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(童話)ルルと螺旋と虹の橋
螺旋でできた世界がありました。その世界の中央には、長い長いどこまで続くともしれない銀色の螺旋階段が立っていました。
空はいつも曇りで鉛色の雲がおおっていたので、どれだけ目を凝らしても階段の頂上は見えませんでした。そして地上では、草一本生えない荒涼とした大地が、気の遠くなるほど果てしなく広がっているのでした。
この螺旋の世界では、人々は背中のゼンマイで動いていて、飢えることも乾くこともありま
(中編小説)ちび神様と夜空の花 後編
三.カヤリ
予報にもなかった突然の夕立が降り始めたのは、絵里が家に帰り着くなり突然のことだった。
「雨止まないわねえ」
「うーん」
台所の母の千里の声に、絵里は縁側で膝を抱えたまま生返事をかえす。
「灯籠とか、花火とか大丈夫かしらねえ」
「うーん……」
「聞いてるの?」と呆れた声が飛んできたが、絵里は無言で膝を抱え直した。
目前の庭の風景は、無数の雨の線に遮られて霞がかったように映る。雑
(中編小説)ちび神様と夜空の花 前編
一.不思議な赤色
真夏の射すような日差しも、夏林の豊かな青葉が生い茂るこの場所までは届かない。
静寂の落ちる涼やかな雑木林の神社は、今日も訪れる者などいない――はずだった。
コトリ
控えめな音が響き、本殿の低い階段を上った賽銭箱の向こう、古びた引き戸がすうっと開く。中からひょこりと顔をのぞかせたのは、萌葱色のかすれ十字の着物を着た、小さな男の子。
彼は落ち着かない様子できょろきょろ