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民俗信仰収集 #003

前回の記事はこちら↓

今回は九州を離れ兵庫県神戸市東灘区御影一丁目に鎮座する学問の神さまとして信仰されている綱敷天満神社の特殊神事についてです。

神社入口。奥に何やら特殊な鳥居が。
拝殿
綱敷天神御神像

そもそも綱敷天満宮という名前の天満宮は西日本の海沿いに何社もあり、それぞれ微妙に菅原道真公との縁起が違いますが、概ね村民その他が菅原道真公を綱を敷いて歓待したという内容です。
この神戸市東灘区の綱敷天満神社も歓待の主体が山背王に変わり、石の上に綱を敷いたという内容になっています。厳密には菅原道真公九世の孫、菅原善輝公が山背王と菅原道真公とのエピソードにちなみ「綱敷天満宮」と改称、通称「御影の天神さま」として親しまれることになりました。

しかしその内容が今回の民俗信仰収集の内容ではありません。御祭神に別雷大神が加えられていることに関係のある特殊神事です。

境内の二の鳥居を見るとギョッとしてしまう立派な綱が巻かれているのを見ることができます。

鳥居に注連縄に絡みつくようになにやら沢山巻かれています。
拡大


これは綱打祭で巻かれた注連縄(さらに大綱を巻き付け白矢を突き刺したものに榊を吊るすというもの)です。よく見ると精巧に造られており閏年には小綱の本数が一本増えるなど細かい決まりがあります。
詳しい内容については境内の案内板に次のように書かれています。

「この神事は、別雷大神縁起に伝わる全国的にも珍しい特殊神事で、綱打祭と呼ばれております。社伝によりますと、天道根命の旧記に基づき、人皇八十二代後鳥羽院文治二年(1186)より始められております。一月八日に氏子の代表者が、小綱三十六本(閏年は三十七本)を十二本ずつ三束にして練り合わせ太く這しい大綱を作り、注連縄に三巻半に巻くように張り渡し、八本の白矢を突き刺し、多くの榊葉(ビシャゴ)を束ねて下に吊し、御幣と麻緒を付けます。『大綱は龍を表し、八本の白矢は八色雷公[黄泉の国で伊弉諾尊(伊邪那美命)の御身よりお生まれになった神。大雷(頭)、火雷(胸)、黒雷(腹)、折雷(陰)、若雷(左手)、土雷(右手)、鳴雷(左足)、伏雷(右足)の八雷神]を意味し諸々の災いを除き、榊葉等は罪穢を祓い清め、この注連柱全体が祓具であり、ここを潜り抜けることによって一年間無病息災に暮らせる。』と言い伝えられております。現在でも、氏子・崇敬者並びに参拝者等の厄除・無病息災を祈念して、氏子総代・世話人達の手でこの神事は毎年続けられており、多くのご参詣の方々で賑わっております。」

境内案内板

注連縄自体が祓具であるというところに特色があります。また注連縄は龍に見立て八色雷公の全身をその龍に突き刺すというなかなかに勇ましい内容です。

滋賀県の長等神社で行われる神事にも「龍蛇綱打祭」と似たような名前の神事がありますが、長等神社の方は藁で作った蛇(わら蛇)をヤマタノオロチに擬え厄災を託し後に焼くという内容、趣旨ともに違いがあります。また見た目のインパクトは勧請縄のようですが、機能は違うようです。

今回はここまでです。最後までお読みいただきありがとうございました。


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