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『作楽(さくら)』をはじめとする5代目のモノづくり

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となみ織物5代目が制作する帯や着物のモノづくりを紹介。 その一つシリーズ『作楽』は、『楽しさをつくる。』それをコンセプトにモノづくりをしているシリーズです。今まで帯にはなかった…
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2020年4月の記事一覧

作楽#10 雪輪横段/雲龍錦(無くなった織組織)

1,デザイン デザインは雪輪文様。 雪輪は江戸時代につくられた文様。そこから日本人に愛され続けてきました。 雪の結晶の一つを文様化。 丸の6箇所がへこんだデザインです。 雪は冬なので、文様の季節としては冬。にも思えますが、夏に涼を求める・与えてくれる、ということで夏の柄と考えられています(ですので、浴衣等にも使われる)。現在では、季節は関係なく袷物から夏物まで幅広く、用いられています。 帯や着物の意匠として、典型的な古典柄から、モダンな柄まで、本当に幅広く見ることがで

作楽(名古屋帯)#9 バームクーヘン/紹巴織

1,デザイン 小さな円を重ね合わせた渦の図案。 人間がはじめの頃につくったであろうデザイン、例えば線や縞、格子、渦・・・。そういった原始的な図案を作楽シリーズでは帯の形にすることが多くあります。 普遍的な柄をアレンジする、配色で遊び、モノづくりする側も楽しく制作させて頂きます。 今回は、【青】。最初は単に渦、と呼んでいたところ、見た目からいつの間に柄名はバームクーヘンに。一度、愛称がつくと、もうバームクーヘンにしか見えなくなります(笑)。 他にも【茶】、【ベージュ】な

作楽#8 あさ蛍/紹巴織

1,デザイン京都の堀川通り、朝の光で照らされたイチョウをモチーフに制作した袋帯です。 帯のデザインとする時には、イチョウではなく、もう少し抽象性の高い樹木をモチーフに、黄金のような綺麗な光がスーッと入っていく様子を表現しました。横段上に取った細かな地紋は、空気が動き出すのを織りで表現、イメージとしては光が上から下に入って来る、青いホタルは光に惹かれるように、上へスーッと動くそんな流れです。 のちのち、羽織にする際にこの地紋に大きく着目して制作を進めましたが、この帯にとってそ

作楽#7 石畳十字文/600経紬

1,デザイン:石畳十字文 デザインは市松柄に十字を入れたシンプルな文様、『石畳十字文』です。 十字柄無しの『市松文様』は、当初石畳と呼ばれいましたが、江戸時代の歌舞伎役者、初代佐野川市松が好んで袴として履いていたことから、市松模様と呼ばれるようになりました(そのためもあって、江戸よりも前の名物裂などは、今でも石畳と呼ばれることも)。 個人的には、桂離宮の襖にある『市松』、何度見ても見入ってしまいます。 十字柄は、縦と横が交差すること、キリスト教圏では十字架を思い浮かべ

作楽#5 象の行進/しぼ織

1,象のデザイン古来は日本に象はいないにも関わらず、日本書紀には記載があったり、着物や帯の意匠としても、現在でも人気の『象』柄。 意味としては、力、知恵、平和、幸せのシンボルなど。様々。 インドでは、お盆のような世界を象と大蛇が下から世界を支えている図があったり、縁起の良い神聖な生き物。 象の神様、ガネーシャは富や繁栄を司る幸運、障害を取り除くとして、信仰されています。 また、仏教の開祖お釈迦さまが生まれる前、王妃の胎内に白い象が入ってくるのを夢で見て懐妊、世界が救

作楽(木花) #6 木花梅鉢/紹巴織

1,梅鉢紹巴織で織り上げた作楽シリーズの中の木花梅鉢です。 梅鉢は古典柄、梅の花を正面から見たところを図案・デザイン化された文様。加賀の前田家の紋でも有名です。 京都で梅といえば、北野天満宮の『梅』=菅原道真も愛した、古来より日本人と密接な関係を持つ花です。 2、デザイン・配色通常、1色もしくは2色でシンプルに表現される梅鉢を黒で縁を取りながら、括りを入れ、4色+αの多色で製織できる設計をしています。梅鉢の中はグレーを地色とミックスすることで柔らかく、唐草の中に入る水色・

作楽(Nord)#4 作楽宝相華文/千寿錦織

1,正倉院文様の一つ、作楽宝相華文制作した帯を出してきて、デザインはもちろんのこと、一つ一つの色同士の関係性や織組織をみて、やっぱり好きだなぁと思ってしまうのが、この帯。 宝相華文は、架空の唐草の一種。正倉院にも納められている、この時代最高といってもよい、デザイン。パルメット柄を基本に、インドから唐を経て、天平時代に日本に入ったもの。 仏教装飾にも使われていると蓮華系の一種とも言われ、帯や着物のほう様々なアレンジがなされている文様です。 2,織組織は千寿錦織 ちなみに

作楽#3 カトレア/紹巴織

1,カトレアをモチーフにした袋帯柔らかな色合いを織で表現した、作楽シリーズ、カトレアの袋帯です。カトレア(カトレヤ)は洋ランの一種で、大きな花。花の佇まいや様子から、『魅力、貴賓、優美』という意味を持っています。 2,織は紹巴織緻密な表現が得意とする織物。この帯ではその特長を生かし、地は①オフホワイトと②白に近いグレーをミックスした③色をつくり出し、花は出来る限り縁をボカシています。 特にこのボカシを拡大すると・・・。 遠くから見ると、筆で描いた様に柔らかな表現をする

作楽#2 作楽数珠/紹巴織

作楽シリーズの一番最初に制作した帯 1,帯デザインについて文字通り数珠をデザインした帯になります。数珠、英語で書くとROSARY(ロザリオ)。祈りに通じる柄です。もちろん、その意味も持ち、また人と人を繋ぐ、繋いだ人がまた人を繋ぎ続ける。そんなデザインでもあります。 通常、帯を制作する工程の一番最初は図案からはじまります。 これには①図案家等に描いてもらうもの。 となみ織物で多いのは人間国宝や画家、作家などの②着物とは離れた世界の作品を元に図案を起こすモノ。 そして、③モノ

『作楽』について #1

私が制作に携わる帯・着物シリーズ『作楽(さくら)』。 文字通り、『楽しみをつくる』コンセプトでモノづくりをしています。 『作る』意味もいくつかあり、 例えば、  ①つくり手が『楽しみ』をもってモノを『作る』こと  ②着られる方の『楽しみ』を『作る』こと  ③そんな着姿を見る側の楽しみを『作る』こと、・・・など それら気持ちをモノづくりの際には、大事にしています。 ◎誌面に掲載 ◎インスタグラムでは作楽シリーズのコーディネートをUPしています。 ◎Online仙福屋