またとてつもなく凄いドラマが誕生した予感~『いちばん好きな花』初回感想~
ドラマ『silent』があれだけの話題作になったのは、生方美久という新人脚本家の書いた脚本が非常に秀逸だったからというのは誰もが認めるところだと思います。
特に”台詞のセンス”には脱帽でした。もう一度ドラマの世界観に浸りたくて『silent』のシナリオブックも買ってしまいましたが、「……」と表記されている台詞の”間”・”空白の時間”までもがその台詞をきちんと成立させるための必要十分条件になっていて、”生きた会話”の連続に文字だけで読んでも圧倒されました。
その生方氏にとって”次回作”というプレッシャーが相当重くのしかかっているだろうと勝手に考えていました。でもドラマ『いちばん好きな花』の初回を観てみたら、それはまったくの杞憂に終わりました。こちらの予想をはるかに越えてくる悔しいほど”心に残る言葉”の数々に、生方氏の”無限の才能”をまざまざと見せつけられた思いがしました。
生方氏のインタビューで、
という言葉がありましたが、今回のドラマは四人の俳優たちの”クアトロ主演”。それぞれの”半径5メートル”にある世界を描きながら、その四人がふとしたきっかけで出逢いまじり合っていく様が、実に自然な流れで展開されていきました。
潮ゆくえ(多部未華子)
「昔から、二人組を作るのが苦手だった」
近況:「唯一なんでも話せた男友達が、彼の結婚を機に友達ではなくなってしまった」
春木椿(松下洸平)
「昔から、二人組にさせてもらえなかった」
近況:「結婚を約束した彼女を、彼女の男友達に奪われた」
深雪夜々(今田美桜)
「昔から、一対一で人と向き合うのが怖かった」
近況:「ただ友達になりたいだけなのに、相手(男性)に勝手に恋愛と勘違いされてしまう」
佐藤紅葉(神尾楓珠)
「昔から、一対一で向き合ってくれる人がいなかった」
近況:「友達の友達もみんな友達と思っていたけれど、結局本当の友達は誰もいなかった」
四人が偶然巡り逢ってからの会話劇がテンポよく面白かったですね。お互い勘違いの会話がひとしきり続き、椿が指輪を外して花壇に埋めてみんなで手を合わせるところなんて、くすっと笑えました。
そこから初対面の四人でコーヒーを飲みながら、”男と女の友情”と”恋愛”の話、”二人組”にまつわるそれぞれのエピソードを語り合い…。子供時代から大人になっても何も変わっていない四人の状況が、この一連の会話から手に取るように伝わってきました。このゆくえの言葉が胸にズキンと突き刺さったんじゃないでしょうか。
初回はなんと言っても、ゆくえのナレーションのこの言葉。名言すぎでした。「二人」と「一人」の関係性をこんなにも的確に表現できるなんて生方氏恐るべし。ドラマの今後の展開&テーマである“男女の間に友情は成立するのか?”を生方氏の世界観の中でどう着地させるのか?期待が高まります。
ちなみに”男女の間に友情は成立するのか?”については、私は成立すると思いたいです。でも自分の実体験としては完全に友情オンリーは難しいというのが本音です。”LIKE"と”LOVE”の線引きは明確にはできないのでは?と感じます。
またとてつもなく凄いドラマが誕生した予感がしています。四人の関係性がどんな変化をしていくのか?非常に楽しみです。
長い文章最後まで読んでくださり、ありがとうございました。