ドラマ『宙わたる教室』は、胸アツな”青春”を感じることができる予感がします!
NHKドラマは、このところ外れなし。…というより、当たりばかり。先日スタートしたドラマ『宙わたる教室』。定時制高校を舞台に繰り広げられるであろうさまざまな”青春”たちに、すでに胸アツの予感がします。
このホームページの言葉通り、これは実話が元になっているんですね。定時制高校は働きながら学ぶという状況だけでも大変なのに、さらに実験や研究にも挑むなんて本当に素晴らしいことだと思います。
窪田正孝主演ということだけで観ることを決めましたが、主人公の藤竹叶の飄々とした佇まいは、あの窪田くんの声のトーンとしゃべり方もドンピシャでハマり役でした。
藤竹は惑星科学の研究者で大学の助教授になったものの、突然辞めて渡米。大学の同期でJAXAに勤めている相澤に、フラフラしているなら一緒に働かないかと誘われました。けれど「それならもう決めたんだ。やりたい実験があって…」と。
藤竹が次に決めた職場はなんと定時制高校。そこの理科教師として赴任。年齢も国籍もバラバラな生徒たちに、藤竹がこれからどんな魔法をかけていくんでしょう。
第1話は廃棄物回収の会社で働きながら学校に通う、柳田岳人の物語でした。彼はテストの計算問題は満点にも関わらず、文章題は白紙。
「文章を読むのが嫌いなんだよ。見てるだけで疲れんの。吐き気がしてくる。全然意味が入ってこねぇ…。”不良品”なんだよ」
子ども時代に勉強のプリントを前にして、両親から「真面目にやりなさい!辛抱が足りない」と叱られる岳人の姿がありました。
ある日、職場の年上の先輩から飲みに誘われた岳人が学校に行くからと断ったときのやり取り。
「今の定時制はひどいらしいのぉ。健気な勤労学生が通ってたのは昔の話で、今はできの悪い不良やら、不登校のガキばっかりやっちゅう話やないか…。お前も中退で入り直したクチか?そんなグレとったんか?」
「あんたには関係ねぇだろ」
「待てよ。中卒は口の聞き方も知らんのかい」
その後運転免許を取るために勉強していた岳人のノートが「ひらがな」ばかりだったことを指摘されバカにされた上に、「定時制の前に小学校からやり直せや」と言われてしまい…。その言葉に我慢できずにカチンときて、思わずその先輩を殴ってしまった岳人。
また仕事はクビになってしまうであろうと岳人は自暴自棄になり、藤竹に退学届けを持ってきました。なぜ定時制高校に入ったのかと、岳人に尋ねる藤竹。
実は岳人が定時制高校に入ったのは、もっと仕事の種類を選べるように自動車運転免許の学科試験に合格するためでした。ところが、1年経っても教本がまともに読めない…。
藤竹がこの前白紙だった文章問題を読んで岳人に問題を解かせてみると、いとも簡単に正解を答えることができました。
”ディスレクシア”の存在は、最近まであまり広く知られていませんでした。自覚がないまま大人になる人も多い…。
自分の努力では、どうにもならない現実を突きつけられてしまった岳人の絶望。そんな岳人の怒りと悲しみをぶつけられた藤竹の、狼狽した姿が印象的でした。
藤竹としては”ディスレクシア”の可能性を示唆してあげることで、自分自身の障害ときちんと向き合えるはずだという優しさからの言葉だったんでしょう。
教師はときに、正しいことを伝えるだけではダメなこともあるんですよね。この教師と生徒として二人が対峙するシーンは、どちらも正論なだけに胸が痛かったです。
「Why is the sky blue?」
英語の時間に「Whyを使って英文を作れ」と言われたときの岳人の解答でした。英語教師の木内は、岳人がそんなことを考えているのかと心に残ったと藤竹に言いました。
”ディスレクシア”の指摘以来、学校を休み続け不良仲間たちから持ちかけられた麻薬の売買に手を出そうとしていた岳人。
岳人に電話をし続けていた藤竹は、立ち食い蕎麦屋で偶然岳人と会うことができました。
「空はなぜ青いのか?知りたくないですか。来るとき、タバコをお願いします!」藤竹は翌日4限の「地学基礎」の授業に来るよう岳人に言いました。趣向の違う実験をすると…。
岳人は学校に押しかけてきた不良仲間を制して、藤竹の授業に参加することにしました。
「ここにはなんだってあります。教師にできるのは、場所を用意して待つ…ただそれだけです。ここは、あきらめたものを取り戻す場所ですよ」と藤竹。二人の間に少しだけ教師と生徒の絆が芽生えたようでした。
「今からこの教室に、ささやかな青空を作ります。このライトを太陽の光だと思ってください。太陽の光は白色なんですけど、こうやってプリズムを通すと、赤・橙・黄・緑・青などの色に分かれて見えます。太陽光にはさまざまな波長の光が含まれていて、その波長によって色が違います。波長が短いのが青、長いのが赤。すべて混ざっていると白になります。とりあえずそれだけ覚えておいてください」
藤竹はそう言うと岳人から借りたタバコ3本に火つけ、太陽に見立てたライトをタバコにかざすと、立ち上がる煙が青く見えました。
「太陽光が大気中で空気などにぶつかると、四方八方に散乱を起こします。これ”レイリー散乱”という現象です。そのとき波長の短い光は空気分子にぶつかりやすく、波長の長い光は通り抜けやすい。つまり太陽光で波長の短い青い光がもっとも強く分散されて、空全体に広がります。たとえ私たちが太陽に背を向けていても目に飛び込んでくる…」
これが岳人の疑問だった「Why is the sky blue?」…空が青い理由です。
「あれのどこが青空なんだよ。しょぼすぎんだろ」と悪態をついてみせた岳人でしたが、藤竹の作ったささやかな青空は岳人にとっての希望の光になったような気がしました。
藤竹は科学部を学校に作りたいと思っていて、その部員第一号として岳人を誘います。「知ってますか?火星の夕焼けって青いんです」惑星に興味のある岳人がその第一号になることは、どうやら間違いなさそうです。
藤竹自身も教師としては新米で、これから生徒たちを相手に少しずつ教師らしくなっていく姿が描かれていくと思います。
何かしらの理由があって高校に通えなかった生徒たちが、自分たちの”青春”を取り戻そうとする様子が目に浮かんできます。
生徒役の面々はそれぞれに抱えた問題もありそうだし、科学部はこれから先さまざまな困難を乗り越えていくことになりそうですね。
全10話観終わったとき、心に熱いものが残りそうなドラマ『宙わたる教室』。今後の展開が非常に楽しみです!!