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ムヌーシュキンの遺言 - 太陽劇団2023年日本公演

20231021-22 金夢島 出演:太陽劇団 演出:アリアーヌ・ムヌーシュキン 東京芸術劇場 2001年「堤防の上の鼓手」(新国立劇場)の衝撃的な日本公演以来、23年ぶりのカンパニー来日である。 R.ルパージュとグローブ座カンパニーによる平幹二朗主演「マクベス」等の経験で、西洋の劇場人たちによる「ジャポニスム」に立脚した舞台は経験していたが、それでも「堤防の上の鼓手」でのムヌーシュキンとそのカンパニーの創り上げた芸術はすべてにおいて驚かされた。東洋の衣装と肉襦袢を纏って

    • ミョンフンのオテロ

      オテロ 演奏会形式上演 C.ミョンフン(dir)東京フィルハーモニー管弦楽団 G.クンデ、小林厚子、D.イェニス 20230731@サントリーホール 幾多の歴史的名盤を超える名演でありトスカニーニの神格的演奏に迫る演奏だ。これほどのオテロを日本で生で聴けたことが信じ難い。 ミョンフンのオペラ職人としての練達ぶりは今更言うまでも無いが、管弦楽がこれほど雄弁な作品だとその腕が最大限に発揮される。歌手以上にオーケストラが歌いそして演じる。日本のオーケストラからこれほどのオペラ表

      • ノットのエレクトラ

        エレクトラ 演奏会形式上演 J.ノット(dir)東京交響楽団、C.ガーキ、S.C.ウォレス 20230512@ミューザ川崎 20230514@サントリーホール まことに圧倒的としか言いようが無い凄演。2022年の驚異的なサロメを完全に超えている。 ノットが指揮する東響の創り出す音楽は尋常ではない。シュトラウスのスコアをあくまで精妙精緻に透明に響かせながら、強烈な磁力をもって圧倒的なカタルシスの音のドラマを築き上げている。 だが最も重要なのは、シュトラウスの音楽の底流にあ

        • 孤独の疾走 - ウォン・カーウァイ4K復刻リバイバル

          WKW 4K復刻リバイバル上映@シネマート新宿 20230211 恋する惑星(1994香港) 20230218 天使の涙(1995香港) ウォン・カーウァイ(WKW)。1990年代、20代前半であった若輩の私に「欲望の翼」で映画の価値観を変えてくれた作家である。確か淀川長治氏を講師に招いて都内で催された映画サークルの鑑賞会でこの作品の名が上がり、それに惹かれて当時の勤務先に近い横浜の映画館まで観に行った記憶がある。そこで垣間見た世界は、ストーリーを語ることなどそっちのけで、

          いま、そして未来 - ホーヴェ演出「ガラスの動物園」を巡って

          20221001-02 ガラスの動物園 出演:イザベル・ユペール、ジュスティーヌ・バシュレ、アントワーヌ・レナール、シリル・ゲイユ 演出:イヴォ・ヴァン・ホーヴェ 新国立劇場中劇場 トムの独白に始まり、トムの独白に終わる。 T.ウイリアムズの名作群の中でも群を抜いて私小説的色合いが濃い作品だ。 すべては主人公にして語り部であるトムの追憶として進行し、そこに登場するアマンダ・ローラ・ジムは、いずれも記憶の幻影に過ぎない類型化されたマネキンである。 若き日の追憶を寄り処に生き

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          奈良岡朋子を讃えて - Love Letters 2022年2月7日渋谷パルコ劇場公演

          私が大阪から胸ときめかせて上京し、浴びるように舞台を見た1990年代。 杉村春子・滝沢修・六代目中村歌右衛門らが最晩年の踏ん張りを見せつつ、舞台では次世代の主軸たちが既に縦横無尽の活躍を見せていた。 平幹二朗・三田和代・佐藤オリエらが絶頂期の至芸を披露し、毎週のように劇場に通っては食い入るように舞台を貪った我が青春時代。 かたや文芸界全体にバブルの余韻がまだ残り、銀座セゾン劇場やパナソニック・グローブ座が毎月のように海外メジャー劇団を招聘していた。 眼前で展開されるロベール

          奈良岡朋子を讃えて - Love Letters 2022年2月7日渋谷パルコ劇場公演