』(2005)(26歳)で群像新人文学賞を受賞。

彼女の作品には、24時間営業のコンビニエンス・ストアでアルバイトをしていたときの観察結果などが活かされている。

彼女の主人公たちは、自分に課せられたジェンダー的役割や社会的立場の違いにかかわらず、しばしば不適合を特徴とする。また、価値観や規範が受け入れられないような環境にいるアウトサイダーであることも多い。

例えば、『コンビニ人間』(2016年、英題:「Convenience Store Woman」、2018年)(39歳)では、同級生に苛立つ女子学生が、周囲に外面的に合わせることに真の充実感を見出す。コンビニで働く彼女にとって、すべての交流は我慢できるレベルまで低下していたが、反抗的な男が現れ、彼女の人生観がひっくり返る。この本は日本でベストセラーとなり、権威ある芥川賞を受賞し、30以上の言語に翻訳されている。

無性愛や自発的・非自発的な独身主義、特に結婚生活における独身主義というテーマは、『祥月世界』(2015年)(36歳)でも中心的なテーマとなっている。村田はまた、『銀色の歌』(2009年)(30歳)や『白色の街の、そのほねのたいようの』(2012年)(33歳)など、思春期のセクシュアリティを率直に描いた作品でも知られている。三島賞とセンス・オブ・ジェンダー賞特別賞を受賞した『殺人出産』(2014年)(35歳)では、人工生殖技術によって形成されたディストピア社会を描く。

最新作『地球星人』(2018年、英題:「Earthlings」、2020年)では、幼い頃に教師から虐待を受け、家族からはよそ者扱いされ、友人といえば従兄の優しかいなかった一人称の語り手・夏樹が、後年、トラウマから脱却する。セックスも子供もいない関係になった夫、そして再発見した従姉妹とともに、彼女は「地球人」の「人間工場」の魔手から、かつて蚕が繭を作っていた古い農家に逃げ込む。外界から隔離された彼女は、自分が他者であることを受け入れることで、あらゆる社会的慣習にとらわれない、極めて新しく、ほとんど幻想的な生き方を発見する。

「村田沙耶香は、家父長制の中での女性の自己体験に焦点を当てた作品を書く数多くの東アジアの若手作家の一人である」と『SZ』は書いている。
著者は東京在住。


参照

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