『「かしもの・かりもの」の世界』澤井一郎
最近読んだ、お道の本の中では
ダントツ一番おもしろかった一冊。
なんとも、お道らしい
心の洗われるような読後感。
📕澤井一郎著『「かしもの・かりもの」の世界』
◆
本書は
季刊誌『あらきとうりょう』の連載を
書籍化したもの。
既に「あら誌」を読んでいた私は、
「一度読んだものだし、改めて買わなくとも……」
なんて思っていた💦(反省)
でも、誠に失礼な言い方だが、
本からやってきてくれた(笑)
著者は、学生時代の恩師。
とても偉そうな発言であるが、
今でもとても親しくして下さっている。
ことあるごとに会いに行き、
お話しさせて頂くのだが、
「書籍のご出版、おめでとうございます」
と伝えると
「おー、本やるわー」
と、いとも簡単に下さった。
◆
一度読んでいるとはいえ、
ご厚意で贈呈くださった本を
開かず棚にしまうことは出来ない。
書籍化され、あら誌の連載にはない
「補足」の書下ろしや、
「付録」としての先人の教話もあるし
いや
1ページ目からもう一度
通読しようと本を紐解いた。
すると、なんとも、
新たな発見ばかり。
新たな学びばかり。
本として、一連として
読むからこそ、学べることがある。
◆
本書の要点は、
「かしもの・かりもの」を心に治めて
たすけ一条の「誠」の心で通る。
それが、お道の信心のかどめである
ということ。
これを、先人の教話を題材に
いろんな切り口から説明して下さっている。
では、なぜ、
題材が、先人の教話なのか。
原典やこふき話、
教典、教祖伝ではなく
先人の教話から「かしもの・かりもの」を学ぶのか。
ここの説明が、
重要かつ面白いところであり、
他にはない本書の特徴といえる。
まだお読みになっていない方のために
詳しい説明は控えるが、
「話」をキーワードに、見事に展開されている。
◆
12回に連載されたそれぞれの項目は、
話の切り口は違えど、
すべて同じ結論へ帰着する。
つまり、
信心のかどめは、
どの先人の教話であれ、
さきほど挙げた要点に帰着する
ということ。
だから一見、本書を読み進める中で、
「あれ、また同じことを言っているのかな?」
と思うときもある。
しかし、この感覚こそが
何より重要だと気づかされる。
「かしもの・かりもの」の御教えは、
何度も何度も、
繰り返し繰り返し、
聞かせて頂くことで治まっていく。
『あらきとうりょう』の一読では
気づけなかった私のように、
重ねて重ねて触れるうちに
「なるほど、そういうことか」
と治まっていく実感。
それぞれが同じ結論へ帰着する、
だからこそ、やっぱり大事なのかと、
これこそが、
書籍として読む功績であろう。
「千遍聞いて千遍説け」って
こういうことか……
を、味わえる一冊である。
◆
さて、
思えば思うほど、
「一度、読んでたし、いっかー」
と、恩師の書籍を軽んじていた反省が湧く。
読了後、
素晴らしすぎる書籍の出会いと
申し訳なさとが相まって
追加で10冊購入することにした。
・教会の夕づとめで少しずつ拝読
・思いつく知人へプレゼント
◆
さいごに、
著者本人から教えていただいた表紙の意図を。
本書の帯をとると
回廊ふきひのきしんに伏せ込まれる方の姿が見える。
伏せ込みとは、
こうした見えない陰でするもの。
ここにも信心のかどめが表現されてある
ということをつけ加え
書評を終えさせていただきます。