
ドラマ『ザ・トラベルナース』の世界観、やっぱり最高でした!!
第9話で終わりだったのがもったいないくらい、今シーズンも安定の面白さだったドラマ『ザ・トラベルナース』。岡田将生演じる”歩ちゃん”こと那須田歩と、中井貴一演じる”静さん”こと九鬼静。いつもの口ゲンカを毎度繰り広げながらも、名コンビぶりが冴えわたりました。
第7話で若村麻由美演じるナース・八木めぐみが登場してからは、ドラマの雰囲気がまたワンランクアップしたような気がします。手術が難しい”膵臓がん”を抱えるめぐみは、歩と静の働く「西東京総合病院」で1年半前までナースとして働いていました。ある患者への“投薬ミス“を引き起こした直後、”退職届”を出してそのまま行方が分からなくなっていました。
ところが突然「西東京総合病院」に来院し、あえて山崎育三郎演じる院長・薬師丸に自分のオペを依頼しました。
薬師丸の何かしらの過去が明かされていくという展開は読めていましたが、まさか自身の”医療ミス”をめぐみに責任転嫁していたとは…。それを隠して父親である前院長を解任し、クリーンな院内改革を推進してきたように見せかけて政治家・灰原と裏取引をするなど、不正にも手を染めてきた裏の顔が明らかになった薬師丸。
第8話で灰原が人間ドックを理由に入院してきたものの、それは政治家あるあるの“偽装入院“でした。灰原はナースへのセクハラ行為や作業の負担を増やす”厄介者”で、ナースたちからは不満が続出。
ことあるごとに「院長、院長」の寺島しのぶ演じる看護部長・塔子にナースたちも苛立ちを隠せなくなり、それに気づいた静が「現場のことは部長が判断してよろしいのではないでしょうか」と進言すると「分かってるって言ってます!」と珍しく声を荒らげる塔子。
塔子は静に、なぜ院長に対してそこまで忠誠を誓うのかを打ち明けます。めぐみがいなくなった当時さまざまな後始末を押しつけられて、精神的に限界がきてナースを辞めようか悩んでいた塔子。そんな塔子は「愛川さんやめないくださいね。愛川さんのようなナースが必要なんです」と薬師丸に声をかけられ、その言葉で残りのナース人生すべてを薬師丸に捧げようと決心したと…。
一方で薬師丸は歩をめぐみのオペに参加させることを決めて、「トラベルナースを卒業しませんか?」と歩に高額のギャラを払うと言ってスカウトします。
そんな中静は、体調の悪い患者のために灰原を個室から大部屋に勝手に移動させてしまいます。「患者のことは、現場のナースが決めさせていただいております」という静。院長を呼べと怒る灰原に、塔子も「院長院長うるさいです!現場のことは部長の私が判断します!」と。「おのれが誰か…。病気じゃと嘘ついて隠れとる卑怯もんじゃい!」灰原にいつもの広島弁でバシッと渇を入れる静。
それを知った歩は、静に不満をぶつけて二人は衝突してしまいます。歩は、めぐみのオペも、薬師丸と共に絶対に成功させると断言。そんな歩に静はこう言いました。
「八木さんがなぜこの病院に戻ってきたと思いますか?歓迎されることのないこの病院に。八木さんは、心を取り戻しに来たんです。ですからオペが成功したとしても、院長が変わらない限り八木さんの心を救うことはできない。私はそう思っています。繰り返すようですが『ナースは人を見て…』」
「人を治すんですよね?分かってます!!」
「分かってるなら、今の君はどうですか?病気ばかりを見ていませんか?しっかり患者さんを見てください。でなければ、八木さんを救うことはできません」
その後、寮を出ていく歩。実は、この衝突のときの二人のやり取りには″続き″があったんですが…!
薬師丸は歩だけを病院に残し、目障りな静をはじめ、塔子たちナースを一斉解雇という暴挙に出ました。めぐみは苦しんでいる患者をないがしろにしていて、塔子たちをクビにするのは約束が違うと薬師丸に抗議します。「私はなんのために…私は先生を…私は先生を守るために…」
”医療ミス”を犯したとき、薬師丸はめぐみにこう言いました。この言葉を信じてめぐみは薬師丸の罪を被ったわけです。
「私のあんなミスで患者を死なせたと分かれば、私は終わりです。でも、ナースの八木さんなら…。私はここでつまづくわけにはいかないんです。私はこの病院を、いや、日本の医療を改革しなければいけないんです。八木さん、八木さん、お願いします。お願いします…」
「私は先生の代わりに責任を負ったんです。先生がいなくなると困る患者さんがたくさんいるから。この病院を変えるって約束してくださいました。患者も医師も看護師も、誰も見捨てないって。全員救ってくれるって。先生約束しました。なのに…」
「やめて、デタラメ言わないで!」
「塔子さん、だましてごめんなさい」
「嘘ですよね?院長。嘘って言ってください。院長!!」
めぐみと塔子のやり取りを聞いていた薬師丸は、鼻で笑いながら「証拠があるんですか?」と開き直ります。”悪魔な育三郎”はかなり魅力的ではあるんですが(笑)。
「ただのナースと医師である私、どちらがより価値があるか。考えるまでもないでしょう」
薬師丸の、ナースを下に見るこの言葉への塔子のビンタがやけに悲しかったです。
その矢先に「西東京総合病院」がランサムウェア攻撃を受ける非常事態が発生します!これはもしや静が仕組んだ!?とか深読みしてしまったんですが、それはなかったようですね(笑)。
志尊淳演じる阿部湊が、最終回に友情出演してくれたのも嬉しいサプライズでした。彼は元ナースで、静のフローレンス財団から援助をもらってナースに。現在は厚労省に務めていて、今回初動対応支援チームの一人として派遣されたのでした。
医療システムがダウンし、電子カルテも閲覧不可。私自身今年は母の一件で病院に行く機会が多かったわけですが、どの病院もすべてをパソコンで管理しているのを目の当たりにしてきたので、もしこういうことが実際に起きたら病院は大パニックになることは間違いありません。
大混乱の病院では、歩が一人で十人分くらいの奮闘ぶりを見せます。患者の命を守るため医師や他のナースたちに的確な指示を出したり、歩なりに今できる限りの仕事を全うしていました。あの衝突のときに、静と約束したように…。
「患者を見てるから言ってるんです。今オペをしなければ、八木さんは早ければ1か月で命を落とします。時間がないんです。今はまず病気を治さないと。八木さんの過去とか抱えてる苦しみとか、それを治してあげたいって静さんの言うことは分かります。でも、病気を治してから心を治したっていいと僕は思います。僕は、八木さんを必ず治します。人を治すだけじゃなく、病気も治せるナースに僕はなってみせます。静さん、僕を信じてください…。なんですか?」
「おそらく私はクビになります。後は、歩くんに託してみましょう。かのフローレンス・ナイチンゲールはこう言っています。『私は命のある限り、患者を死に追いやるものと闘い続ける』と。お手並み拝見と参りましょう。しっかり闘ってください」
「はい」
クビになることを悟った静は、病院のことをすべて歩に任せたんですね。二人の絆が感じられるやり取りでした。互いに信頼し合えていることが十二分に伝わりました。
病院ではめぐみの容態が急変し、緊急手術の必要が…。もはや歩一人では限界状態になったとき、クビになったはずの静たちナース・チームが救世主のように病院に現れました!このシーンにはシビれました。
ここからはクビになったとかそんなことは関係なく、すべてのナースが力を合わせて入院患者たちのケアにあたりました。普段から患者一人ひとりのことをしっかり見ているナースには、電子カルテなんて必要ない!ただいつも通りの仕事をするだけ。
そのナースたちのテキパキとした仕事ぶりを見ていた、薬師丸と静の会話。
「『ナースは人を見て人を治す』。あなたが言っていた意味が少し分かったような気がします」
「そのために、私たちはカルテ以上に患者さん本人を見ています。そして患者さんだけではなく、院長。あなたを治すことがこの病院にとって、一番の改革だと私は考えています。いつまで突っ立っとるんじゃい!さあ、白衣を着て早く患者さんのところへ!」
自分はもはや医師ではないとめぐみの手術への執刀を拒否し続けていた薬師丸は、静の言葉を受けて手術室に向かいました。手術は無事に成功。「オペは成功しました。申し訳ありませんでした」薬師丸の心からの謝罪の言葉に、めぐみもやっと救われたと思います。
薬師丸は院長を辞任し、病院を去りました。歩はフィリピンの病院からスカウトを受け、あっけなくフィリピンへ。おむすび屋「脈屋」の二号店を出店すると静が言っていた時点で、これはもしやフィリピンに!?という想像はしていました。なのでフィリピンでの二人の再会は、予定通りという感じでした。実はその病院は静が出資している病院で、裏で静が動いたわけですね。
「信頼する人との別れ。この先二人の道が交わることはない」というたま子の占いの結果が、”ひじき”のせいの勘違いで良かったです(笑)。
そこからいつもの二人の口ゲンカが始まりましたが、あれは脚本ではなく途中からは完全にアドリブなのではないかと…!?それほど二人の息がピッタリで、第1話でも口ゲンカから始まり、最後も口ゲンカで終わる…。これぞ『ザ・トラベルナース』でした。
病院の敷地に子ども相手にギターを弾いている人がいて、これはもしや主題歌を担当している斉藤和義!?と思ったら、やはりご本人でした。これまた嬉しいサプライズでした。
シーズン2は新メンバーが引っ掻き回したりがありましたが、おなじみメンバーのチームワーク抜群でした。野呂ちゃん、安達祐実、渋谷のぶえ、相変わらず絶好調でした!
これは間違いなくシーズン3があるという予感がします。″医療モノ″というくくりでも、”人間”を描いているから私はこのドラマが好きなんだと再認識できた気がします。
ドラマ『ザ・トラベルナース』の世界観、やっぱり最高でした!また歩ちゃんと静さんに会えますように…。