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ドラマ『週末旅の極意2』は、「家族」についてじっくり考えてみるいい機会になると思います

旅気分に浸れてストーリーもよくできていたので、ドラマ『週末旅の極意』を楽しみに観ていました。”シーズン1”は観月ありさと吉沢悠の「夫婦」二人の「週末旅」が描かれました。「夫婦」であることの意味を確かめ合い、失っていた「夫婦の時間」を取り戻していくという内容でした。

今クール”シーズン2”が始まるというので別な「夫婦」の話かと思っていたら、今度は「家族」がテーマでした。”シーズン2”も毎話楽しく観ています。

なんといっても毎回登場するお宿が素晴らしくて、どこも行ってみたくなります。今回はORIX HOTELS & RESORTSが特別協力だそうで、ハイレベルなお宿ばかり。圧巻の景色もグルメもお酒も、どれもこれも”旅情気分”を上げてくれます。

主人公の山岡家は石田ひかり演じるパン屋でパートとして働く母・優子、甲本雅裕演じる製薬会社勤務の父・義正、大原優乃演じる損害保険会社に勤務する社会人3年目の長女・めぐみ、島村龍乃介演じる音楽に没頭し、劇伴作家を夢見る大学生の長男・誠の4人家族。

「家族」は一番近い存在でありながら、年齢を重ねていくにつれてお互いの関係性が微妙に変化していく難しい存在でもありますよね。山岡家も子どもたちが巣立ってしまい、どことなく「家族」としての距離感が生まれていました。まさに、サブタイトルの「~家族って近くにいて遠いもの~」です。

親としての悩み、子どもとの葛藤、そして「家族」の中での「夫婦」の苦悩。さまざまな感情が交錯する「家族」の物語が、「週末旅」を通して描かれています。

優子が懸賞で当てた「家族で行く!一泊二日会津の旅」に子どもたちを誘ってみたところ、どうせ断られるだろうと思っていたのに二人とも了承してくれたことからこの「週末旅」が始まりました。

4人で旅に行っても子どもたちはそれぞれが抱える悩みを両親に言い出せずにいたり、距離感がなかなか縮まらないもどかしい時間が描かれていたりもします。それが余計に「家族」としてのリアルな姿でもあると感じます。親は自分が我が子のことを何でも分かっていると思っていたりしますが、実は子どもが親に言えないことって多かったりしますしね。

第3話のストーリー、心にジワリ残るものがありました。勤続35年を迎えた父・義正が会社の同僚と二人と飲みながら、まだまだ子どもにお金がかかるという話をしていました。一人の同僚の息子は医学部なのでまだ2年あって釣り三昧は先だとか、もう一人の同僚は一流企業に就職の決まった息子がいるとか…。義正は、息子の誠は将来を決めかねていると言いました。

「今後の人生を左右する選択だからな」
「でもさ、どっかで息子には父親を超えてほしいって思っちゃうよな」
「まぁ…そうかな」

そう言いながら義正は複雑そうな表情を浮かべていました。なぜなら誠の本心が分からないから…。これまでの旅で誠はいつも単独行動で、パソコンで音楽を創ることばかり優先していました。

今回の旅でも、大浴場で一緒にお風呂に入ろうと誘う義正に誠は「ごめん。俺このあとやることあるんだ」と言って、またパソコンを持って部屋を出て行ってしまいます。

優子とめぐみは、絶景をながめながら二人でお風呂を満喫していました。母と娘。少しずつ心の距離が縮まってきているようですね。

豪華な晩御飯を堪能した後、珍しく誠が「父さん、バーラウンジ行かない?」と誘ってきました。「うん。行くか」やっと男二人の時間が持てました。

「初めてだな。二人でちゃんと飲むの」
「そうだね」
「なにか話でもあるのか?」
「就職の…ことなんだけどさ」
「うん」
「いろいろ考えたんだけど。やっぱ俺さ、友だちみたいな就活できなくて。普通のサラリーマン…とか。なんか、違うっていうか。なにより、自分が夢中になれるものってなにかなって、ずっと考えてて…。俺姉ちゃんみたいに勉強できなかったし、これって言えるものもずっとなかったけど、でも音楽だけは時間忘れて夢中になれるのかなって。だから音楽を…音楽を仕事にしていきたいって思ってる。劇伴って分かるかな?映画とかドラマとか、場面を盛り上げたりする音楽があるでしょ?それを仕事として作ってみたいんだ。だから、会社に入らずにフリーランスでやっていこうと思ってる」
「そっか…音楽か…。すごいな、お前」
「えっ?」
「ちょうど誠くらいの頃だったかなぁ。父さん、小説書いてた」
「初めて聞いた」
「小説で食っていきたいって思ってた。でも、それで食える人間なんて一握りだし。自分で自分の限界決めちゃったんだな。ときどき思うんだよ。もしあのとき、挑戦してたらって。人間ってな、やったことより、やらなかったことで後悔する生き物だから。後悔してほしくないかな、誠には。誠の気持ちは分かった。正直に話してくれてありがとな」
「うん」

ドラマ『週末旅の極意2』第3話より

時折誠の言葉に難しい顔をしながらも、誠の想いをきちんと受け止めてあげた父・義正の優しさに感動してしまいました。もし息子にこう言われたら、ほとんどの親は反対すると思います。「音楽で食べるなんて夢物語だ」とか…。私も誠と同じような人生歩んできましたから。

その様子をこっそり見ていた優子は、その後義正と二人で飲みながら誠のやりたい音楽や誠自身について語り合いました。

「ホントは、音楽は趣味で続けて地に足のついた仕事をしてほしいって思ってる?親として、ここはしっかり言っとかなくちゃって」

優子のこの言葉も、実は義正の本音なのかもしれません。誠が中学生くらいのときに、口うるさく言った優子に向かって「うるせぇーっ!」と言ったことがあり、優子としてはそんな誠が自分できちんと決めて、自分の言葉で父親に伝えて、自分の足で歩こうとしているだけでジーンとしてしまったと。この優子の気持ちも分からなくもありません。これはこれで、誠の立派な成長の証ですからね。

翌朝、朝食を食べ終わってから自分の創った音楽を義正に聴かせる誠。パソコンだけでこんな素敵な音楽を創れてしまう誠に、義正は驚きを隠せませんでした。

先日の同僚二人とまた飲みながら、義正は誠が音楽をやると言っていることを伝え、誠の作った音楽を自慢げに聴かせます。

「でもこういうのは、なんていうか、金になるもんなのか?」
「それは、よく分からん。でも俺さ、誠に親父を超えてほしいとは思わないんだ。正直、二人のことはうらやましいなって思ったよ。でも誠の人生だ。親がするべきは、子どもの決断を見守ってやることかなってな」
「誠くんこそ、自慢の息子だ」
「いや、誠くんからすれば、自慢の親父だな」

ドラマ『週末旅の極意2』第3話より

笑顔を浮かべる義正の気持ちに、今は嘘偽りなさそうでした。父として、誠のこれからを温かく見守っていくことでしょう。

長女のめぐみは結婚を考えている恋人についてこれから両親にきちんと話をしていくことになるし、山岡家はときにぶつかり合いながらも「家族」としての絆をもう一度しっかり築き直していけると思います。

ドラマ『週末旅の極意2』は新感覚な“旅ドラマ”の楽しみもありながら、「家族」についてじっくり考えてみるいい機会になると思います。30分ドラマながら、内容は濃くて楽しめますよ!

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