食品中のたんぱく質の定量―正確だけど近似値―
食品の栄養成分表示に表示された値の許容誤差は、20%です。これを聞くと、たんぱく質の測定誤差は大きく、正確ではないと思ってしまいます。実際のところどうなのでしょうか?
「注 食品の栄養成分表示の教養誤差について
たんぱく質量の表示の許容誤差はプラス・マイナス20%。ただし、100g当たりの栄養成分の量が2.5g未満の場合は±0.5g」
たんぱく質の測定法である「マクロ改良ケルダール法」では、窒素分を定量します。この定量は同じ試料を測定した場合、数値は安定しており正確です。次に、「窒素―たんぱく質換算係数」(以下、変換係数)を乗じて、たんぱく質の量を算出します。
必要となる換算係数はいくつかの食品について、表(窒素―たんぱく質換算係数)に記載されています。表に記載されたもの以外はすべて、一律6.25とします。表には、14種類が記載され、最小値は5.18、最大値は6.38です。
日本食品成分表分析マニュアルより
つまり、窒素分を正確に測定しても、変換係数の正確な値が記載されていなければ、タンパク質の定量は正確に算出できず、近似値となってしまいます。
では、表に記載された変換係数の種類を増加させ、データベースを発展させていけば、いいのでしょうか?
変換係数は、食品名ごとに書かれていますが、測定される食品の多くは、混合物です。つまり、その割合が不明であり、正確な変換係数は求められません。(正確な混合比がわかっていれば、「栄養成分表」からのたんぱく質を足し合わせて、その総量が計算できます。)
正確な混合比がわからず、表に記載されたもの以外は、代表値の6.25を乗じており、正確なタンパク質量は算出されません。
つまり、たんぱく質の定量は、試料ごとの繰り返し誤差から考えると正確なのですが、試料の正確な変換係数が決まらず、代表値を使うため、近似値に過ぎないのです。
食品の分野ではこれで問題がありません。一方、食品以外のたんぱく質量の定量について相談を受けることがあります。この場合は上記の理由を説明し、その試料の正確な変換係数が求まるのかを確認し、不明な場合は、窒素分としての定量を勧めます。