ドラマ『彼女たちの犯罪』は、今クールの隠れた名作でした

タイトルでどんなサスペンスものかと観始めたドラマ『彼女たちの犯罪』。初回ですでにその世界観に引き込まれた感じでした。

予想より骨太なストーリーがどんどん複雑に絡み合って展開していき、最後まで緻密で完成度の高いドラマだったと思います。

主演の深川麻衣、共演の前田敦子、石井杏奈は3人ともに”元○○”のグループからソロになった人たちですよね。”元○○系”の人たちはその後俳優の道を選択した場合、なんとなくみんな”一緒くた”のイメージを持たれがちな気がします。

前田敦子は好き嫌いは別にして、すでに自分の地位を確立している感はあります。

今作で深川麻衣と石井杏奈はそのイメージを払拭して、頭一つ抜け出した感じがしました。それほどこのドラマの狂気的な熱演が光っていたということです。

深川麻衣演じる繭美は「虚栄」を、前田敦子演じる由香里は「自由」を、石井杏奈演じる理子は「復讐」を。それぞれの思惑を実現するために練られた”偽装自殺計画”が思いもよらない”殺人事件”へと発展し、彼女たちの計画が狂っていく様が実に見事に描かれていました。

じわじわ追いつめられていく三人の姿は、ただ”普通の幸せ”を望んだだけと思うとどこか哀れでもあり、人間は自分の欲と引き換えに何かを失うこともあり得るという怖さを改めて痛感させられました。

由香里が実は無国籍で他人になりすましていたことが明かされ、繭美がケガをさせてしまい結果として由香里の身代わりに崖から突き落とされて殺されてしまった女性が本物の由香里だったという事実が判明したときが一番衝撃的でした。こんな裏があったとは…。

理子の計画は本物の由香里さえ現れなければすべて順風満帆に運んだのかもしれません。

でも大学時代自分を性的暴行し妊娠までさせた毎熊克哉演じる由香里の夫・智明への「復讐」が成功するということはすなわち、智明と結ばれることを願っていた繭美の「虚栄」の幸せを奪うことにつながるというこの”矛盾”だけはどうにもならなかったように感じます。いくら後からネタばらしをしたとしても…。

理子自身が繭美を好きだったというのは想像していました。だからこそ自分の「復讐」はもちろんですが、智明をとことんおとしめることによって大好きな繭美が智明への気持ちをすっぱり断ち切りやすく仕向けることが、余命宣告されている自分の最期の役割だと思っていたような気がします。

最終回、その智明が逆上して繭美の首をしめるシーンがありましたが、そこまでの展開も自分の残された命を削ってまで繭美のこれからの人生を考えてのことだったように思えてなりません。

結局三人は逮捕され、表向きは誰も幸せになれなかったような結末でした。

でも繭美のこの言葉は、罪を償ったのちに「虚栄」の心を捨てて等身大で新しく生き直す決意のように感じました。

「私が何より大事にしてきたものって、結局他人にどう思われるかなんだって。そのために私ずっと必死になって。でも、それって犯罪までして守る価値あったのかな」

『彼女たちの犯罪』最終回より

由香里はただ窮屈でしかなかった神野家の義理の母に思いがけず優しい言葉をかけられ、他人になりすまして手に入れられる幸せや「自由」などないことをかみしめたのではないでしょうか。

理子は当初の計画通りさとうほなみ演じる翠に自分の息子・大輔を託したいという願いが叶い、唯一希望のあるエンディングだったことが救いでした。

今自分の目の前にあるささやかな幸せを大切にして、当たり前の日常に感謝しながら生きていこう…このドラマを観て何より感じたことでした。

原作とドラマの内容が違うらしいので、原作も読んでみたくなりました。まだ観ていない方はぜひ!オススメします。

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