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57/1,000冊目 千早 茜 (著) 『透明な夜の香り』

千早 茜 (著) 『透明な夜の香り』


概要

元・書店員の一香は、古い洋館の家事手伝いのアルバイトを始める。そこでは調香師の小川朔が、幼馴染の探偵・新城とともに、客の望む「香り」を作っていた。人並み外れた嗅覚を持ち、鼻で、相手の行動パターンや健康状態を一瞬にして嗅ぎ分ける朔は、どんな香りでも作り出すことができ、それゆえ風変わりな依頼が次々と届けられる。だが、一香は朔の近くにいるうちに、彼が天才的嗅覚を持つがゆえに深い孤独を抱えていることに気づきはじめる……。直木賞作家が紡ぎだす「香り」にまつわるドラマティックな長編小説。第6回渡辺淳一文学賞受賞作。(*3)

感想

するする読まされてしまう系。読んでいる間は、匂いに意識が向くようになります。不快になることがなく、次がきになりつつも、今そこにある情景に観を浸すことができました。フィクション寄り。林芙美子さんの小説のようにリアルティの再構築ではなく、村上春樹さんが代表的な、人に心地よいフィクションの世界寄り。


概要

第二次大戦下、義弟との不倫な関係を逃れ仏印に渡ったゆき子は、農林研究所員富岡と出会う。一見冷酷な富岡は女を引きつける男だった。本国の戦況をよそに豊かな南国で共有した時間は、二人にとって生涯忘れえぬ蜜の味であった。そして終戦。焦土と化した東京の非情な現実に弄ばれ、ボロ布のように疲れ果てた男と女は、ついに雨の屋久島に行き着く。放浪の作家林芙美子の代表作。(新潮社より)

著者:千早 茜(ちはや あかね)

千早 茜(ちはや あかね)
1979年生まれ
日本の小説家

北海道江別市出身。立命館大学文学部人文総合インスティテュート卒業。

国際協力機構勤務で病理学を専門とする獣医師である父の仕事の関係で、小学校1年生から4年生までをアフリカ・ザンビアで過ごす。ザンビアではアメリカンスクールに通っていました。小さい頃から本が好きで、北海道大麻高等学校時代は『伊勢物語』全段を自分で現代語訳するほど古典文学に傾倒していました。*2

大学時代は美術活動も行い、絵に詩を付けた作品を発表したところ詩の評判が良く、映画部の友人から頼まれてストーリーを作り始めます。寺山修司の詩「てがみ」の影響を受けて魚の詩を多く書き、それを小説に起こして完成させた「魚神」がデビュー作となりました。

創作を始めたときから「29歳のときに一度だけ文学賞に挑戦しよう」と決めており、大学卒業後は医療事務や美術館など多数のアルバイトを経験。挑戦をたった一度と決めたのは、自分が小説家に向いているかどうか判断するためであり、29歳という年齢は当時好きだった村上春樹の影響であると語っています。(*2) 40歳の時に離婚。

2008年『魚神』で第21回小説すばる新人賞を受賞し、作家デビュー。同作は2009年に第37回泉鏡花文学賞も受賞。

2013年『あとかた』で第20回島清恋愛文学賞を、2021年『透明な夜の香り』で第6回渡辺淳一文学賞を、2023年『しろがねの葉』で第168回直木賞を受賞しました。

他の小説作品に『男ともだち』『西洋菓子店プティ・フール』『クローゼット』『神様の暇つぶし』『さんかく』『ひきなみ』やクリープハイプの尾崎世界観との共著『犬も食わない』等。食にまつわるエッセイも好評で「わるい食べもの」シリーズ、新井見枝香との共著『胃が合うふたり』があります。

https://twitter.com/chihacenti


参照

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*2

*3



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