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日常#13 野生動物を描くこと
約1か月前、絵を描き始めました。いわゆる写実画です。タイトル画に使用したのは「オキナワイシカワガエル」です。画材がないため、もっていたもののあまり活用していなかったApple Pencilを使い描いています。
目指している最終形は、
・実際の紙に色鉛筆で
・3時間で1作品
・いきものの可愛さがそのまま載る絵
を描くことです。
いつか描き始めようと思っていた写実画。そのきっかけは、姉1のひとことにあります。
姉1は美術が専門で、手前味噌ではありますが、絵のセンスが抜群なんですね。幼少期に興味を持った犬棒カルタを模写しているうちにそのスキルを身に着けたのだとか・・・そんな姉1が描く絵を昔からそばで目にしていたわたしは、密かに憧れの気持ちを持っていました。ただお世辞にも仲が良い姉妹ではなかったので、言い出せず。
そんな姉が高校生の時(わたしは小学生)、一度だけ勇気を振り絞って「絵の描き方を教えてほしい」と声をかけたことがあります。若干ぶっきらぼうな印象があった当時の姉は、ぶっきらぼうながらも拒否することなく、わたしに紙と鉛筆を持ってくるよう指示をしました。
姉1は鉛筆での濃淡の出し方や遠近法についてザッと教えてくれた後、わたしの目の前にある物をスケッチしてみるように言いました。
目の前にあったのは使いかけの消しゴムでした。それが四角い形をしていたので、わたしはさっそく定規を持ってきて描き始めました。
消しゴムの表面の汚れはやっぱり難しいな。しかし・・・我ながら、なかなか上手に書けたのでは?なんて思いながら姉1からコメントを待っていました。
すると姉1はまっすぐな線を指さして、ほんまに?というのです。
姉1によると、見ている景色の中にまっすぐなものなんて存在しないというのです。自然界のものは尚の事だといいます。
(たしかに、そういわれて見れた目の前の消しゴムも、縁の紙はヨレヨレに歪んでいる。長方形に描いた線も、消しゴムを手前から見ると奥に向かって少しすぼんでいる。消しゴムの汚れは鉛筆の芯を横にスライドさせて表現できるものではないし、シャッシャッシャと細い線でそれっぽく描いた輪郭,そんな“産毛”は消しゴムに生えていない。)
思い込みで景色を見てたな。
ホンモノはもっともっと美しいんだな。
と価値観とモノの見方が変わった瞬間でした。
姉1によるお絵描き講座はほんの30分のうちに終了したのですが、わたしにとっては学びの宝箱みたいな時間となりました。
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それから何年も経ち、わたしは理科の教員になりました。中1の一番初めの単元でスケッチを学習することになっているので、身近なものをひとつ描かせます。それが一枚の葉だったときでも、教室には当時のわたしと同様に、筆箱から定規を取り出す生徒が必ずいます。そんな生徒を見つけたらそばに行き「ほんまに?」ときいてからいっしょにその物を観察します。
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わたしが姉1からお絵描きを習ってからもう四半世紀経つと思うと驚きますが、あのとき教わったことを生かしながら、絵を描いています。
線だけでなく色一つをとっても、いきものたちに同じ色で塗りつぶせる単純さはありません。じっくりと見れば見るほど細かいデザインは、いつもわたしを魅了します。
「ここの作りはこうなっていたんだな」「ステキな配色だな」と見惚れながら、それを忠実に再現しようとこだわりながら描いていると、今は恐ろしく時間がかかります。でも、自分の命をいきものに感動するための時間に使うのはとても有意義だと思っています。
沖縄はここ1週間、雨が続きます。いつもほど外に出かけられない分、作品が進みそうです。
作品集はコチラから閲覧可能です。
これまで出会った野生動物たちを描いています。