作楽#10 雪輪横段/雲龍錦(無くなった織組織)
1,デザイン
デザインは雪輪文様。
雪輪は江戸時代につくられた文様。そこから日本人に愛され続けてきました。
雪の結晶の一つを文様化。
丸の6箇所がへこんだデザインです。
雪は冬なので、文様の季節としては冬。にも思えますが、夏に涼を求める・与えてくれる、ということで夏の柄と考えられています(ですので、浴衣等にも使われる)。現在では、季節は関係なく袷物から夏物まで幅広く、用いられています。
帯や着物の意匠として、典型的な古典柄から、モダンな柄まで、本当に幅広く見ることができます。また、となみ織物といわず、私だけでも、結構な数の様々な雪輪柄を制作していますので、おそらくこれからも登場する文様になると思います。
2,織組織/雲龍錦(夏&単衣用3シーズン)
残念ながら、この「雲龍錦」は現在では織れない織組織の一つです。
どこからで詳しく書きたいと思いますが、帯の場合、一つの織物(織組織)を織るに織機が必要で、その織組織ごとに織機をカスタマイズします。
たとえば、それをせずに、ある織機で無理やり様々な織物を織る。できないでもないのですが、織組織に無理が生じますので、やはり良いモノを織るためには、ちゃんと機をカスタマイズし整えて織りに入ります。
パッと機を遠目で見た感じは、同じ様に見えても、実は織組織ごとに機は全部異なります。
今は、この雲龍錦の機も織る職人もいないため、もし復刻させる場合、機のシステムを作り直し、職人も考えていかなくてはいけない・・・。一度、なくなると復活させていくのは、この面だけでも非常にたいへんです。
この帯を取り上げたのは、この機が無くなると・・・。
という話以外にも、もう一つ、上げ方の話について触れます。
同じ織り方、色糸を使うのに、この上げ方を変えることで、帯表面に見える織物の見え方に変化をつけることができます。
この帯であれば、薄いグレー、薄いグレーの2色で3色を作り出し、雪輪の横段にしています。
具体的には「2,織組織」の3枚の写真。
異なる3色のグレー色で横段の地色をつくっているように見えますが、一番下の色は、濃いグレーをベースに僅かの薄いグレーを通します。
真ん中の色はほぼ薄いグレーだけ、点だけ濃いグレーを通します。
そして、一番上の色は濃い薄いを半々で三色目を作ります。
こんな風にして、少ない色糸で多様な色をつくる。そうすることで、色のグラデーションを柔らかくできるし、使う糸を減らすことで帯の重量面を軽減、またこの色の組み合わせ・見せ方で思いもしなかった新しい表現方法が見つかったりします。
これが織組織ごとに様々変わっていきますので、メーカー・つくり手としては、大変ですが一番やりがい、頭を使う部分になります。
この帯は、それが分かりやすく、工夫を凝らしてモノづくりした、なかなか思い出深い袋帯です。
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